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第十一章 迷惑な客
第29話 サークレラ国王崩御(4)
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「いいさ、逃げ帰る時間をやる。貸しだぞ」
笑いながら手を振るジルの態度に怒りを募らせながらも、トルカーネは取り乱すことなく踵を返した。後ろから襲われる心配などしない。魔王を名乗るものとして毅然とした態度を崩す気はなかった。
「他の方々の目はどうします?」
リオネルが好戦的な笑みを浮かべる。赤い瞳が炎のように鮮やかに揺れた。
「放っておけ」
こちらに攻撃してこなければ、放置しろ。それはジルの命令に等しかった。手出しし損ねたリシュアが悔しそうな顔をするが、ひとつ大きな深呼吸をして気持ちを落ち着ける。国王として忍耐を強いられた期間が、彼を精神的に成長させたのだろう。
地下湖へ戻るトルカーネを追って、スピネーとレイシアが消える。魔王の側近を務めるだけの実力者達は、しばらく療養すれば回復するはずだ。新たな敵となることを承知で、ジル達は上級魔性を見逃した。
だが……この魔性だけは別だ。
「おいで」
リシュアの手が差し伸べられると、トルカーネを地上に召還する鍵となった魔性が、焼け爛れた身で近づいてくる。リオネルの炎に焼かれた身体は、かつての整った外見が嘘のようだった。魅了の魔眼を使って呼び寄せた魔性に、リシュアは躊躇いなく触れる。
傷ついた身体に触れるリシュアに擦り寄る魔性は、まるで捨て猫のようだった。必死で愛情を請う様は、完全に術中に落ちたことを示している。
「ジル様、この騒動では祭りが中断されるでしょう」
「そうか、残念だな……国王崩御も?」
「同時に行うが良いかと思います」
リシュアは頭を下げて、己の進退を淡々と語る。
「それに、私がいなくともこの国は大丈夫でしょう」
子離れを決意した国王の眼差しは、さきほどの魔術で助けた国民へと向けられていた。魔性同士の戦いが繰り広げられる現場で、真っ先に逃げることもせず、近くの人を助けようとする。助けられた人がまた次の人に手を差し伸べていた。
正の連鎖が始まったサークレラの国は、これから新たに他国との荒波に晒されるだろう。それでも人は強く生きていけると示すように、彼らは互いの無事を喜び合っていた。
「この国の人は本当に優しいもの」
ライラは手に付いた土を払いながら、ふわりと宙に浮いた。わずかに10cm程だが、それによって足元の魔法陣が薄くなっていく。直接大地に注いでいた魔力を断ったのだろう。
「ジル」
笑いながら手を振るジルの態度に怒りを募らせながらも、トルカーネは取り乱すことなく踵を返した。後ろから襲われる心配などしない。魔王を名乗るものとして毅然とした態度を崩す気はなかった。
「他の方々の目はどうします?」
リオネルが好戦的な笑みを浮かべる。赤い瞳が炎のように鮮やかに揺れた。
「放っておけ」
こちらに攻撃してこなければ、放置しろ。それはジルの命令に等しかった。手出しし損ねたリシュアが悔しそうな顔をするが、ひとつ大きな深呼吸をして気持ちを落ち着ける。国王として忍耐を強いられた期間が、彼を精神的に成長させたのだろう。
地下湖へ戻るトルカーネを追って、スピネーとレイシアが消える。魔王の側近を務めるだけの実力者達は、しばらく療養すれば回復するはずだ。新たな敵となることを承知で、ジル達は上級魔性を見逃した。
だが……この魔性だけは別だ。
「おいで」
リシュアの手が差し伸べられると、トルカーネを地上に召還する鍵となった魔性が、焼け爛れた身で近づいてくる。リオネルの炎に焼かれた身体は、かつての整った外見が嘘のようだった。魅了の魔眼を使って呼び寄せた魔性に、リシュアは躊躇いなく触れる。
傷ついた身体に触れるリシュアに擦り寄る魔性は、まるで捨て猫のようだった。必死で愛情を請う様は、完全に術中に落ちたことを示している。
「ジル様、この騒動では祭りが中断されるでしょう」
「そうか、残念だな……国王崩御も?」
「同時に行うが良いかと思います」
リシュアは頭を下げて、己の進退を淡々と語る。
「それに、私がいなくともこの国は大丈夫でしょう」
子離れを決意した国王の眼差しは、さきほどの魔術で助けた国民へと向けられていた。魔性同士の戦いが繰り広げられる現場で、真っ先に逃げることもせず、近くの人を助けようとする。助けられた人がまた次の人に手を差し伸べていた。
正の連鎖が始まったサークレラの国は、これから新たに他国との荒波に晒されるだろう。それでも人は強く生きていけると示すように、彼らは互いの無事を喜び合っていた。
「この国の人は本当に優しいもの」
ライラは手に付いた土を払いながら、ふわりと宙に浮いた。わずかに10cm程だが、それによって足元の魔法陣が薄くなっていく。直接大地に注いでいた魔力を断ったのだろう。
「ジル」
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