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第十四章 リュジアン
第46話 自由に観光がしたかったので(1)
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隣国サークレラは安定した温暖な気候と豊かな大地を持っていた。凍らない大地の重要性は、北の国に生まれた者でなければ理解できないだろう。その国から王族と並ぶ力を持つ公爵家が外遊にくる。公爵夫妻、弟夫妻、そして令嬢だ。
あわよくば令嬢を我が国の王子の誰かと結婚させ、サークレラの実りを取り込みたい。そんな思惑を見透かしたように、彼らは国王たる余を1時間待たせた。
あり得ない。自国の貴族ならば爵位剥奪ものの騒動だが、彼らは悪びれた様子なく入場した。まず目を瞠ったのは、驚くべき美貌だった。
他国の王族と貴族に囲まれる状況に臆することなく、平然と絨毯を歩いてくる。敵対した過去もある国で、彼らに気負いはなかった。
艶やかな黒髪に紫水晶の瞳をもつ細身の青年が公爵、その妻は月光のごとき銀髪と蒼い海の瞳をもつ。どちらもタイプは違うが美形という表現が似合う整った顔立ちをしていた。
付き従う弟君はサークレラ王族縁の黒に近い暗緑髪だった。瞳の色が違うことから、公爵と母親が違うのだろう。そして彼の妻は青銀の髪を長く垂らした空色の瞳だ。
弟君は兄である公爵とタイプの違う美形だが、青銀の女性はやや整った顔をしているものの彼らと並ぶと明らかに劣る。身体のラインを強調するドレスを纏っている胸元はさみしいが、くびれたウエストや丸いヒップは艶かしく魅力的だった。
最後に公爵夫人の足元の少女に目を向ける。両親のどちらにも似なかったのか、茶色の三つ編みと緑の大きな瞳が活発な印象を与えた。だが美人になりそうな素養は感じられない。一般的に目を引く愛らしい少女という感じだった。
執事服の青年は主に一礼して入り口の壁に控える。メガネで顔を隠しているが、彼もかなり整った外見をしていた。全体的に女性より男性の方が華やかな一行だ。
「よくぞいらした」
待たされたという悪印象を感じさせない明るい声で呼びかける。すると正式な礼を尽くす公爵夫妻に続き、全員が無言で礼を取った。
「サークレラ国、マスカウェイル公爵家当主ジフィールと申します。お目通り整いましたこと、陛下のご温情に感謝いたします」
国王に匹敵する権力を有するといわれる公爵家の当主であるにもかかわらず、彼は穏やかな笑みを浮かべて温和そうに見えた。他国との外交において他の追随を許さぬサークレラ前国王が、相談役として誰より信頼したと伝え聞いたが、そんな強さは感じさせない。
リュジアン国王として、だからこそ怖さを覚えた。水面が穏やかだからといって、川の中が濁流でない保証はない。彼らの外交はすでに始まっているのだと身を引き締めた。
あわよくば令嬢を我が国の王子の誰かと結婚させ、サークレラの実りを取り込みたい。そんな思惑を見透かしたように、彼らは国王たる余を1時間待たせた。
あり得ない。自国の貴族ならば爵位剥奪ものの騒動だが、彼らは悪びれた様子なく入場した。まず目を瞠ったのは、驚くべき美貌だった。
他国の王族と貴族に囲まれる状況に臆することなく、平然と絨毯を歩いてくる。敵対した過去もある国で、彼らに気負いはなかった。
艶やかな黒髪に紫水晶の瞳をもつ細身の青年が公爵、その妻は月光のごとき銀髪と蒼い海の瞳をもつ。どちらもタイプは違うが美形という表現が似合う整った顔立ちをしていた。
付き従う弟君はサークレラ王族縁の黒に近い暗緑髪だった。瞳の色が違うことから、公爵と母親が違うのだろう。そして彼の妻は青銀の髪を長く垂らした空色の瞳だ。
弟君は兄である公爵とタイプの違う美形だが、青銀の女性はやや整った顔をしているものの彼らと並ぶと明らかに劣る。身体のラインを強調するドレスを纏っている胸元はさみしいが、くびれたウエストや丸いヒップは艶かしく魅力的だった。
最後に公爵夫人の足元の少女に目を向ける。両親のどちらにも似なかったのか、茶色の三つ編みと緑の大きな瞳が活発な印象を与えた。だが美人になりそうな素養は感じられない。一般的に目を引く愛らしい少女という感じだった。
執事服の青年は主に一礼して入り口の壁に控える。メガネで顔を隠しているが、彼もかなり整った外見をしていた。全体的に女性より男性の方が華やかな一行だ。
「よくぞいらした」
待たされたという悪印象を感じさせない明るい声で呼びかける。すると正式な礼を尽くす公爵夫妻に続き、全員が無言で礼を取った。
「サークレラ国、マスカウェイル公爵家当主ジフィールと申します。お目通り整いましたこと、陛下のご温情に感謝いたします」
国王に匹敵する権力を有するといわれる公爵家の当主であるにもかかわらず、彼は穏やかな笑みを浮かべて温和そうに見えた。他国との外交において他の追随を許さぬサークレラ前国王が、相談役として誰より信頼したと伝え聞いたが、そんな強さは感じさせない。
リュジアン国王として、だからこそ怖さを覚えた。水面が穏やかだからといって、川の中が濁流でない保証はない。彼らの外交はすでに始まっているのだと身を引き締めた。
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