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第二十一章 寿命という概念
第97話 白日に晒す痛み(2)
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「どうして……」
生まれは人族のはず、そう呟いたルリアージェにジルが息を飲んだ。唇を噛みしめ、それから震える吐息を漏らす。理由に心当たりがあるジルの口は重く、なかなか言葉に出せなかった。
それでも黙っているわけにいかない。知りたいと願ったのは最愛の人で、己が唯一と定めた主だった。真実を告げることで遠ざけられても、自業自得なのだから。
「リアのケガを治した時に、オレの血を使っただろ。あれが引き金だ」
奇妙な言い回しに気づいたのは、ライラが早かった。続いてリシュアとリオネルが顔を見合わせ、パウリーネは驚いた顔で固まる。そんな彼と彼女らの反応に、ルリアージェは予想が正しいことを確信した。
「お前の封印を解いたことが、原因だな?」
ジルは引き金という単語を使った。それは別の原因があって、下地がある場所に切っ掛けを与えたという意味だ。
ジルの血だけで変質するなら、他にも同様の反応が出た者がいたはず。ルリアージェの指摘に、リオネルが口を開くがジルは首を横に振った。余計な口出しをするなと止められ、悔しそうに俯く。
「金剛石にオレを封じた『鎖の封印』は時間が止まる。だから中に封じられたオレにとって、1000年は瞬きの間だった。そして封印に引きずられた魔王3人も同様に、時間が止まっていた」
諦めたようにジルの口が軽くなった。嫌われる覚悟が決まることはない。重かった口が動き出したのは、彼女に告げるべき真実を吐き出す痛みを感じたからだ。他人の口から似たような話を聞かせるなら、自分の口できちんと彼女に告げよう。
断罪される立場のくせに、なぜ嫌われることを恐れるのか。すでに好かれる要素なんてない。彼女の時間を奪ってしまったのだから。老いて死ぬ権利を壊したオレが何を躊躇う? 自虐めいた考えが過り、ジルは気を落ち着けるために深呼吸した。
美しい蒼い瞳を正面から見つめる。
「魔王とオレの時間を止めた封印は、中途半端に解除された。時間の流れには規則があり、流れを逆流させたり食い止める方法はない。ならばオレ達の時間を止めていた鎖はどうなったか。リアの時間が止まったのは、オレの封印を解いた時から。それでも確定せず不安定だった鎖がリアを捉えたのは、オレの血を使った瞬間からだ」
「いつから……知っていた?」
ルリアージェの確認に、口を出せない4人は視線をそらした。
生まれは人族のはず、そう呟いたルリアージェにジルが息を飲んだ。唇を噛みしめ、それから震える吐息を漏らす。理由に心当たりがあるジルの口は重く、なかなか言葉に出せなかった。
それでも黙っているわけにいかない。知りたいと願ったのは最愛の人で、己が唯一と定めた主だった。真実を告げることで遠ざけられても、自業自得なのだから。
「リアのケガを治した時に、オレの血を使っただろ。あれが引き金だ」
奇妙な言い回しに気づいたのは、ライラが早かった。続いてリシュアとリオネルが顔を見合わせ、パウリーネは驚いた顔で固まる。そんな彼と彼女らの反応に、ルリアージェは予想が正しいことを確信した。
「お前の封印を解いたことが、原因だな?」
ジルは引き金という単語を使った。それは別の原因があって、下地がある場所に切っ掛けを与えたという意味だ。
ジルの血だけで変質するなら、他にも同様の反応が出た者がいたはず。ルリアージェの指摘に、リオネルが口を開くがジルは首を横に振った。余計な口出しをするなと止められ、悔しそうに俯く。
「金剛石にオレを封じた『鎖の封印』は時間が止まる。だから中に封じられたオレにとって、1000年は瞬きの間だった。そして封印に引きずられた魔王3人も同様に、時間が止まっていた」
諦めたようにジルの口が軽くなった。嫌われる覚悟が決まることはない。重かった口が動き出したのは、彼女に告げるべき真実を吐き出す痛みを感じたからだ。他人の口から似たような話を聞かせるなら、自分の口できちんと彼女に告げよう。
断罪される立場のくせに、なぜ嫌われることを恐れるのか。すでに好かれる要素なんてない。彼女の時間を奪ってしまったのだから。老いて死ぬ権利を壊したオレが何を躊躇う? 自虐めいた考えが過り、ジルは気を落ち着けるために深呼吸した。
美しい蒼い瞳を正面から見つめる。
「魔王とオレの時間を止めた封印は、中途半端に解除された。時間の流れには規則があり、流れを逆流させたり食い止める方法はない。ならばオレ達の時間を止めていた鎖はどうなったか。リアの時間が止まったのは、オレの封印を解いた時から。それでも確定せず不安定だった鎖がリアを捉えたのは、オレの血を使った瞬間からだ」
「いつから……知っていた?」
ルリアージェの確認に、口を出せない4人は視線をそらした。
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