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9章 遠足ってこんなんだっけ?
113. 遠足のおかずは交換して楽しむもの
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お弁当を広げると、アデーレの力作が並んでいた。大きく5つほどの集団に分けられた親子は、丸くなってお弁当タイムである。リリス、アリッサ、ターニャ、ルーシアが同じグループになった。そのためお友達同士でお弁当のおかず交換が始まる。
恐縮している親達へ「気楽にしていいぞ」と笑顔を振りまくルシファーだが、リリスの行動をしっかり目で追っていた。無邪気におかずを交換していくリリスの姿に、今後の展開が読めたルシファーは自分の弁当に手を付けず待つ。
ご機嫌で唐揚げを分けてあげたリリスだが、貰ったおかずを食べ終えて気付いた。自分の分までお友達に分けてしまったのだ。大好きな唐揚げを一個も食べていない事実に、半泣きになる。想像した通りの状況だった。
「リリス、あーん」
友達を大事にして自分のことを後回しにする娘に、手元の弁当箱から唐揚げを選んで食べさせる。フォークの先に刺さった唐揚げをぱくりと食べたリリスの頬が緩み、本当に幸せそうな顔で笑う。もう一個食べさせようとすると、首を横に振った。
「それ、パパのだもん」
「パパはお腹いっぱいになったぞ、残すともったいないな~。リリスが食べてくれないかな~」
わざとらしく大きな独り言を言ってリリスをみると、大きな赤い目を瞬いたリリスが「あーん」と口を開いた。そこへ唐揚げを入れて、再び幸せそうな顔を堪能する。
以前はそのまま受け取ってくれたが、保育園に通い出してから他人を思いやれる子になった。パパの分だといって好物を我慢しようとするリリスが可愛くて仕方ない。
ここで人目がなければ抱き締めて頬ずりして、甘やかし尽くしたいところだが……今度何かやらかしてアスタロト召還になったら、絶対に遠足から強制送還されるだろう。伸ばしかけた手をぐっと握って我慢した。
「美味しい?」
「うん」
リリスが残りのお弁当を食べ終え、お友達と立ち上がった。
「パパ、おみずのところであそぶ」
「気をつけてな」
「我が君、我も一緒に……」
護衛役のヤンがついていこうとするが、ルシファーに尻尾を掴まれてしまう。動きを止めたフェンリルの尻尾を撫でてやり、手招きした。
「やめとけ。子供同士で遊びたいんだろ。それに……水辺ならあのルーシアって子がいれば大丈夫だ」
水色の髪の幼女を示す。さきほど挨拶をしてくれた水の妖精族の子だった。水に関することなら、彼女がいれば安全だろう。先ほどまでの嫉妬深い子供の振る舞いが嘘のように、任せる姿勢をみせた。
普段の魔王はこの落ち着いたスタンスだ。ヤンが子狼の頃から君臨する主君だが、リリスを拾うまで嫉妬や醜い子供の面を見せることはなかった。こうして寛大に振る舞い、王らしい鷹揚さで応対する。砕けた態度や口調も、国民から親しみやすいと広く支持される一因だ。
文句を言いながらもアスタロトやベールは、ルシファーの二面性を受け入れていた。魔獣である故か、ヤンにとって二面性はまったく違和感なく、こういうものだと受け止める。そもそも生き物はいくつもの面を持つと、本能的に理解しているのだ。
くるんと丸くなって尻尾で促すと、ルシファーが少し動いて寄りかかった。寝るでもなく空を見上げて寝転がるルシファーの耳に、はしゃぐ子供達の声と水音が響く。心地よい時間にひとつ欠伸をした。
最初に反応したのはフェンリルであるヤン、続いて一部の上位貴族達が眉をひそめる。リリスも不安そうに空を見上げ、さすがにルシファーも身を起こした。
「なんだ?」
この場を襲う魔獣はいない。魔の森の獣王である灰色魔狼がいて、魔力を抑えているが魔王を筆頭に複数の貴族がいるのだ。空ではなく大地越しに感じる違和感に、自然と、誰もが我が子を呼び寄せて守る姿勢に入った。
駆け戻ったリリスも不安そうにルシファーの服を掴む。濡れた髪や服を温風で乾かし、タオルで包んでやった。
恐縮している親達へ「気楽にしていいぞ」と笑顔を振りまくルシファーだが、リリスの行動をしっかり目で追っていた。無邪気におかずを交換していくリリスの姿に、今後の展開が読めたルシファーは自分の弁当に手を付けず待つ。
ご機嫌で唐揚げを分けてあげたリリスだが、貰ったおかずを食べ終えて気付いた。自分の分までお友達に分けてしまったのだ。大好きな唐揚げを一個も食べていない事実に、半泣きになる。想像した通りの状況だった。
「リリス、あーん」
友達を大事にして自分のことを後回しにする娘に、手元の弁当箱から唐揚げを選んで食べさせる。フォークの先に刺さった唐揚げをぱくりと食べたリリスの頬が緩み、本当に幸せそうな顔で笑う。もう一個食べさせようとすると、首を横に振った。
「それ、パパのだもん」
「パパはお腹いっぱいになったぞ、残すともったいないな~。リリスが食べてくれないかな~」
わざとらしく大きな独り言を言ってリリスをみると、大きな赤い目を瞬いたリリスが「あーん」と口を開いた。そこへ唐揚げを入れて、再び幸せそうな顔を堪能する。
以前はそのまま受け取ってくれたが、保育園に通い出してから他人を思いやれる子になった。パパの分だといって好物を我慢しようとするリリスが可愛くて仕方ない。
ここで人目がなければ抱き締めて頬ずりして、甘やかし尽くしたいところだが……今度何かやらかしてアスタロト召還になったら、絶対に遠足から強制送還されるだろう。伸ばしかけた手をぐっと握って我慢した。
「美味しい?」
「うん」
リリスが残りのお弁当を食べ終え、お友達と立ち上がった。
「パパ、おみずのところであそぶ」
「気をつけてな」
「我が君、我も一緒に……」
護衛役のヤンがついていこうとするが、ルシファーに尻尾を掴まれてしまう。動きを止めたフェンリルの尻尾を撫でてやり、手招きした。
「やめとけ。子供同士で遊びたいんだろ。それに……水辺ならあのルーシアって子がいれば大丈夫だ」
水色の髪の幼女を示す。さきほど挨拶をしてくれた水の妖精族の子だった。水に関することなら、彼女がいれば安全だろう。先ほどまでの嫉妬深い子供の振る舞いが嘘のように、任せる姿勢をみせた。
普段の魔王はこの落ち着いたスタンスだ。ヤンが子狼の頃から君臨する主君だが、リリスを拾うまで嫉妬や醜い子供の面を見せることはなかった。こうして寛大に振る舞い、王らしい鷹揚さで応対する。砕けた態度や口調も、国民から親しみやすいと広く支持される一因だ。
文句を言いながらもアスタロトやベールは、ルシファーの二面性を受け入れていた。魔獣である故か、ヤンにとって二面性はまったく違和感なく、こういうものだと受け止める。そもそも生き物はいくつもの面を持つと、本能的に理解しているのだ。
くるんと丸くなって尻尾で促すと、ルシファーが少し動いて寄りかかった。寝るでもなく空を見上げて寝転がるルシファーの耳に、はしゃぐ子供達の声と水音が響く。心地よい時間にひとつ欠伸をした。
最初に反応したのはフェンリルであるヤン、続いて一部の上位貴族達が眉をひそめる。リリスも不安そうに空を見上げ、さすがにルシファーも身を起こした。
「なんだ?」
この場を襲う魔獣はいない。魔の森の獣王である灰色魔狼がいて、魔力を抑えているが魔王を筆頭に複数の貴族がいるのだ。空ではなく大地越しに感じる違和感に、自然と、誰もが我が子を呼び寄せて守る姿勢に入った。
駆け戻ったリリスも不安そうにルシファーの服を掴む。濡れた髪や服を温風で乾かし、タオルで包んでやった。
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