62 / 321
61.我慢してきてよかった
しおりを挟む
僕の仕事はセティと一緒にいて、抱っこする。そうしたら仲良くなるお呪いをしてもらえて、もっとセティと近くなる。目を輝かせてそう尋ねたら、セティが「よくできた」と頭を撫でてくれた。
手を繋いでご飯を買って宿に帰る。顔を上げるとセティが気づいて笑ってくれた。ぎゅっと力を込めて握ると、大切そうに僕を抱き上げてくれる。
僕はずっと1人で繋がれてた。誰も僕を抱っこしてくれなかったけど、それってセティに抱っこしてもらう為だったんだと思う。セティは僕をお嫁さんだって言った。贄なんだって――僕は知ってる。贄は神様に捧げる物だよ。だからタイフォンの神様であるセティは、贄の僕をもらってくれた。
僕、我慢してきてよかった。セティの贄に選ばれてよかった。
「先に食べようか」
お風呂は後と聞いて、宿の部屋の机に向かう。でもセティはその手を掴んで、ベッドの上に座らせた。待っている僕の前に、机が運ばれてくる。椅子の代わりにベッドを使うの? でも高さが合わないけど。顔の前にある机の板が邪魔で、上の物がよく見えない。
背伸びしようとした僕を抱っこしたセティは、自分が座った膝に乗せてくれた。セティの顔が近くなって、机もちょうどいい。嬉しくて笑顔になった僕の髪にセティがキスをした。
「昨日は騒がしい飯だったし、今日はゆっくり食べような」
「ありがとう」
僕のためなんだね。それがすごく嬉しくて、胸がじわっと温かくなる。擽ったくて叫びたいような変な感じがした。よくわかんないけど、嬉しすぎるとなる。体中が温かくて気持ちよくて、腰の辺りがじゅんとした。変なの。
「あーんだ」
スプーンを手にした僕だけど、全部セティが運んでくれる。スープを飲んで、それから白い魚を食べて、卵が乗った草も食べた。パンに魚を挟んでもらったので、スプーンを置いて両手で食べ始めた。真ん中を切ったパンを齧ると、下から汁が手に垂れる。
「ん……」
汚れちゃう。買ってもらった服の上に白い布を掛けてるけど、汚くなったら困る。パンを持ったまま慌てて小指の辺りを舐めた。そうしたら斜めになったパンから魚が落ちそうになって、大急ぎでそっちを齧る。
「こりゃ忙しい」
くすくす笑って、パンを置く皿を出された。ぎゅっと握ったから手の跡がついたけど、置くとふんわりと膨らむ。それを銀の細長いナイフで半分に切ってくれた。見ているとまた半分にして小さくなる。
「これなら口に入るか? ほら」
「あーん」
口を開けて、小さくなったパンと魚をいっぺんに頬張った。口がいっぱいになって、もぐもぐと動かす間動けなくなる。ジュースのコップが近くに置かれた。飲みたいけど、口を開けたらパンが出ちゃいそう。必死で噛んでいくと顎が疲れた。
だいぶ噛んでから飲み込んで、ようやくジュースを飲む。喉が渇いたら、いつもより甘くて美味しく感じた。
「セティも、あーん」
残ったパンを掴んで口に入れる。セティの口は大きいから、僕より早く食べ終わった。汚れた手をぺろぺろ舐めていたら、口の辺りを押さえたセティが「我慢だ」と呟いた。よくわかんないけど、押さえていた場所は口じゃなくて鼻だったみたい。
手を繋いでご飯を買って宿に帰る。顔を上げるとセティが気づいて笑ってくれた。ぎゅっと力を込めて握ると、大切そうに僕を抱き上げてくれる。
僕はずっと1人で繋がれてた。誰も僕を抱っこしてくれなかったけど、それってセティに抱っこしてもらう為だったんだと思う。セティは僕をお嫁さんだって言った。贄なんだって――僕は知ってる。贄は神様に捧げる物だよ。だからタイフォンの神様であるセティは、贄の僕をもらってくれた。
僕、我慢してきてよかった。セティの贄に選ばれてよかった。
「先に食べようか」
お風呂は後と聞いて、宿の部屋の机に向かう。でもセティはその手を掴んで、ベッドの上に座らせた。待っている僕の前に、机が運ばれてくる。椅子の代わりにベッドを使うの? でも高さが合わないけど。顔の前にある机の板が邪魔で、上の物がよく見えない。
背伸びしようとした僕を抱っこしたセティは、自分が座った膝に乗せてくれた。セティの顔が近くなって、机もちょうどいい。嬉しくて笑顔になった僕の髪にセティがキスをした。
「昨日は騒がしい飯だったし、今日はゆっくり食べような」
「ありがとう」
僕のためなんだね。それがすごく嬉しくて、胸がじわっと温かくなる。擽ったくて叫びたいような変な感じがした。よくわかんないけど、嬉しすぎるとなる。体中が温かくて気持ちよくて、腰の辺りがじゅんとした。変なの。
「あーんだ」
スプーンを手にした僕だけど、全部セティが運んでくれる。スープを飲んで、それから白い魚を食べて、卵が乗った草も食べた。パンに魚を挟んでもらったので、スプーンを置いて両手で食べ始めた。真ん中を切ったパンを齧ると、下から汁が手に垂れる。
「ん……」
汚れちゃう。買ってもらった服の上に白い布を掛けてるけど、汚くなったら困る。パンを持ったまま慌てて小指の辺りを舐めた。そうしたら斜めになったパンから魚が落ちそうになって、大急ぎでそっちを齧る。
「こりゃ忙しい」
