【完結】帝国滅亡の『大災厄』、飼い始めました

綾雅(りょうが)要らない悪役令嬢

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第二十一章 寿命という概念

第91話 海辺の穏やかな風景(2)

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「「「乾杯」」」

 全員がグラスを掲げて、夕暮れが溶けるワインに口を付ける。最初に白を選んだのは、魚やハーブの味を殺さないためだ。後半にかけてチーズやカレーを使った濃い味の料理になるので、そこから赤ワインを楽しむ予定だった。

「ジルは本当にまめだな」

「確かに、料理なんて手間の塊ですもの」

 ルリアージェとパウリーネの言葉に、サラダを弄っていたジルが穏やかに口元を緩める。しっかりルリアージェの左隣を陣取ったジルは、カルパッチョやスープも取り分け始めた。

「最愛の人の口に入る素材を、よりおいしく味わってもらうための努力は当然だろ。幸いにしてリアの好みは旅の間に掴めたから、ちゃんと合わせてるぞ」

 薄味を好むルリアージェの好みに合わせた料理は、色鮮やかだ。見た目にも気を使ったジルは、盛りつけた小皿をルリアージェの前においた。カルパッチョも美しい花びらが飾られ、まるで花畑のように目を楽しませる。

「ありがとう」

 微笑んだルリアージェへ、フォークで掬った魚を差し出す。

「ほら、あーん」

「……さすがにそれは無理だ」

「ざーんねん」

 断れるのは承知の上らしく、ジルはあっさり引き下がった。ルリアージェの背にある翼が引っ掛からないよう、椅子はシンプルなものを使用している。

「やっぱり不便だ」

「見えなくても引っ掛かるから」

 背に翼もつ種族の唯一の生き残りが仕舞い方を知らない以上、ルリアージェが翼をしまう方法はない。ジルが背に黒い翼を出して、ぱたぱたと動かした。考えながらしまう、出すを繰り返し始める。

「リア、ちょっと試してほしいんだけど」

 そう切り出したジルが提案した方法は、意外なものだった。彼にとって翼は霊力とセットらしい。つまり霊力を体内に封じ込めるイメージで、翼が出し入れできる。人族の魔術師として上位のルリアージェなら、魔力を体内に戻す形を翼に流用できないか。

 翼を魔力の延長として考える方法だった。魔力だと思えば、体内に納めることができる。

「なるほど。確かに魔力のような感じはある」

 体内をめぐる魔力の流れを翼にまで範囲を広げていく。そしてすべてを胸のあたりに押し込めるイメージを作り上げた。胸元にある小さな空間に魔力を収納して、いつの間にか閉じていた目を開く。

「どうだ? 消えたか?」

 息を飲んで見守っていた魔性達の驚いた顔に、首をかしげる。消えていないのだろうか。

「本当に消えたわ」

 右隣のライラが背中でひらひら手を動かし、ジルがほっとした表情で背中に手を触れた。そこに翼の感覚はない。成功したと頬を緩めたルリアージェが気を緩めると、ばさっと翼が外に飛び出した。
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