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第八章 捏造された歴史
第21話 歴史とは捏造された小説で(3)
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誰も声を発しない中、紅茶のカップやスプーンが立てる音だけが反響していた。
「ジル、話してくれるか?」
このままでは埒が明かないと判断し、ルリアージェは思い切って声をかける。すると意外な人物が最初に話し始めた。
「最初におれが話した方が客観的で分かりやすいんじゃないか?」
当初の非協力的な姿が嘘のように、レンはさっぱりした態度で語り部を買って出た。ジルやリオネルが口を挟む隙を与えず、彼は淡々と話し始める。
「出会いからだと長いから端折るか。そうだな、アティン帝国の騒動あたりから話そう」
前置きして始まった話は、歴史書には記されない真実だ。実際に己の目で確認した当事者でなければ知りえない情報ばかりだった。
「アティン帝国は大陸を統一した次の代で滅びた。父王が統一した大陸の覇権を譲られたのは、まだ若い皇子でな。戦いに明け暮れて早死にした父親の影響か、死をひどく恐れたんだ。なんとか永遠に生きる方法はないか、必死に探して……とんでもない方法を思いついた」
レンの淡々とした声は他人事を話す冷たさを滲ませる。事実、彼にとっては目にした記録の朗読程度の感覚しかないのだろう。リオネルは気遣う視線をジルへ向け、当事者であるジル自身は軽く目を伏せていた。カップを包むルリアージェの手に触れる指先が、とても冷たい。
「神族っての、知ってるか?」
突然の質問に、ルリアージェは顔を上げた。手の中の温かさと反する冷たい指先に気を取られていた彼女は銀の髪を揺らして頷く。
「滅びた一族だと聞いた」
「間違ってないが、滅ぼされたの方が正しい。この世界は霊力を使い精霊を使役する神族、膨大な魔力を揮って魔法を繰り出す魔族、そして魔術という独自の術式を生み出して対抗した人族で構成されていた」
魔力の少ない魔族は、魔物と呼ばれて分類される。その区別は簡単で、人族にどれだけ近い姿を持つかだ。人間そっくりの外見を持つだけの魔力があれば魔性、逆に動物や魚のような部位が残る者を魔物と呼んだ。これは魔術に関わる者ならば誰もが知る話だ。
だが、神族についてはほぼ記録が残っていなかった。白い大きな翼を持つ、穏やかで美しい姿形の種族だったという伝説に近い、御伽噺が残っている程度だ。
「アティン最後の皇帝は、不老長寿の神族を滅ぼした――それも拷問に近い残酷な殺し方で、だ」
「……なっ」
何を言い出すのか。そう否定しそうになった口を、咄嗟に左手で覆った。
「ジル、話してくれるか?」
このままでは埒が明かないと判断し、ルリアージェは思い切って声をかける。すると意外な人物が最初に話し始めた。
「最初におれが話した方が客観的で分かりやすいんじゃないか?」
当初の非協力的な姿が嘘のように、レンはさっぱりした態度で語り部を買って出た。ジルやリオネルが口を挟む隙を与えず、彼は淡々と話し始める。
「出会いからだと長いから端折るか。そうだな、アティン帝国の騒動あたりから話そう」
前置きして始まった話は、歴史書には記されない真実だ。実際に己の目で確認した当事者でなければ知りえない情報ばかりだった。
「アティン帝国は大陸を統一した次の代で滅びた。父王が統一した大陸の覇権を譲られたのは、まだ若い皇子でな。戦いに明け暮れて早死にした父親の影響か、死をひどく恐れたんだ。なんとか永遠に生きる方法はないか、必死に探して……とんでもない方法を思いついた」
レンの淡々とした声は他人事を話す冷たさを滲ませる。事実、彼にとっては目にした記録の朗読程度の感覚しかないのだろう。リオネルは気遣う視線をジルへ向け、当事者であるジル自身は軽く目を伏せていた。カップを包むルリアージェの手に触れる指先が、とても冷たい。
「神族っての、知ってるか?」
突然の質問に、ルリアージェは顔を上げた。手の中の温かさと反する冷たい指先に気を取られていた彼女は銀の髪を揺らして頷く。
「滅びた一族だと聞いた」
「間違ってないが、滅ぼされたの方が正しい。この世界は霊力を使い精霊を使役する神族、膨大な魔力を揮って魔法を繰り出す魔族、そして魔術という独自の術式を生み出して対抗した人族で構成されていた」
魔力の少ない魔族は、魔物と呼ばれて分類される。その区別は簡単で、人族にどれだけ近い姿を持つかだ。人間そっくりの外見を持つだけの魔力があれば魔性、逆に動物や魚のような部位が残る者を魔物と呼んだ。これは魔術に関わる者ならば誰もが知る話だ。
だが、神族についてはほぼ記録が残っていなかった。白い大きな翼を持つ、穏やかで美しい姿形の種族だったという伝説に近い、御伽噺が残っている程度だ。
「アティン最後の皇帝は、不老長寿の神族を滅ぼした――それも拷問に近い残酷な殺し方で、だ」
「……なっ」
何を言い出すのか。そう否定しそうになった口を、咄嗟に左手で覆った。
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