くすくす笑って、パンを置く皿を出された。ぎゅっと握ったから手の跡がついたけど、置くとふんわりと膨らむ。それを銀の細長いナイフで半分に切ってくれた。見ているとまた半分にして小さくなる。
「これなら口に入るか? ほら」
「あーん」
口を開けて、小さくなったパンと魚をいっぺんに頬張った。口がいっぱいになって、もぐもぐと動かす間動けなくなる。ジュースのコップが近くに置かれた。飲みたいけど、口を開けたらパンが出ちゃいそう。必死で噛んでいくと顎が疲れた。
だいぶ噛んでから飲み込んで、ようやくジュースを飲む。喉が渇いたら、いつもより甘くて美味しく感じた。
「セティも、あーん」
残ったパンを掴んで口に入れる。セティの口は大きいから、僕より早く食べ終わった。汚れた手をぺろぺろ舐めていたら、口の辺りを押さえたセティが「我慢だ」と呟いた。よくわかんないけど、押さえていた場所は口じゃなくて鼻だったみたい。
227
あなたにおすすめの小説
伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい
マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。
最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡)
世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。
転生エルフの天才エンジニア、静かに暮らしたいのに騎士団長に捕まる〜俺の鉄壁理論は彼の溺愛パッチでバグだらけです〜
たら昆布
BL
転生したらエルフだった社畜エンジニアがのんびり森で暮らす話
騎士団長とのじれったい不器用BL
追放されたおまけの聖女♂は冷徹王太子の腕の中から離してもらえない〜今さら戻れと言われても、もうこの人の魔力しか受け付けません!〜
たら昆布
BL
聖女のおまけで召喚されたと思われて追放された不憫受けが拾われて愛される話
悪役令息ですが破滅回避で主人公を無視したら、高潔な態度だと勘違いされて聖人認定。なぜか溺愛ルートに入りました
水凪しおん
BL
BL小説『銀の瞳の聖者』の悪役令息ルシアンに転生してしまった俺。
原作通りなら、主人公ノエルをいじめ抜き、最後は断罪されて野垂れ死ぬ運命だ。
「そんなの絶対にお断りだ! 俺は平和に長生きしたい!」
破滅フラグを回避するため、俺は決意した。
主人公ノエルを徹底的に避け、関わらず、空気のように生きることを。
しかし、俺の「無視」や「無関心」は、なぜかノエルにポジティブに変換されていく。
「他の人のように欲望の目で見ないなんて、なんて高潔な方なんだ……!」
いじめっ子を視線だけで追い払えば「影から守ってくれた」、雨の日に「臭いから近寄るな」と上着を投げつければ「不器用な優しさ」!?
全力で嫌われようとすればするほど、主人公からの好感度が爆上がりして、聖人認定されてしまう勘違いラブコメディ!
小心者の悪役令息×健気なポジティブ主人公の、すれ違い溺愛ファンタジー、ここに開幕!
番に見つからない街で、子供を育てている
はちも
BL
目を覚ますと、腕の中には赤ん坊がいた。
異世界の青年ロアンとして目覚めた「俺」は、希少な男性オメガであり、子を産んだ母親だった。
現世の記憶は失われているが、
この子を守らなければならない、という想いだけははっきりと残っている。
街の人々に助けられ、魔石への魔力注入で生計を立てながら、
ロアンと息子カイルは、番のいない街で慎ましく暮らしていく。
だが、行方不明の番を探す噂が、静かに近づいていた。
再会は望まない。
今はただ、この子との生活を守りたい。
これは、番から逃げたオメガが、
選び直すまでの物語。
*本編完結しました
【16話完結】あの日、王子の隣を去った俺は、いまもあなたを想っている
キノア9g
BL
かつて、誰よりも大切だった人と別れた――それが、すべての始まりだった。
今はただ、冒険者として任務をこなす日々。けれどある日、思いがけず「彼」と再び顔を合わせることになる。
魔法と剣が支配するリオセルト大陸。
平和を取り戻しつつあるこの世界で、心に火種を抱えたふたりが、交差する。
過去を捨てたはずの男と、捨てきれなかった男。
すれ違った時間の中に、まだ消えていない想いがある。
――これは、「終わったはずの恋」に、もう一度立ち向かう物語。
切なくも温かい、“再会”から始まるファンタジーBL。
お題『復縁/元恋人と3年後に再会/主人公は冒険者/身を引いた形』設定担当AI /チャッピー
AI比較企画作品
君さえ笑ってくれれば最高
大根
BL
ダリオ・ジュレの悩みは1つ。「氷の貴公子」の異名を持つ婚約者、ロベルト・トンプソンがただ1度も笑顔を見せてくれないことだ。感情が顔に出やすいダリオとは対照的な彼の態度に不安を覚えたダリオは、どうにかロベルトの笑顔を引き出そうと毎週様々な作戦を仕掛けるが。
(クーデレ?溺愛美形攻め × 顔に出やすい素直平凡受け)
異世界BLです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる