350 / 386
第二十一章 寿命という概念
第95話 仮装する収穫祭(5)
しおりを挟む
「お、見えてきた」
大量の人々が埋め尽くす広場で、噴水の近くに作られた櫓に似た建物がある。イベント用に臨時で作ったらしく、木組みの簡易なステージだった。
「……綺麗だ」
踊り子が薄い生地を纏わせながら、ひらひらと踊り続ける。名のある踊り手なのだろう。周囲から「アリア」や「シェリー」といった名前が飛び交った。名を呼ばれると応えながら、踊り子達は音楽が止まるまでステージを賑やかす。
「見事だわ」
ライラも感心した声をあげる。踊りが終わると、彼女らの後ろに大きな袋が大量に届けられた。一際高い歓声が上がった観客の様子に驚いていると、上から小さな袋がばら撒かれる。手のひらに乗る小さな紙袋を開くと、飴や焼き菓子が包まれていた。
王家を示す紋章が押印された紙袋は、踊り子たちの手で国民の上に降り注ぐ。これが王族からのお振る舞いなのだろう。次に受け止めた袋には銀貨が1枚、その次は髪飾りらしきアクセサリーが入っていた。どうやら内容はかなりバリエーション豊からしい。
重そうな袋もあれば、軽い袋もある。恒例となった袋撒きが終わると、都の住人も観光客も徐々に広場から散り始めた。ルリアージェは受け止めた5つの袋を手に振り返る。
手ぶらの魔性達に首を傾げ、「お前達は拾わなかったのか?」と口にした。言った後で、彼らは何でも欲しい物が手に入るのだから、拾う必要はないのかと納得する。しかし、肩を竦めたジルは予想外の言葉をくれた。
「リアが楽しんでるんだから、参加するさ。ただ他人の手から奪う奴も結構いたから、こうやって……ほら、確保してある」
「あたくしも」
「私もですわ」
「当然ですね」
「楽しむのが祭りのルールですから」
それぞれに収納魔法の口を少し開いて見せてくれた。中に紙袋が複数落ちているのがわかる。彼らも一緒に紙袋拾いをしてくれたことが嬉しくて、ルリアージェは笑顔になった。
「夕食は屋台で済ませる? それとも宿に戻る?」
宿の食堂も祭りに合わせて料理を用意するだろう。どちらでも構わないと決定権を委ねるライラへ、変装した赤毛美女は「うーん」と迷う様子をみせた。出かける前に宿の主人が口にした「収穫祭の時期の民族料理」も気になるが、屋台の食べ歩きも捨てがたい。
「リア、祭りはまだ2日あるんだから、今日と明日で分けたらどうだ?」
ジルが提案した内容は、どちらも選べる魅力的なものだった。目を輝かせたルリアージェが「ならば今日は宿で食べる!」と答えを高らかに告げる。他の魔性に異存などあるわけなく、足を宿がある南へ向けた。
大量の人々が埋め尽くす広場で、噴水の近くに作られた櫓に似た建物がある。イベント用に臨時で作ったらしく、木組みの簡易なステージだった。
「……綺麗だ」
踊り子が薄い生地を纏わせながら、ひらひらと踊り続ける。名のある踊り手なのだろう。周囲から「アリア」や「シェリー」といった名前が飛び交った。名を呼ばれると応えながら、踊り子達は音楽が止まるまでステージを賑やかす。
「見事だわ」
ライラも感心した声をあげる。踊りが終わると、彼女らの後ろに大きな袋が大量に届けられた。一際高い歓声が上がった観客の様子に驚いていると、上から小さな袋がばら撒かれる。手のひらに乗る小さな紙袋を開くと、飴や焼き菓子が包まれていた。
王家を示す紋章が押印された紙袋は、踊り子たちの手で国民の上に降り注ぐ。これが王族からのお振る舞いなのだろう。次に受け止めた袋には銀貨が1枚、その次は髪飾りらしきアクセサリーが入っていた。どうやら内容はかなりバリエーション豊からしい。
重そうな袋もあれば、軽い袋もある。恒例となった袋撒きが終わると、都の住人も観光客も徐々に広場から散り始めた。ルリアージェは受け止めた5つの袋を手に振り返る。
手ぶらの魔性達に首を傾げ、「お前達は拾わなかったのか?」と口にした。言った後で、彼らは何でも欲しい物が手に入るのだから、拾う必要はないのかと納得する。しかし、肩を竦めたジルは予想外の言葉をくれた。
「リアが楽しんでるんだから、参加するさ。ただ他人の手から奪う奴も結構いたから、こうやって……ほら、確保してある」
「あたくしも」
「私もですわ」
「当然ですね」
「楽しむのが祭りのルールですから」
それぞれに収納魔法の口を少し開いて見せてくれた。中に紙袋が複数落ちているのがわかる。彼らも一緒に紙袋拾いをしてくれたことが嬉しくて、ルリアージェは笑顔になった。
「夕食は屋台で済ませる? それとも宿に戻る?」
宿の食堂も祭りに合わせて料理を用意するだろう。どちらでも構わないと決定権を委ねるライラへ、変装した赤毛美女は「うーん」と迷う様子をみせた。出かける前に宿の主人が口にした「収穫祭の時期の民族料理」も気になるが、屋台の食べ歩きも捨てがたい。
「リア、祭りはまだ2日あるんだから、今日と明日で分けたらどうだ?」
ジルが提案した内容は、どちらも選べる魅力的なものだった。目を輝かせたルリアージェが「ならば今日は宿で食べる!」と答えを高らかに告げる。他の魔性に異存などあるわけなく、足を宿がある南へ向けた。
0
あなたにおすすめの小説
残念ながら主人公はゲスでした。~異世界転移したら空気を操る魔法を得て世界最強に。好き放題に無双する俺を誰も止められない!~
日和崎よしな
ファンタジー
―あらすじ―
異世界に転移したゲス・エストは精霊と契約して空気操作の魔法を獲得する。
強力な魔法を得たが、彼の真の強さは的確な洞察力や魔法の応用力といった優れた頭脳にあった。
ゲス・エストは最強の存在を目指し、しがらみのない異世界で容赦なく暴れまくる!
