【完結】帝国滅亡の『大災厄』、飼い始めました

綾雅(りょうが)要らない悪役令嬢

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第四章 王宮炎上

第15話 命の対価(5)

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 黒髪が重力に逆らって揺らめき、ジルの表情が一変する。厳しい表情は今までの甘さを切り捨てていた。怒りを浮かべたジルの口元が笑みを作る。黒い印象を与える笑みを、きつい眼差しが裏切った。

 無理やり引き出した黒翼が彼の背を覆い、強引な行為の代償として背を赤い血が伝う。皮膚を裂いた翼を広げ、ひとつ羽ばたいた。

 粉が舞う空気を一掃する竜巻が起きる。白い粉を巻き込んだ風が消えた後、膨大な霊力と強大な魔力を併せ持つ化け物がにたりと嗤った。

 解放された力の大きさに双方がひしめき合い、空間を魔力と霊力が満たしていく。高い濃度の霊力が、己の魔力を食い荒らす。生まれ続ける魔力が霊力を打ち消し、ジルを中心に荒れた風が逆巻いた。

「……これが『死神』」

 呆然と呟いた魔性に視線を定めると、ジルの右手が緩やかに持ち上がる。早い仕草ではない。避けようと思えば避けられそうな指差しの直後、声を出した魔性が消滅した。

 攻撃を受けた形跡はなく、一瞬で――文字通り消滅して、跡形もない。

「っ、違いすぎる」

 こんな大きな力を制御する『化け物』に、魔王の側近に届かぬ上級魔性が敵う筈がなかった。先程粉で封じて傷つけた対象は、強大な力を持っていた。それでも全力ではなかったのだと、いまさら気付かされる。

 震えが来るほどの恐怖を感じながら、魔性達は己の魔力を振り絞って大きな魔法陣を描く。敵を貫き焼き尽くすための魔法陣は、彼らの魔力単体で描ききれなかった。複数の魔性が描く魔法陣を守ろうと、他の魔性がジルへ攻撃を向ける。

 風の刃、氷の矢、炎の剣……どれも先ほどより魔力を込めていた。しかしジルを守るように荒れる風に触れた瞬間、すべての魔法が解除される。霊力による強制解除は、魔性の心を折った。

「だめだ、届かない」

 悲鳴に近い叫びに、ジルは一言返した。

「死ね」

 ただの言葉だった。にも関わらず、新たに集まった精霊達は聞き届ける。彼の願いを、望みを現実にするため……無慈悲に魔性達を焼き、貫き、凍らせ、切って、砕いた。

「間に合った!」

 仲間が稼いだ時間を利用して、ようやっと完成した魔法陣をジルへ叩きつける。残った4人全員が得意な属性を描き込み複数の魔力を孕んだ魔法陣が、死神の頭上に展開した。

 魔王の側近クラスであっても、無傷では退けられぬ魔法陣が迫る。

 一瞥したジルは右手の指で一点を指し示した。彼を取り囲む霊力と魔力の混じった嵐はその指先に導かれたように、示した一点を正確に貫く。
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