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第二十二章 世界の色が変わる瞬間

第107話 龍とドラゴンは別種族(3)

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「ジェンが契約したなら問題ない」

 ルリアージェに危害を加える心配はないと、ジルが頷いた。隣のライラも「雷竜なら特殊な生存条件はないと思うわ」と記憶を辿りながら話を繋ぐ。パウリーネとリシュアも特に問題は思いつかなかった。

 先ほど見かけた雪竜や氷竜だと暖かい場所は苦手だから、炎龍であるジェンと相性が悪い。しかし雷は問題ないうえ、相性も抜群だった。

「お待たせいたしました」

 この場面で、リオネルがようやく顔を見せた。優雅に一礼する彼だが、洞窟の中にある影からするりと出てくる。魔法陣を使わない彼の移動方法は、魔術とは別の力であるため興味深かった。しかし尋ねる前に、興味は別の物へ移る。

「ジル様も含め、全員が己に関係あるドラゴンを探すと思いましたので……こちらをお持ちしました」

 彼が差し出したのは、小さな手乗りサイズのドラゴンだった。

「新種ですね。この大きさで成竜のようです」

「石……岩、かしら?」

 近づいたライラが真剣に眺める。駆け寄ったルリアージェも手を伸ばすが、先にジルの結界が張られた。いきなり触って毒があるといけない。そんな気遣いを感じ、ルリアージェは彼に微笑んだ。

「いつも助かる」

「リアのためだけど、オレのためでもあるからね」

 ウィンクして寄こすジルも隣に立つと、指先で小さなドラゴンを突いた。鳴くでもなく、怯えるでもない。きょとんとした顔で魔性達を眺める姿は、まだ幼竜のようだ。畳んでいた翼を摘まんで広げたジルが、驚いた顔をした。

「本当に成竜だ」

「どこで判断するのだ?」

 翼のどこかに記号でもあるのか。興味津々のルリアージェを引き寄せ、翼の上部を指さす。畳んでいると見えないが、広げると翼に小さな爪がついていた。

「これが判断基準だ。子供のうちはこぶがあるだけで爪はない。成竜になると、こぶの中から爪が生えてくるんだ」

 への字に折れた頂点についた爪が見分けるポイントらしい。普通は触れることが出来ないから、ドラゴンが広げてくれるのを待つのだが、彼らは気にせず翼をいじくりまわしていた。人の手が嫌いではないらしく、ドラゴンも逃げる素振りは見せない。

 大人しく撫でさせてくれる竜は、美しい翡翠色の羽をしていた。爪は深い青、ボディは虹色だろうか。見る角度によって色が違うが、全体に真珠に似た印象を受けた。まろやかで柔らかい色合いだ。

 撫でる手にすり寄るドラゴンは、柔らかかった。

「……リアの考えが読めるわね」

「奇遇だな、オレもだ」

「「「私達もです(わ)」」」

 ライラに、ジルと3人が同調した。言う前に伝わってしまった要望に、恥ずかしくなって顔をそむける。赤くなった耳に、「連れていきたいんだろ?」と苦笑いするジルの声が届いた。
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