278 / 386
第十八章 新たなる戦の火種
第71話 北の大国で家具探し(2)
しおりを挟む
「ありがとう」
嬉しそうに笑うルリアージェの姿に癒される魔性達から、反対意見など出るわけがない。口々にツガシエの名所や名物を上げ始めた。
「たしか、赤いスープが有名なのよ。辛いけど美味しいわ」
「雪角兎の肉も有名ですね」
「あたくしは、氷の器に盛ったレイシーという果物がお勧め!」
様々な食べ物をプレゼンしてくる魔性達は、長く生きた分だけ物を深く知っている。品物の見分けや食べ物に関する知識は、過去からの積み重ねだろう。彼らに食事は必要ないが、嗜好品として口にするのだと聞いていた。そのため、お茶会がよく行われるのだ。
「宿は私が手配しましょう」
リシュアが慣れた様子で姿を消すと、逆にリオネルが帰ってきた。入れ替わりで顔を合わせていない彼らだが、気にする感情はない。
「出掛ける先が決まったぞ、リオネル。次はツガシエだ」
「……っ。そうですか、楽しみですね」
一瞬だけ息を飲んだリオネルだが、その微妙な表情にルリアージェは気付かなかった。ジルとライラは目配せして、役目を分け合う。
「サイワットへ持っていく服やお飾りを用意しなければ! パウリーネも手伝ってくださる?」
「もちろんですわ。公爵家に相応しいドレスを選ばなくちゃなりませんもの」
右手を掴んだライラに引っ張られ、あっという間に隣の私室へ移動する。パウリーネも一緒に来たので、ルリアージェはこの状況に違和感を覚えなかった。元から女性が集まってドレスや飾りを選んでいる際、ジル達が外で待つのは当然だったから。
広すぎる部屋が落ち着かないと我が侭を言ったせいで、天幕のように薄絹が天井代わりに掛けられた部屋は、驚くほど豪華な家具や毛皮が並んでいた。部屋の中央に敷かれた大きな白い毛皮は、小山ほどもある狼を倒した戦利品だと聞いている。
肌触りが良い上に、床の半分ほどを占める大きさが見事だった。明らかに腹から裂いて、頭部や手足の爪を残すやり方は貴族が好みそうな形状だ。
素足で触れると気持ちいので、ルリアージェはヒールの高い靴を脱ぎ捨てた。振り返ると、ライラやパウリーネも真似をして靴を脱いでいる。
「そういえば不思議だったんだが……魔性は戦った獲物から毛皮を回収する決まりでもあるのか?」
以前もコートを作るときに同じ疑問を持ったが、聞きそびれて今日まで来てしまった。尋ねられたライラとパウリーネが顔を見合わせて、同時にルリアージェに答えた。
「「倒した証拠ですもの」」
ハモった彼女らは、くすくす笑いながらいくつか毛皮を取り出した。以前に見せてもらった大熊や兎のものもある。
嬉しそうに笑うルリアージェの姿に癒される魔性達から、反対意見など出るわけがない。口々にツガシエの名所や名物を上げ始めた。
「たしか、赤いスープが有名なのよ。辛いけど美味しいわ」
「雪角兎の肉も有名ですね」
「あたくしは、氷の器に盛ったレイシーという果物がお勧め!」
様々な食べ物をプレゼンしてくる魔性達は、長く生きた分だけ物を深く知っている。品物の見分けや食べ物に関する知識は、過去からの積み重ねだろう。彼らに食事は必要ないが、嗜好品として口にするのだと聞いていた。そのため、お茶会がよく行われるのだ。
「宿は私が手配しましょう」
リシュアが慣れた様子で姿を消すと、逆にリオネルが帰ってきた。入れ替わりで顔を合わせていない彼らだが、気にする感情はない。
「出掛ける先が決まったぞ、リオネル。次はツガシエだ」
「……っ。そうですか、楽しみですね」
一瞬だけ息を飲んだリオネルだが、その微妙な表情にルリアージェは気付かなかった。ジルとライラは目配せして、役目を分け合う。
「サイワットへ持っていく服やお飾りを用意しなければ! パウリーネも手伝ってくださる?」
「もちろんですわ。公爵家に相応しいドレスを選ばなくちゃなりませんもの」
右手を掴んだライラに引っ張られ、あっという間に隣の私室へ移動する。パウリーネも一緒に来たので、ルリアージェはこの状況に違和感を覚えなかった。元から女性が集まってドレスや飾りを選んでいる際、ジル達が外で待つのは当然だったから。
広すぎる部屋が落ち着かないと我が侭を言ったせいで、天幕のように薄絹が天井代わりに掛けられた部屋は、驚くほど豪華な家具や毛皮が並んでいた。部屋の中央に敷かれた大きな白い毛皮は、小山ほどもある狼を倒した戦利品だと聞いている。
肌触りが良い上に、床の半分ほどを占める大きさが見事だった。明らかに腹から裂いて、頭部や手足の爪を残すやり方は貴族が好みそうな形状だ。
素足で触れると気持ちいので、ルリアージェはヒールの高い靴を脱ぎ捨てた。振り返ると、ライラやパウリーネも真似をして靴を脱いでいる。
「そういえば不思議だったんだが……魔性は戦った獲物から毛皮を回収する決まりでもあるのか?」
以前もコートを作るときに同じ疑問を持ったが、聞きそびれて今日まで来てしまった。尋ねられたライラとパウリーネが顔を見合わせて、同時にルリアージェに答えた。
「「倒した証拠ですもの」」
ハモった彼女らは、くすくす笑いながらいくつか毛皮を取り出した。以前に見せてもらった大熊や兎のものもある。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
274
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる