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第十三章 龍炎と氷雷の舞

第35話 新たな騒動の予感(3)

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 だからルリアージェを護りたくて、考えすぎてしまう。今はリオネルやリシュアがいるからいいが、いなかった頃は心配性で過保護に振舞ったはずだ。その心情が理解できないルリアージェにとっては、しつこいと感じるほどに。

「……そうか」

 何か感じる部分があったのか、ルリアージェは悲しそうに微笑んだ。ジルは過去を知られたら拒絶されて捨てられると思っていたらしい。だが彼女は平然と受け止めた。血の話も、壮絶な過去も。

「あたくしはずっとリアの味方よ、だから何かあれば相談して欲しいわ」

 初めて人族に対して愛情を抱いた。執着に近い愛情だが、を愛して欲しいとは思わない。ルリアージェの愛情は広くて深い。他者を包み込んで許し、己のうちに抱え込んで護ろうとするタイプだった。

 気に入れば受け入れるから、これからも眷属が増える可能性は高い。魔族の執着心は強く、独占欲も強いのが一般的だった。ただ精霊王の血が混じるライラは、独占欲はほとんど持たない。もちろん愛した存在に愛されたいと思う気持ちはあるが、愛されなくても愛せる自信があった。

 ここが魔族との大きな違いだ。神族も同様の傾向があるが、ジルは魔族寄りの考え方をした。最初にライラを無視して排除しようとしたのが、その一例だ。今ではかなり寛容に振舞うようになっている。神族のように大らかに振舞うのは、ジルの精神が安定している証拠だった。

 今の場所は居心地がいい。ずっと世界に弾かれた「半端な混じり物」だと思っていた。初めて、自分という存在が世界に認められ、受け入れられた気がするのだ。

 この居場所を護るために、ルリーアジェを守り続けたいと思う。

 微笑んだライラに、ルリアージェが嬉しそうな顔をした。着替えたドレスはジルの見立てで、着替えが終わるのを隣の広間でそわそわしながら待っているだろう。あまり待たせると飛び込んでくるかも知れない。

「行きましょうか、リア」

「そうだな」

 食事の準備はリオネル、新しく作ったトイレやバスルームはリシュアが担当している。至れり尽くせりの環境で、ルリアージェはドレスの裾を揺らして歩き出した。途中で窓の外に目をやり、夜のような漆黒の空を見上げる。

「……胸騒ぎがする」

 美しい空だと思うのに、なぜか嫌な予感がした。魔術師として占いもするルリアージェは、己の直感が意外と外れないことを知っている。

「いやね、リアの予感は当たりそうだわ」

 同じように空を見上げたライラは、同じく胸騒ぎを覚えて眉をひそめた。
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