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第二十章 愛し愛される資格
第87話 螺旋の風が止まるとき(2)
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連れ去られたルリアージェが握りしめた青水晶は、炎龍ジェンの住処であると同時に、性質を変化させたジルと深く繋がったアイテムだ。ルリアージェを追ったジルが城に戻らないなら、彼女の痕跡を追えた証拠だった。
「リア様……」
「不安を口にして言霊を生むのは止めなさい」
リシュアの厳しい指摘に「わかってるわ」とパウリーネはぎこちなく笑みを浮かべた。そう、強い魔力を揮う者が放つ言葉は、現実に結び付きやすい。だから出来るだけ明るい声で、笑顔で希望を口にするのだ。
「きっとジル様が、リア様を助けている頃だわ」
「当然です。我らの主君でいらっしゃるのですから」
その程度はできて当たり前。魔性殺しの名を持つ死神を敵に回したら、魔王の称号を得た魔族であっても勝てない。当然のように言い切る2人は、再び作業に没頭した。
「……この場でおれに勝てると?」
「オレの二つ名を忘れたか? 死神に勝てる奴なんていない」
自信たっぷりに笑い、触れたままの結界を侵食していく。球体に新たなヒビが入った。砕くまであと少しだ。ジルの魔力が可視化されるほど高まっていく。怒りと屈辱、愛する存在を害されかけた恐怖がジルの霊力と魔力を練り上げた。
「お前ら魔王みたいに能無しを侍らせる趣味はないが、アイツらは優秀だぞ。すぐに追いつく。背後の心配をした方がいいんじゃないか?」
次の瞬間、球体が砕けた。パリンと乾いた音を立てた結界が粉々に落ちる。
「リア!」
手を伸ばして触れたと思ったジルの手は、宙をかいた。その場に見えるルリアージェの姿が歪み、透明になって消える光景に目を見開く。
「幻影、か」
揺らぐ熱による景色の転写だ。炎の魔王マリニスと組んだなら、これは想定すべき事態だった。結界に阻まれて気配が薄いのだと思ったが、実際にこの場にルリアージェはいなかった。残り香に近い魔力の残滓に別の景色を転送していたのだ。
「っ……くそ」
「残念だったな」
「いや、お前を殺せば見つかる」
利き腕である左手を揮う。名を呼ばずとも顕現するアズライルを握り、風の魔王ラーゼンに突きつけた。鮮やかな緑の髪と瞳を持つ青年は興味深そうにジルを見たあと、首をかしげる。
「予想と違う、もっと残念がると思ったが」
「リアを待たせてる」
背に1対の翼をひろげる。黒い鳥の翼をはばたかせると、複数の魔方陣が周囲に浮きあがった。好戦的なアズライルが身を震わせる。その刃に唇を寄せ、触れるだけの接吻けを贈った。戦い前の儀式に似た挨拶を終えると、ジルは死神の鎌を振りかざした。
「リア様……」
「不安を口にして言霊を生むのは止めなさい」
リシュアの厳しい指摘に「わかってるわ」とパウリーネはぎこちなく笑みを浮かべた。そう、強い魔力を揮う者が放つ言葉は、現実に結び付きやすい。だから出来るだけ明るい声で、笑顔で希望を口にするのだ。
「きっとジル様が、リア様を助けている頃だわ」
「当然です。我らの主君でいらっしゃるのですから」
その程度はできて当たり前。魔性殺しの名を持つ死神を敵に回したら、魔王の称号を得た魔族であっても勝てない。当然のように言い切る2人は、再び作業に没頭した。
「……この場でおれに勝てると?」
「オレの二つ名を忘れたか? 死神に勝てる奴なんていない」
自信たっぷりに笑い、触れたままの結界を侵食していく。球体に新たなヒビが入った。砕くまであと少しだ。ジルの魔力が可視化されるほど高まっていく。怒りと屈辱、愛する存在を害されかけた恐怖がジルの霊力と魔力を練り上げた。
「お前ら魔王みたいに能無しを侍らせる趣味はないが、アイツらは優秀だぞ。すぐに追いつく。背後の心配をした方がいいんじゃないか?」
次の瞬間、球体が砕けた。パリンと乾いた音を立てた結界が粉々に落ちる。
「リア!」
手を伸ばして触れたと思ったジルの手は、宙をかいた。その場に見えるルリアージェの姿が歪み、透明になって消える光景に目を見開く。
「幻影、か」
揺らぐ熱による景色の転写だ。炎の魔王マリニスと組んだなら、これは想定すべき事態だった。結界に阻まれて気配が薄いのだと思ったが、実際にこの場にルリアージェはいなかった。残り香に近い魔力の残滓に別の景色を転送していたのだ。
「っ……くそ」
「残念だったな」
「いや、お前を殺せば見つかる」
利き腕である左手を揮う。名を呼ばずとも顕現するアズライルを握り、風の魔王ラーゼンに突きつけた。鮮やかな緑の髪と瞳を持つ青年は興味深そうにジルを見たあと、首をかしげる。
「予想と違う、もっと残念がると思ったが」
「リアを待たせてる」
背に1対の翼をひろげる。黒い鳥の翼をはばたかせると、複数の魔方陣が周囲に浮きあがった。好戦的なアズライルが身を震わせる。その刃に唇を寄せ、触れるだけの接吻けを贈った。戦い前の儀式に似た挨拶を終えると、ジルは死神の鎌を振りかざした。
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