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32章 怯える聖女、追う幼女
431. 地下迷宮で聖女を探せ!
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人族を排除しつつエルフやドワーフが切り開いた道を、獣人達が駆け抜ける。尻尾や耳を立てて興奮状態の獣人は、人族より戦闘能力が高かった。運動神経が違いすぎるのだ。走りながら兵士と冒険者を斬り捨て、逃げる一般市民を放置して拠点を制圧していく。
「聖女を探せ」
「手がかりはないか?」
あれこれと騒ぐ彼らだが、いくら鼻がよくても対象者が不明では見つけられない。離れた場所で様子を見ていた狐獣人が、にやりと口元を歪めた。一部の兵士や騎士が駆け込む場所がある。おそらく指揮系統のトップにいる貴族が隠れている拠点だった。ならば、そこに聖女が囚われてる可能性が高い。
「左の大きな商家の入り口を破れ! その先に指揮官がいる」
彼の発言に、近くの獣人達が屋根を駆けのぼり、壁を伝って商家に入り込む。
「悪いことを考える人族は、地下が好きなんだよな」
にやにやしながら、狼獣人が鼻をひくつかせる。たくさんの人族の臭いの中に、不思議な香りが混じっていた。汚物や腐った水の臭いが混じるのに、どこか惹かれる香りだ。女性のものか。
そこまで判断した時点で、彼も声をあげた。
「地下だ!! 女がいるぞ、行け」
地下室へ続く扉をぶち破り、獣人が我先にと飛び込んだ。魔獣の血が濃い者は獣の姿を取っている。そのまま手分けして地下室を探る彼らが、下水道を使って逃げる人族を発見した。聖女を連れている可能性があるので、そちらに半分ほど人員を割く。
逃げる人族を追いかける部隊と、残った施設を捜索する部隊に分かれた。狼獣人の一人が地下牢の一番奥に隠れる毛布の塊を見つける。小刻みに震える大きさは子供くらいだが、臭いは女であると示していた。
「お前が聖女か?」
「……ちが…い、ます」
苦しそうに告げられた声に、今度は狐系の女性が優しく語り掛けた。
「もう大丈夫よ、誰も傷つけたりしないわ。だから顔を見せてちょうだい」
しっしと強面の狼獣人を追い払った彼女が待つと、恐る恐る顔を見せたのは少女だった。まだ幼さが残る彼女の頬や首筋には傷があり、額には血の跡もある。暴行されたのは間違いない。痛々しい姿に息をついて、腰に下げたポーチから水袋を取り出した。
「お水、飲める?」
「……くれるの?」
頷くと手を伸ばし、だが触れる直前に動きが止まった。脅かさないよう気を付けながら、少女の手に水袋を手渡す。大した重さではないのに、支えられないほど衰弱した少女が水袋を落とした。拾おうと狐獣人が手を伸ばすと、少女は頭を抱えて「ごめん、なさっ……ごめ、なさい」と泣きながら謝る。
殴られると思ったらしい。可哀想になって、牢の中に入って彼女を抱き締めた。じたばた暴れる少女が大人しくなるまで、数分の間ずっと背中を撫で続ける。
「大丈夫、傷つける人はいない。だから心配いらないわ」
落ち着いた少女に、もう一度水袋を手渡した。飲む彼女の手に手を添えて、ごくりと喉が動くのを何度も見続ける。しばらくして気が済んだのか、少女は水の袋から口を離した。
「けほっ、う……ぅ」
咳き込んだ少女に、今度は携帯していた果物を渡す。水分が多い果実だから、胃にもたれることもないだろう。狐獣人の女性は、そっと尋ねた。
「ねえ、あなたは聖女なの?」
上目遣いで怯えた表情ながら、小さく頭が縦に動いた。気遣って見えない位置に下がっていた狼獣人の耳が、ぴくぴく動いて音を拾う。
「彼女が聖女で間違いないわ。陛下に連絡して」
狐獣人の小さな声に反応し、獣人達が一斉に走り出した。外へ飛び出し、上空で飛び回るペガサスに合図を送る。その合図はあっという間にルキフェルを経由して、ルシファーに届けられた。
「聖女を探せ」
「手がかりはないか?」
あれこれと騒ぐ彼らだが、いくら鼻がよくても対象者が不明では見つけられない。離れた場所で様子を見ていた狐獣人が、にやりと口元を歪めた。一部の兵士や騎士が駆け込む場所がある。おそらく指揮系統のトップにいる貴族が隠れている拠点だった。ならば、そこに聖女が囚われてる可能性が高い。
「左の大きな商家の入り口を破れ! その先に指揮官がいる」
彼の発言に、近くの獣人達が屋根を駆けのぼり、壁を伝って商家に入り込む。
「悪いことを考える人族は、地下が好きなんだよな」
にやにやしながら、狼獣人が鼻をひくつかせる。たくさんの人族の臭いの中に、不思議な香りが混じっていた。汚物や腐った水の臭いが混じるのに、どこか惹かれる香りだ。女性のものか。
そこまで判断した時点で、彼も声をあげた。
「地下だ!! 女がいるぞ、行け」
地下室へ続く扉をぶち破り、獣人が我先にと飛び込んだ。魔獣の血が濃い者は獣の姿を取っている。そのまま手分けして地下室を探る彼らが、下水道を使って逃げる人族を発見した。聖女を連れている可能性があるので、そちらに半分ほど人員を割く。
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「お前が聖女か?」
「……ちが…い、ます」
苦しそうに告げられた声に、今度は狐系の女性が優しく語り掛けた。
「もう大丈夫よ、誰も傷つけたりしないわ。だから顔を見せてちょうだい」
しっしと強面の狼獣人を追い払った彼女が待つと、恐る恐る顔を見せたのは少女だった。まだ幼さが残る彼女の頬や首筋には傷があり、額には血の跡もある。暴行されたのは間違いない。痛々しい姿に息をついて、腰に下げたポーチから水袋を取り出した。
「お水、飲める?」
「……くれるの?」
頷くと手を伸ばし、だが触れる直前に動きが止まった。脅かさないよう気を付けながら、少女の手に水袋を手渡す。大した重さではないのに、支えられないほど衰弱した少女が水袋を落とした。拾おうと狐獣人が手を伸ばすと、少女は頭を抱えて「ごめん、なさっ……ごめ、なさい」と泣きながら謝る。
殴られると思ったらしい。可哀想になって、牢の中に入って彼女を抱き締めた。じたばた暴れる少女が大人しくなるまで、数分の間ずっと背中を撫で続ける。
「大丈夫、傷つける人はいない。だから心配いらないわ」
落ち着いた少女に、もう一度水袋を手渡した。飲む彼女の手に手を添えて、ごくりと喉が動くのを何度も見続ける。しばらくして気が済んだのか、少女は水の袋から口を離した。
「けほっ、う……ぅ」
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「ねえ、あなたは聖女なの?」
上目遣いで怯えた表情ながら、小さく頭が縦に動いた。気遣って見えない位置に下がっていた狼獣人の耳が、ぴくぴく動いて音を拾う。
「彼女が聖女で間違いないわ。陛下に連絡して」
狐獣人の小さな声に反応し、獣人達が一斉に走り出した。外へ飛び出し、上空で飛び回るペガサスに合図を送る。その合図はあっという間にルキフェルを経由して、ルシファーに届けられた。
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