【完結】帝国滅亡の『大災厄』、飼い始めました

綾雅(りょうが)要らない悪役令嬢

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第十七章 迷宮という封印

第64話 幻妖の森の所以(3)

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迷宮と呼ばれる場所は『力あるモノ』が封印されている。その力あるモノが外に出てしまったら、その場所は迷宮たり得ない。

 そう考えたのはリシュア、パウリーネ、ライラだった。しかしジルとリオネルの反応は違う。

「迷宮は『力あるモノ』を封印した場所であり、封印を維持できた場所でもあります。その場所自体がある程度の力を持っている証拠ですよ。ですから封印の要がなくなっても、数百年は迷宮として機能します」

「そうだな。テラレス王宮も、魔性の間では今も迷宮扱いだぞ」

 リオネルとジルの説明に、4人は顔を見合わせた。力あるモノを封印する場所にも、条件があるとは知らなかったし、封印が解けてもしばらくは迷宮のままなのも驚いた。

「テラレスは、しばらく魔性の干渉を避けられるのか」

 意外だと呟くルリアージェに、苦笑いしたジルが説明を追加する。

「王宮の地下に金剛石を保管してたが、実際に封印は機能していなかった。オレを封じたのは、魔王達の呪縛だからな。あの土地にそんな力はない。だから気付いた魔性がちょっかいだす可能性は否定しないぞ」

 近々誰かが興味を示して、テラレスを襲うかも知れない。利用して遊ぶ可能性もある。だが迷宮が解除されていると気付かない輩もいるだろう。どちらに転んでもおかしくない土地だった。

 今まで1000年近くの長い年月を魔性の干渉なしで守られてきたテラレスは、最大の守りを失ったのだ。いつ狙われても不思議はない。少なくとも魔王の側近クラスは、あの迷宮が消えたことに気付いているはずだった。

「この森は魔力溢れる植物の宝庫だ。あと数百年は存在し続けるだろう。このエメラルドが戻れば、また『迷宮』として機能するし」

 ジルがライラを振り返る。大切な両親を胸元に入れた彼女は、少し考える素振りを見せた。

「そうね、お父様とお母様が戻ると言い出したら戻すわ」

 言葉と裏腹に、大切そうにライラは胸元を押さえた。両親が戻ると言い出す可能性はほとんどなさそうだ。微笑ましい気分でライラを見守るルリアージェに、リオネルが声をかけた。

「リア様、次の迷宮は『魔の森』になさいますか?」

「森続きね。私は海底にある『人魚の涙』がいいと思うわ」

「それなら亜空間にある『時の牢獄』も面白いですね」

 パウリーネとリシュアが魅力的な提案をする。どれも興味深いが、魔の森は以前にお茶をするので寄ったことがあった。どうせなら知らない場所から訪ねてみたい。

「うーん、『神々の廃墟』もあるぞ」

 さらに選択肢が増えていく。ジルが口にした場所の名に、3人は一瞬だけ目を伏せた。ルリアージェが気付かぬうちに表情を取り繕うが、『神々の廃墟』はかつて神族が作った神殿跡だ。ジルにとって嫌な思い出が多い場所だろう。

「一番近い場所にしよう」

 迷って悩んだルリアージェの一声で、神族の丘の地下にある『神々の廃墟』へ行くことが決まった。
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