【完結】愛執 ~愛されたい子供を拾って溺愛したのは邪神でした~

綾雅(りょうが)要らない悪役令嬢

文字の大きさ
90 / 321

89.キスはセティだけ

しおりを挟む
 ご飯を食べる前に、ゲリュオンとの距離感というのを教えてもらった。手で触ってもいいが、顔を近づけるのはダメ。抱っこはセティがいなくて、危ない時だけ。ゲリュオンも一緒に約束していた。お熱を測るのも手でやる。

 キスはセティ以外はダメ。これは僕も大きく頷いた。誰ともしない……あれ?

「トムやフォンも?」

「……ダメ」

 トムはよく顔を舐めたりするから、気を付けないとね。セティの膝の上で約束して、僕は座り直した。横向きだとご飯が食べづらいんだよ。セティに背中を向けて、お皿の魚を見つめる。

「赤、綺麗だね」

 焼いたり煮たのは茶色や白っぽいのが多いけど、今日の魚は真っ赤だ。こんな色で泳いでたら目立つんじゃないかな。野菜の上に並んで、油みたいなのがかかってた。くんと匂いを確かめると、上に乗ってる小さな緑の葉は森でよく採ったのと同じだ。

「ああ、生魚だから色が透き通ってるだろ。これを口に入る大きさに切って、野菜と一緒に食べてごらん」

 マリネという食べ方だって。ゲリュオンもセティもいっぱい教えてくれる。初めての食べ物にどきどきしながら切った。柔らかいからすぐに切れる。魚を刺して、野菜も刺すけど……野菜だけ落ちちゃった。何度も挑戦していると、セティが後ろから助けてくれた。

 右手のナイフで乗せるんだ。すっと動いて僕の口の前に運ばれた。ぱくっと食べたら、すごく美味しかった。油みたいなのも果物の匂いがする。すごい!

「気に入ったならよかった」

「用意した甲斐があったってもんだ」

 お礼を言った僕に、ゲリュオンが笑いながら撫でてくれる。今度は自分で食べた。

「体調も落ち着いたし、この街を出るぞ」

 半分以上食べたところで、セティは僕を横向きに抱っこしてしまった。これじゃ残りが食べられないと思ったんだけど、セティが食べさせてくれるみたい。あーんして、食べる。マナーのお勉強は必要ないの? そう聞いたら、お勉強だけじゃ疲れちゃうんだって。まだ僕が知らないこと、たくさんあるね。

「ティターンの騒動も片付いたんだ。そろそろ別行動するか」

「ゲリュオン、いなくなっちゃうの?」

「様子は見に来るさ」

 くしゃっと顔を崩して笑うゲリュオンに僕も笑い返した。顔の大きな傷はもう痛くないみたいだけど、そっと撫でておく。驚いた顔をしたあと、ゲリュオンがお礼を言った。

「予定は?」

「ドラゴンでも見に行こうと思ってな」

「まさか見繕う気か?」

 ちらっと僕へ視線を向けるゲリュオン。あーんしてもらった魚をもぐもぐ噛む僕が首をかしげると、セティの手がそっと戻した。

「いいのがいれば、かな」

 よくわからないけど、ドラゴンは知ってる。絵本に描いてあった。大きい翼のある、空飛ぶやつ! 嬉しくて足を揺すったら、行儀悪いぞと押さえられた。ご飯食べるときは大人しくしないとね。僕が悪かったのでごめんなさいして、また魚をもらった。

「にゃぁ」

 飛び上がったトムが膝で鳴いたけど、すぐに首をままれてベッドへ投げられた。くるっと着地するトムはフォンの腹によじ登って、眠ってしまう。

「ドラゴン、見るの?」

「そうだ」

「楽しみだね」

 そこから果物を食べながら、ドラゴンについて知ってることを話して、知らないことをいっぱい教えてもらった。大きい牙があるみたいだから、僕、噛まれないようにするね。
しおりを挟む
感想 63

あなたにおすすめの小説

伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい

マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。 最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡) 世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。

聖獣召喚に巻き込まれた俺、モフモフの通訳をしてたら冷徹騎士団長に外堀を埋められました

たら昆布
BL
完璧っぽいエリート騎士×無自覚な愛され系

転生エルフの天才エンジニア、静かに暮らしたいのに騎士団長に捕まる〜俺の鉄壁理論は彼の溺愛パッチでバグだらけです〜

たら昆布
BL
転生したらエルフだった社畜エンジニアがのんびり森で暮らす話 騎士団長とのじれったい不器用BL

悪役令息ですが破滅回避で主人公を無視したら、高潔な態度だと勘違いされて聖人認定。なぜか溺愛ルートに入りました

水凪しおん
BL
BL小説『銀の瞳の聖者』の悪役令息ルシアンに転生してしまった俺。 原作通りなら、主人公ノエルをいじめ抜き、最後は断罪されて野垂れ死ぬ運命だ。 「そんなの絶対にお断りだ! 俺は平和に長生きしたい!」 破滅フラグを回避するため、俺は決意した。 主人公ノエルを徹底的に避け、関わらず、空気のように生きることを。 しかし、俺の「無視」や「無関心」は、なぜかノエルにポジティブに変換されていく。 「他の人のように欲望の目で見ないなんて、なんて高潔な方なんだ……!」 いじめっ子を視線だけで追い払えば「影から守ってくれた」、雨の日に「臭いから近寄るな」と上着を投げつければ「不器用な優しさ」!? 全力で嫌われようとすればするほど、主人公からの好感度が爆上がりして、聖人認定されてしまう勘違いラブコメディ! 小心者の悪役令息×健気なポジティブ主人公の、すれ違い溺愛ファンタジー、ここに開幕!

番に見つからない街で、子供を育てている

はちも
BL
目を覚ますと、腕の中には赤ん坊がいた。 異世界の青年ロアンとして目覚めた「俺」は、希少な男性オメガであり、子を産んだ母親だった。 現世の記憶は失われているが、 この子を守らなければならない、という想いだけははっきりと残っている。 街の人々に助けられ、魔石への魔力注入で生計を立てながら、 ロアンと息子カイルは、番のいない街で慎ましく暮らしていく。 だが、行方不明の番を探す噂が、静かに近づいていた。 再会は望まない。 今はただ、この子との生活を守りたい。 これは、番から逃げたオメガが、 選び直すまでの物語。 *本編完結しました

追放されたおまけの聖女♂は冷徹王太子の腕の中から離してもらえない〜今さら戻れと言われても、もうこの人の魔力しか受け付けません!〜

たら昆布
BL
聖女のおまけで召喚されたと思われて追放された不憫受けが拾われて愛される話

【16話完結】あの日、王子の隣を去った俺は、いまもあなたを想っている

キノア9g
BL
かつて、誰よりも大切だった人と別れた――それが、すべての始まりだった。 今はただ、冒険者として任務をこなす日々。けれどある日、思いがけず「彼」と再び顔を合わせることになる。 魔法と剣が支配するリオセルト大陸。 平和を取り戻しつつあるこの世界で、心に火種を抱えたふたりが、交差する。 過去を捨てたはずの男と、捨てきれなかった男。 すれ違った時間の中に、まだ消えていない想いがある。 ――これは、「終わったはずの恋」に、もう一度立ち向かう物語。 切なくも温かい、“再会”から始まるファンタジーBL。 お題『復縁/元恋人と3年後に再会/主人公は冒険者/身を引いた形』設定担当AI /チャッピー AI比較企画作品

君さえ笑ってくれれば最高

大根
BL
ダリオ・ジュレの悩みは1つ。「氷の貴公子」の異名を持つ婚約者、ロベルト・トンプソンがただ1度も笑顔を見せてくれないことだ。感情が顔に出やすいダリオとは対照的な彼の態度に不安を覚えたダリオは、どうにかロベルトの笑顔を引き出そうと毎週様々な作戦を仕掛けるが。 (クーデレ?溺愛美形攻め × 顔に出やすい素直平凡受け) 異世界BLです。

処理中です...