【完結】帝国滅亡の『大災厄』、飼い始めました

綾雅(りょうが)要らない悪役令嬢

文字の大きさ
324 / 386
第二十章 愛し愛される資格

第87話 螺旋の風が止まるとき(2)

しおりを挟む
 連れ去られたルリアージェが握りしめた青水晶は、炎龍ジェンの住処であると同時に、性質を変化へんげさせたジルと深く繋がったアイテムだ。ルリアージェを追ったジルが城に戻らないなら、彼女の痕跡を追えた証拠だった。

「リア様……」

「不安を口にして言霊を生むのは止めなさい」

 リシュアの厳しい指摘に「わかってるわ」とパウリーネはぎこちなく笑みを浮かべた。そう、強い魔力を揮う者が放つ言葉は、現実に結び付きやすい。だから出来るだけ明るい声で、笑顔で希望を口にするのだ。

「きっとジル様が、リア様を助けている頃だわ」

「当然です。我らの主君でいらっしゃるのですから」

 その程度はできて当たり前。魔性殺しの名を持つ死神を敵に回したら、魔王の称号を得た魔族であっても勝てない。当然のように言い切る2人は、再び作業に没頭した。







「……この場でおれに勝てると?」

「オレの二つ名を忘れたか? 死神に勝てる奴なんていない」

 自信たっぷりに笑い、触れたままの結界を侵食していく。球体に新たなヒビが入った。砕くまであと少しだ。ジルの魔力が可視化されるほど高まっていく。怒りと屈辱、愛する存在を害されかけた恐怖がジルの霊力と魔力を練り上げた。

「お前ら魔王みたいに能無しを侍らせる趣味はないが、アイツらは優秀だぞ。すぐに追いつく。背後の心配をした方がいいんじゃないか?」

 次の瞬間、球体が砕けた。パリンと乾いた音を立てた結界が粉々に落ちる。

「リア!」

 手を伸ばして触れたと思ったジルの手は、宙をかいた。その場に見えるルリアージェの姿が歪み、透明になって消える光景に目を見開く。

「幻影、か」

 揺らぐ熱による景色の転写だ。炎の魔王マリニスと組んだなら、これは想定すべき事態だった。結界に阻まれて気配が薄いのだと思ったが、実際にこの場にルリアージェはいなかった。残り香に近い魔力の残滓に別の景色を転送していたのだ。

「っ……くそ」

「残念だったな」

「いや、お前を殺せば見つかる」

 利き腕である左手を揮う。名を呼ばずとも顕現するアズライルを握り、風の魔王ラーゼンに突きつけた。鮮やかな緑の髪と瞳を持つ青年は興味深そうにジルを見たあと、首をかしげる。

「予想と違う、もっと残念がると思ったが」

「リアを待たせてる」

 背に1対の翼をひろげる。黒い鳥の翼をはばたかせると、複数の魔方陣が周囲に浮きあがった。好戦的なアズライルが身を震わせる。その刃に唇を寄せ、触れるだけの接吻けを贈った。戦い前の儀式に似た挨拶を終えると、ジルは死神の鎌を振りかざした。
しおりを挟む
感想 15

あなたにおすすめの小説

残念ながら主人公はゲスでした。~異世界転移したら空気を操る魔法を得て世界最強に。好き放題に無双する俺を誰も止められない!~

日和崎よしな
ファンタジー
―あらすじ― 異世界に転移したゲス・エストは精霊と契約して空気操作の魔法を獲得する。 強力な魔法を得たが、彼の真の強さは的確な洞察力や魔法の応用力といった優れた頭脳にあった。 ゲス・エストは最強の存在を目指し、しがらみのない異世界で容赦なく暴れまくる! ―作品について― 完結しました。 全302話(プロローグ、エピローグ含む),約100万字。

お妃さま誕生物語

すみれ
ファンタジー
シーリアは公爵令嬢で王太子の婚約者だったが、婚約破棄をされる。それは、シーリアを見染めた商人リヒトール・マクレンジーが裏で糸をひくものだった。リヒトールはシーリアを手に入れるために貴族を没落させ、爵位を得るだけでなく、国さえも手に入れようとする。そしてシーリアもお妃教育で、世界はきれいごとだけではないと知っていた。 小説家になろうサイトで連載していたものを漢字等微修正して公開しております。

99歳で亡くなり異世界に転生した老人は7歳の子供に生まれ変わり、召喚魔法でドラゴンや前世の世界の物を召喚して世界を変える

ハーフのクロエ
ファンタジー
 夫が病気で長期入院したので夫が途中まで書いていた小説を私なりに書き直して完結まで投稿しますので応援よろしくお願いいたします。  主人公は建築会社を55歳で取り締まり役常務をしていたが惜しげもなく早期退職し田舎で大好きな農業をしていた。99歳で亡くなった老人は前世の記憶を持ったまま7歳の少年マリュウスとして異世界の僻地の男爵家に生まれ変わる。10歳の鑑定の儀で、火、水、風、土、木の5大魔法ではなく、この世界で初めての召喚魔法を授かる。最初に召喚出来たのは弱いスライム、モグラ魔獣でマリウスはガッカリしたが優しい家族に見守られ次第に色んな魔獣や地球の、物などを召喚出来るようになり、僻地の男爵家を発展させ気が付けば大陸一豊かで最強の小さい王国を起こしていた。

『召喚ニートの異世界草原記』

KAORUwithAI
ファンタジー
ゲーム三昧の毎日を送る元ニート、佐々木二郎。  ある夜、三度目のゲームオーバーで眠りに落ちた彼が目を覚ますと、そこは見たこともない広大な草原だった。  剣と魔法が当たり前に存在する世界。だが二郎には、そのどちらの才能もない。  ――代わりに与えられていたのは、**「自分が見た・聞いた・触れたことのあるものなら“召喚”できる」**という不思議な能力だった。  面倒なことはしたくない、楽をして生きたい。  そんな彼が、偶然出会ったのは――痩せた辺境・アセトン村でひとり生きる少女、レン。  「逃げて!」と叫ぶ彼女を前に、逃げようとした二郎の足は動かなかった。  昔の記憶が疼く。いじめられていたあの日、助けを求める自分を誰も救ってくれなかったあの光景。  ……だから、今度は俺が――。  現代の知恵と召喚の力を武器に、ただの元ニートが異世界を駆け抜ける。  少女との出会いが、二郎を“召喚者”へと変えていく。  引きこもりの俺が、異世界で誰かを救う物語が始まる。 ※こんな物も召喚して欲しいなって 言うのがあればリクエストして下さい。 出せるか分かりませんがやってみます。

老聖女の政略結婚

那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。 六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。 しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。 相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。 子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。 穏やかな余生か、嵐の老後か―― 四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。

異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう
ファンタジー
 異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。  いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。  その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。

異世界へ行って帰って来た

バルサック
ファンタジー
ダンジョンの出現した日本で、じいさんの形見となった指輪で異世界へ行ってしまった。 そして帰って来た。2つの世界を往来できる力で様々な体験をする神須勇だった。

転落貴族〜千年に1人の逸材と言われた男が最底辺から成り上がる〜

ぽいづん
ファンタジー
ガレオン帝国の名門貴族ノーベル家の長男にして、容姿端麗、眉目秀麗、剣術は向かうところ敵なし。 アレクシア・ノーベル、人は彼のことを千年に1人の逸材と評し、第3皇女クレアとの婚約も決まり、順風満帆な日々だった 騎士学校の最後の剣術大会、彼は賭けに負け、1年間の期限付きで、辺境の国、ザナビル王国の最底辺ギルドのヘブンズワークスに入らざるおえなくなる。 今までの貴族の生活と正反対の日々を過ごし1年が経った。 しかし、この賭けは罠であった。 アレクシアは、生涯をこのギルドで過ごさなければいけないということを知る。 賭けが罠であり、仕組まれたものと知ったアレクシアは黒幕が誰か確信を得る。 アレクシアは最底辺からの成り上がりを決意し、復讐を誓うのであった。 小説家になろうにも投稿しています。 なろう版改稿中です。改稿終了後こちらも改稿します。

処理中です...