4/10コミック1巻発売!【完結】魔王様、溺愛しすぎです!

綾雅(りょうが)要らない悪役令嬢

文字の大きさ
206 / 1,397
17章 リリスのお取り巻き

203. 緊急会議に溢れる危険な単語

しおりを挟む
 以前の魔王城の謁見の間を数倍にした大広間で、大公達が待っていた。広すぎて怖いくらいだが、よく柱なしで崩れないものだ。ドワーフ達の建築技術に関心しながら、ドーム状の天井を眺めた。仮設えのときは狭かったが、今なら子爵男爵まで招集しても入れそうだな。

 しかし現実逃避が許される時間は長くない。

「魔王陛下、足をお運びいただき感謝申し上げます」

 にっこりと笑うベールが、凄く怖い。銀の髪を珍しく結っているのは、公式の場であることを強調する意味があるのだろう。青い瞳はぜんぜん笑っていなかった。そして敬称をきっちり口にした以上、何らかの説教が待っている。

「ああ」

 短く答えて玉座に腰掛ける。当然、抱っこしてきたリリスは膝の上にお座りさせた。ここが彼女の定位置なのだ。将来的には隣にリリス用の椅子が設けられるだろうが、今はまだ玉座ひとつだけ。短い足をぶらぶらさせるリリスは、ルキフェルに手を振った。

 子供同士なので嫉妬の対象にしないが、ちょっとムッとする。

「春から準備を進めておりました『リリス姫のご学友候補』を集めた、お泊り会の予定をご報告させていただきます」

 淡々とした口調で、ベールは詳細を並べ始めた。

 集めた子供達は女児のみで、基本的には各種族から1人以上参加させた。偏らないよう、貴族の子だけでなく平民からも募集したこと。お泊り会は3日間の予定で、魔王城の居住スペースで5回行われること。

「ん? 3日間を5回?!」

「はい、半月かかります」

 予想外に候補が多いらしい。各種族から1人以上集めたのなら、仕方ないだろう。問題は……リリスのご機嫌である。我が侭が許されてきた彼女は、基本的に我慢が苦手だった。側近候補達はリリスと同じか少し年上程度。幼児なら当然だが、全員が我慢とは程遠い年齢層だ。

 派手なケンカをするかも知れない。

「1回の顔合わせで10人に絞りました。50人と一度に顔を合わせても、一度も話をせずに終わる子が出ますから」

 アスタロトの追加情報に「なるほど」と納得した。確かに50人も一度に紹介されたところで、リリスはまったく覚えないだろう。保育園で仲の良かった子が参加していれば、その子としか遊ばない可能性もある。

 きちんと考えられたシステムに、ルシファーは頷いた。

「さて……陛下におかれましては、人族から救った子供を保護したとお伺いしました」

 …………ぎくっ!

 ついに始まった本題の追求に、顔を引きつらせるルシファー。背中の2枚の羽もしょぼんと床についている。何を言われるか不安な彼に、ベールは笑みを向けた。

「構いませんよ、いまさら。あなた様があちこちで拾い物をなさるのは、です。そう……後先や面倒を考えずに動くのも、ですから」

 なぜ二度繰り返す? その笑顔こそが怖いのだ。ベールは言い聞かせるように続けた。

「狐獣人系の女の子だそうですが。まさかリリス姫が正王妃で、今回の拾い子を側室になさるおつもりではありませんよね? いくら『幼女趣味ロリコン』が巷の噂になっているとはいえ、そこまで節操なしですと……」

 そこで意味深に言葉を切ったベールの声が低くなり、表情から笑みが消える。

ますよ」

 ナニをぉ!? 絶叫しそうになったルシファーは、膝の上のリリスを強く抱き締める。振り返ったリリスが何とか抜いた腕で、近くにあるルシファーの頭を撫でた。

「パパ、怖くないよ」

「……怖い」

 切られるのも怖いし、目の前の側近も怖い。

「そ、側室なんて考えてないぞ」

 必死で言い訳を考えるが、素直に否定だけした方が被害が少ないと言葉を搾り出す。背を預けていたリリスは膝の上で向きを変えて、震えるルシファーを正面から抱き締めていた。最愛の娘の黒髪を撫でて気持ちを落ち着かせる。

「引き取り手となる親がいないから、アデーレに預けた。今後の身の振り方はリリスの決断次第だ」

 そうだ、リリスが決断したんだった。最高の大義名分を手にし、ほっと胸を撫で下ろしたルシファーは気付いていない。まだベールの追求しか受けていない現実を。
しおりを挟む
感想 851

あなたにおすすめの小説

侯爵家の愛されない娘でしたが、前世の記憶を思い出したらお父様がバリ好みのイケメン過ぎて毎日が楽しくなりました

下菊みこと
ファンタジー
前世の記憶を思い出したらなにもかも上手くいったお話。 ご都合主義のSS。 お父様、キャラチェンジが激しくないですか。 小説家になろう様でも投稿しています。 突然ですが長編化します!ごめんなさい!ぜひ見てください!

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!

ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。 悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

老聖女の政略結婚

那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。 六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。 しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。 相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。 子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。 穏やかな余生か、嵐の老後か―― 四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

幼女はリペア(修復魔法)で無双……しない

しろこねこ
ファンタジー
田舎の小さな村・セデル村に生まれた貧乏貴族のリナ5歳はある日魔法にめざめる。それは貧乏村にとって最強の魔法、リペア、修復の魔法だった。ちょっと説明がつかないでたらめチートな魔法でリナは覇王を目指……さない。だって平凡が1番だもん。騙され上手な父ヘンリーと脳筋な兄カイル、スーパー執事のゴフじいさんと乙女なおかんマール婆さんとの平和で凹凸な日々の話。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

処理中です...