【完結】帝国滅亡の『大災厄』、飼い始めました

綾雅(りょうが)要らない悪役令嬢

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第十章 サークレラ

第26話 祭りの後の大捕り物(4)

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「スリか、また割に合わない仕事だ」

 ぐいっと捻った腕の痛みに悲鳴を上げる青年を、いつの間にか多くの人々が囲んでいた。その表情は厳しいが、どこか同情の色を滲ませている。

「ジル、衛兵に引き渡そう」

「え? 許しちゃうの?」

 不満そうに鼻に皺を寄せるジルの子供じみた姿に、ルリアージェはくすくす笑ってしまう。そのまま空の右手を伸ばして整った鼻を指先でなぞり、頬に手を添えた。穏やかな仕草にジルが少し首を傾げる。

「私の財布はお前が取り戻してくれた。あとは衛兵の仕事だろう」

「……ルリアージェって変わってるわ」

 確かに、財布を掏られて気付かなければ腹が立つ。ぶつかられた肩も少し痛かった。けして気分がよい状況ではないが、ここまで痛めつける程怒っていない。

 街の人々の顔を見れば、この青年になにか理由があるのだと察するのに十分だった。理由があれば許されるわけじゃないし、スリは立派な犯罪だ。だから衛兵に渡すという解決方法を提示した。ジルの言葉通り許す気があれば、自分の財布を取り戻した時点で放り出しただろう。

「そうか? 私はこのまま祭りを楽しみたいだけだ」

「確かに、コイツに構ってる時間がもったいない」

「あたくしは、リアの決定に従うわ」

 収まりかけた場に、衛兵が駆け寄ってきた。その姿を見るなり、民族衣装で着飾った人たちが声を上げる。

「離してやってくれないか」

「彼は捕まるわけにいかないの」

「詫びなら、おれ達がするから」

 口々にジルが手を離すよう促してくる。ちらりと窺うジルの眼差しに、了承の頷きを返した。無造作にジルが手を離す。地面に転がった青年が必死に身を起こして、地を這うように逃げ出した。

 民族衣装の人々が盾になる形で彼の身を隠して逃がしている。衛兵が駆けつけた時には、すでにスリの姿は跡形もなかった。

「スリが出たと聞いた。どこだ?」

「悪い、押さえられなくて逃げちまった。この財布はすべて盗難品だ」

 ジルは平然と財布の山を指差して説明を続ける。一瞬不思議そうな顔をするが、嘘だと断定する証拠がない。ましてやジルやルリアージェの格好は、他国人だと判断するに十分だった。この国の人々の大半は、民族衣装を着用しているのだから。

「他国民か?」

「ああ、観光客だ。ぶつかってきたので捕まえたら財布を捨てて逃げた」

「聴取を……」

「外見なら大柄で筋肉質な男だ。大きな槍を持ってたぞ」
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