―作品について―
完結しました。
全302話(プロローグ、エピローグ含む),約100万字。
外れギフト魔石抜き取りの奇跡!〜スライムからの黄金ルート!婚約破棄されましたのでもうお貴族様は嫌です〜
KeyBow
ファンタジー
この世界では、数千年前に突如現れた魔物が人々の生活に脅威をもたらしている。中世を舞台にした典型的なファンタジー世界で、冒険者たちは剣と魔法を駆使してこれらの魔物と戦い、生計を立てている。
人々は15歳の誕生日に神々から加護を授かり、特別なギフトを受け取る。しかし、主人公ロイは【魔石操作】という、死んだ魔物から魔石を抜き取るという外れギフトを授かる。このギフトのために、彼は婚約者に見放され、父親に家を追放される。
運命に翻弄されながらも、ロイは冒険者ギルドの解体所部門で働き始める。そこで彼は、生きている魔物から魔石を抜き取る能力を発見し、これまでの外れギフトが実は隠された力を秘めていたことを知る。
ロイはこの新たな力を使い、自分の運命を切り開くことができるのか?外れギフトを当りギフトに変え、チートスキルを手に入れた彼の物語が始まる。
第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。
黒ハット
ファンタジー
前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。
異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた
りゅう
ファンタジー
異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。
いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。
その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。
最強令嬢とは、1%のひらめきと99%の努力である
megane-san
ファンタジー
私クロエは、生まれてすぐに傷を負った母に抱かれてブラウン辺境伯城に転移しましたが、母はそのまま亡くなり、辺境伯夫妻の養子として育てていただきました。3歳になる頃には闇と光魔法を発現し、さらに暗黒魔法と膨大な魔力まで持っている事が分かりました。そしてなんと私、前世の記憶まで思い出し、前世の知識で辺境伯領はかなり大儲けしてしまいました。私の力は陰謀を企てる者達に狙われましたが、必〇仕事人バリの方々のおかげで悪者は一層され、無事に修行を共にした兄弟子と婚姻することが出来ました。……が、なんと私、魔王に任命されてしまい……。そんな波乱万丈に日々を送る私のお話です。
【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。
BBやっこ
ファンタジー
死因の毒殺は、意外とは言い切れない。だって貴族の後継者扱いだったから。けど、私はこの家の子ではないかもしれない。そこをつけいられて、親族と名乗る人達に好き勝手されていた。
辺境の地で魔物からの脅威に領地を守りながら、過ごした12年間。その生が終わった筈だったけど…雨。その日に辺境伯が連れて来た赤ん坊。「セリュートとでも名付けておけ」暫定後継者になった瞬間にいた、私は赤ちゃん??
私が、もう一度自分の人生を歩み始める物語。給水係と呼ばれる水魔法でお悩み解決?
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
<番外編>政略結婚した夫の愛人は私の専属メイドだったので離婚しようと思います
結城芙由奈@コミカライズ連載中
ファンタジー
< 嫁ぎ先の王国を崩壊させたヒロインと仲間たちの始まりとその後の物語 >
前作のヒロイン、レベッカは大暴れして嫁ぎ先の国を崩壊させた後、結婚相手のクズ皇子に別れを告げた。そして生き別れとなった母を探す為の旅に出ることを決意する。そんな彼女のお供をするのが侍女でドラゴンのミラージュ。皇子でありながら国を捨ててレベッカたちについてきたサミュエル皇子。これはそんな3人の始まりと、その後の物語―。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる