212 / 321
211.またね、その約束をした
しおりを挟む
神様であるセティが望んだからなのか、次の日は雨が止んだ。まだ曇ってるけど、雨は落ちて来ない。洞窟神殿の入り口で見上げる空は、暗い灰色をしていた。晴れた日の白い雲と違って、なんだか重そう。
「晴れたら出掛ける予定だったが、これはまた……」
後ろから上着を僕の肩にかけるセティが苦笑いする。晴れてはいないね、でも雨も降ってない。シェリアが走ってきて、泥の手前で止まった。しゃがんで、水たまりの中を覗いている。それから立ち上がり、ゲリュオンを引っ張った。一緒に覗いてゲリュオンが説明する。
「神域の泉や池は、本来の姿が映る。ここは今、神族が3人もいるからな。水たまりにも影響したんだろ」
ゲリュオンの説明を考えてみる。セティはタイフォン神様、ゲリュオンも神様、でも3人いる神様? もしかして……。
「シェリアは神様?!」
「「違う」」
セティとゲリュオンに否定された。その後、山の上の原始神殿で成長した時に僕は神様の1人になっていたと知った。神様は1柱と数えるんだって。前に柱の話が出たのは、神様を数えてたからか。セティと同じなのが嬉しくて、両手で抱き着く。
成長した僕の手はセティの背中で、お互いを握れる。それが嬉しかった。食べてもらうために神様になったなら嬉しいのに。黒髪を撫でてくれるセティが、空の変化に気づいて顔を上げる。僕もつられて上を見ると、雲の間から光が落ちてきた。
「晴れたな」
「俺らはもう少しここに住む。居心地いいしな」
セティが出掛けようと促す声に、ゲリュオンは残ると言い出した。驚いたのは僕だけで、シェリアは知ってたみたい。お別れになると聞いて、僕はシェリアの隣にしゃがんだ。ずっと水たまりを見つめる彼女の視線の先に、馬の姿が映っている。シェリアは翼と角がある馬だから、当たり前なんだけど。
見つめていた馬の顔に何かが落ちて、反射していた絵が揺れる。また落ちてきた。顔を上げた僕と視線を合わせたシェリアの頬に涙が伝う。手を伸ばして撫でて、涙を取ったのにまた溢れてきた。
「また会える?」
「うん。僕もセティもいつでも会える」
約束して指切りもした。これで絶対に約束を破れないんだよ。僕はセティと指を絡め、シェリアはゲリュオンと手を繋ぐ。間でシェリアの手を掴んだ。また会えるから心配しないし、泣かない。
「食事してから出かける。食べる準備してくれ」
セティが僕とシェリアが一緒に出来ることを提案してくれた。机の上をシェリアが拭いた。僕が食器を並べて、コップを置く。終わったのを待っていたみたいに、お鍋が運ばれてきた。パンを取り出したゲリュオンが「買い物に行かないとダメか」と笑う。
前にゲリュオンが狩った動物の肉を、丸焼きにして切り分けた。塩は海に行ったとき買ったやつ、胡椒やハーブは僕とセティが山で採った物だった。シェリアが絞った果物のジュースを飲みながら、パンに挟んで食べる。余った分を持っていくことになり、シェリアと包んだ。
「またね」
「うん」
挨拶はそれだけ。またすぐに会えるから、泣かなくていいよね。僕はセティがいるから寂しくない。抱き着いたセティの温かさに目を閉じ、転移のゆらゆらする感じに身を委ねた。
「晴れたら出掛ける予定だったが、これはまた……」
後ろから上着を僕の肩にかけるセティが苦笑いする。晴れてはいないね、でも雨も降ってない。シェリアが走ってきて、泥の手前で止まった。しゃがんで、水たまりの中を覗いている。それから立ち上がり、ゲリュオンを引っ張った。一緒に覗いてゲリュオンが説明する。
「神域の泉や池は、本来の姿が映る。ここは今、神族が3人もいるからな。水たまりにも影響したんだろ」
ゲリュオンの説明を考えてみる。セティはタイフォン神様、ゲリュオンも神様、でも3人いる神様? もしかして……。
「シェリアは神様?!」
「「違う」」
セティとゲリュオンに否定された。その後、山の上の原始神殿で成長した時に僕は神様の1人になっていたと知った。神様は1柱と数えるんだって。前に柱の話が出たのは、神様を数えてたからか。セティと同じなのが嬉しくて、両手で抱き着く。
成長した僕の手はセティの背中で、お互いを握れる。それが嬉しかった。食べてもらうために神様になったなら嬉しいのに。黒髪を撫でてくれるセティが、空の変化に気づいて顔を上げる。僕もつられて上を見ると、雲の間から光が落ちてきた。
「晴れたな」
「俺らはもう少しここに住む。居心地いいしな」
セティが出掛けようと促す声に、ゲリュオンは残ると言い出した。驚いたのは僕だけで、シェリアは知ってたみたい。お別れになると聞いて、僕はシェリアの隣にしゃがんだ。ずっと水たまりを見つめる彼女の視線の先に、馬の姿が映っている。シェリアは翼と角がある馬だから、当たり前なんだけど。
見つめていた馬の顔に何かが落ちて、反射していた絵が揺れる。また落ちてきた。顔を上げた僕と視線を合わせたシェリアの頬に涙が伝う。手を伸ばして撫でて、涙を取ったのにまた溢れてきた。
「また会える?」
「うん。僕もセティもいつでも会える」
約束して指切りもした。これで絶対に約束を破れないんだよ。僕はセティと指を絡め、シェリアはゲリュオンと手を繋ぐ。間でシェリアの手を掴んだ。また会えるから心配しないし、泣かない。
「食事してから出かける。食べる準備してくれ」
セティが僕とシェリアが一緒に出来ることを提案してくれた。机の上をシェリアが拭いた。僕が食器を並べて、コップを置く。終わったのを待っていたみたいに、お鍋が運ばれてきた。パンを取り出したゲリュオンが「買い物に行かないとダメか」と笑う。
前にゲリュオンが狩った動物の肉を、丸焼きにして切り分けた。塩は海に行ったとき買ったやつ、胡椒やハーブは僕とセティが山で採った物だった。シェリアが絞った果物のジュースを飲みながら、パンに挟んで食べる。余った分を持っていくことになり、シェリアと包んだ。
「またね」
「うん」
挨拶はそれだけ。またすぐに会えるから、泣かなくていいよね。僕はセティがいるから寂しくない。抱き着いたセティの温かさに目を閉じ、転移のゆらゆらする感じに身を委ねた。
170
あなたにおすすめの小説
あなたと過ごせた日々は幸せでした
蒸しケーキ
BL
結婚から五年後、幸せな日々を過ごしていたシューン・トアは、突然義父に「息子と別れてやってくれ」と冷酷に告げられる。そんな言葉にシューンは、何一つ言い返せず、飲み込むしかなかった。そして、夫であるアインス・キールに離婚を切り出すが、アインスがそう簡単にシューンを手離す訳もなく......。
殿下に婚約終了と言われたので城を出ようとしたら、何かおかしいんですが!?
krm
BL
「俺達の婚約は今日で終わりにする」
突然の婚約終了宣言。心がぐしゃぐしゃになった僕は、荷物を抱えて城を出る決意をした。
なのに、何故か殿下が追いかけてきて――いやいやいや、どういうこと!?
全力すれ違いラブコメファンタジーBL!
支部の企画投稿用に書いたショートショートです。前後編二話完結です。
虚ろな檻と翡翠の魔石
篠雨
BL
「本来の寿命まで、悪役の身体に入ってやり過ごしてよ」
不慮の事故で死んだ僕は、いい加減な神様の身勝手な都合により、異世界の悪役・レリルの器へ転生させられてしまう。
待っていたのは、一生を塔で過ごし、魔力を搾取され続ける孤独な日々。だが、僕を管理する強面の辺境伯・ヨハンが運んでくる薪や食事、そして不器用な優しさが、凍てついた僕の心を次第に溶かしていく。
しかし、穏やかな時間は長くは続かない。魔力を捧げるたびに脳内に流れ込む本物のレリルの記憶と領地を襲う未曾有の魔物の群れ。
「僕が、この場所と彼を守る方法はこれしかない」
記憶に翻弄され頭は混乱する中、魔石化するという残酷な決断を下そうとするが――。
-----------------------------------------
0時,6時,12時,18時に2話ずつ更新
新年に余り物でおせちを作ったら、冷酷と噂の騎士団長様に「運命の番」だと求婚されました
水凪しおん
BL
料理人だった俺が転生したのは、男性オメガというだけで家族に虐げられる不遇の青年カイ。
新年くらいはと前世の記憶を頼りに作ったのは、この世界にはない『おせち料理』だった。
それを偶然口にしたのは、氷のように冷酷と噂される最強の騎士団長リアム。
「お前は俺の運命の番だ」
彼の屋敷に保護され、俺の作る料理が彼の心を溶かしていく。
不器用で、だけどまっすぐな愛情を注いでくれる彼と、美味しい料理で紡ぐ、甘くて温かい異世界スローライフ。
悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?
* ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。
悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう!
せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー?
ユィリと皆の動画をつくりました!
インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新!
Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新!
プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!
「自由に生きていい」と言われたので冒険者になりましたが、なぜか旦那様が激怒して連れ戻しに来ました。
キノア9g
BL
「君に義務は求めない」=ニート生活推奨!? ポジティブ転生者と、言葉足らずで愛が重い氷の伯爵様の、全力すれ違い新婚ラブコメディ!
あらすじ
「君に求める義務はない。屋敷で自由に過ごしていい」
貧乏男爵家の次男・ルシアン(前世は男子高校生)は、政略結婚した若き天才当主・オルドリンからそう告げられた。
冷徹で無表情な旦那様の言葉を、「俺に興味がないんだな! ラッキー、衣食住保証付きのニート生活だ!」とポジティブに解釈したルシアン。
彼はこっそり屋敷を抜け出し、偽名を使って憧れの冒険者ライフを満喫し始める。
「旦那様は俺に無関心」
そう信じて、半年間ものんきに遊び回っていたルシアンだったが、ある日クエスト中に怪我をしてしまう。
バレたら怒られるかな……とビクビクしていた彼の元に現れたのは、顔面蒼白で息を切らした旦那様で――!?
「君が怪我をしたと聞いて、気が狂いそうだった……!」
怒鳴られるかと思いきや、折れるほど強く抱きしめられて困惑。
えっ、放置してたんじゃなかったの? なんでそんなに必死なの?
実は旦那様は冷徹なのではなく、ルシアンが好きすぎて「嫌われないように」と身を引いていただけの、超・奥手な心配性スパダリだった!
「君を守れるなら、森ごと消し飛ばすが?」
「過保護すぎて冒険になりません!!」
Fランク冒険者ののんきな妻(夫)×国宝級魔法使いの激重旦那様。
すれ違っていた二人が、甘々な「週末冒険者夫婦」になるまでの、勘違いと溺愛のハッピーエンドBL。
【完結済】あの日、王子の隣を去った俺は、いまもあなたを想っている
キノア9g
BL
かつて、誰よりも大切だった人と別れた――それが、すべての始まりだった。
今はただ、冒険者として任務をこなす日々。けれどある日、思いがけず「彼」と再び顔を合わせることになる。
魔法と剣が支配するリオセルト大陸。
平和を取り戻しつつあるこの世界で、心に火種を抱えたふたりが、交差する。
過去を捨てたはずの男と、捨てきれなかった男。
すれ違った時間の中に、まだ消えていない想いがある。
――これは、「終わったはずの恋」に、もう一度立ち向かう物語。
切なくも温かい、“再会”から始まるファンタジーBL。
お題『復縁/元恋人と3年後に再会/主人公は冒険者/身を引いた形』設定担当AI /チャッピー
AI比較企画作品
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる