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55章 海の嘆きと森の歌
768. なんでも楽しむのが長寿のコツ?
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大公や魔王が率先して行ったため、魔族は我先にと魔力の供給に勤しんだ。使い過ぎで具合の悪くなる者が数人出たので、帰る体力や魔力を残すよう通達も出る。魔力を流す行為が一種の流行となり、家族を呼び寄せて一緒に流したりと一大イベントと化した。
魔王軍の一部が斬新な魔力の伝達方法を開発し、それを知ったルシファーがリリスと試す。手を繋いで隣の人を経由する形で海へ流すのだ。他者の魔力を調整せずに受けると体調を崩すことは知られていたが、体の表面を流すと変調をきたさなかった。
魔力を流そうとして躓いた獣人が、隣のリザードマン経由で魔力を供給するハプニングで判明した。驚いた彼らが周囲の別種族と繰り返し試した結果、ルキフェルの分析を経て安全が確立される。あっという間に魔王軍の中で流行った方法は、ゲーム感覚で広がった。
「失敗すると、びりっとするんすよ」
砕けた口調で、楽しそうに試しているのはアベルだ。すでにリザードマン、獣人、ガギエル、ドラゴンと試したと笑いながら、今度は違う種族がいいと目を輝かせる。近くにいたエルフに手を振り、試そうと提案する。どんな状況でも楽しむのは良いことだった。
よく見れば、アベル以外にもあちこちに声をかけて回る者がいる。かと思えば、恋人同士や家族同士で手を繋いで注いでいる者も見られた。
共通しているのは、全員が義務として嫌々行うのではなく、現状を遊び感覚で楽しいと感じていることだ。少し考えた後、ルシファーはアベルに声をかけた。
「アベル。オレ達とも試すか?」
「いいんすか! やった!! 先輩やアンナちゃんも呼んできます」
元気よく2人を呼びに行ったアベルを見送るリリスが「叱られないといいけど」と呟いた。意味を考えて「仲のいいバカップルのお邪魔虫」という結論に至り、ルシファーが笑い出す。リリスは近くで試していた4人の側近たちを呼んだ。
「試してみましょうよ」
「「「はい」」」
4人は属性がすべて違うため、1人ずつ組み合わせて研究していたがリリスの声掛けに歩み寄る。見れば、彼女たちのドレスやワンピースは海水で濡れていた。足元はサンダルをはいたルーシア以外は素足だ。
「ルシファー、私もサンダル脱ぐわ」
「わかった。預かろう」
濡れたサンダルを脱いだリリスから預かったルシファーが収納へほうり込み、ついでに自分も靴を脱いだ。屋外で素足になるなど滅多にない。打ち寄せる波が足の隙間から砂を抜いていくのが、擽ったくて顔を見合わせて笑った。
幸せそうな2人の様子を見た近くの獣人が真似をして、砂浜の感触に大騒ぎする。魔王軍もベールが止める間もなく、靴やブーツを脱いで素足になった。新たな流行を作り出すのは魔王や魔王妃だが、海辺を素足で楽しむことも広まるだろう。
「陛下、さすがに素足は……」
正装姿で何をしてるのか。そう咎めるベールの声に、擽ったさに肩を震わせながら魔王は振り返る。
「こんな状況で気取っても仕方あるまい。楽しんだ者勝ちだぞ!」
「そうよ、ベルちゃんたら硬いんだから」
自由で適応力が豊かすぎる2人に肩を落とすが、アスタロトも苦笑するだけで口を挟まなかった。魔王が魔力を海へ供給すると決め、魔王軍は最高司令官の意思に従った。民も同じように自主的に魔力の供給を始め、それを楽しんでいる。咎める要素はないのだ。
「ルカ、カルンを見せて」
リリスに強請られ、大切に胸元に保管していた珊瑚を取り出す。赤珊瑚のように滑らかな表面ではなく、玉珊瑚に比べて形も悪い。ごつごつした紫色の珊瑚は、海で生きる生物らしい歪さの中に自然な美しさを秘めていた。
「綺麗ね。大丈夫よ、いつか戻れるわ。だから海へ返してあげて」
リリスの言葉に驚いた顔をしたルーサルカだが、手の上に返された珊瑚を見つめながら強く握り込む。ひとつ深呼吸をして、勢いよく珊瑚を投げた。泳いでも届かないほど遠くへ――。
魔王軍の一部が斬新な魔力の伝達方法を開発し、それを知ったルシファーがリリスと試す。手を繋いで隣の人を経由する形で海へ流すのだ。他者の魔力を調整せずに受けると体調を崩すことは知られていたが、体の表面を流すと変調をきたさなかった。
魔力を流そうとして躓いた獣人が、隣のリザードマン経由で魔力を供給するハプニングで判明した。驚いた彼らが周囲の別種族と繰り返し試した結果、ルキフェルの分析を経て安全が確立される。あっという間に魔王軍の中で流行った方法は、ゲーム感覚で広がった。
「失敗すると、びりっとするんすよ」
砕けた口調で、楽しそうに試しているのはアベルだ。すでにリザードマン、獣人、ガギエル、ドラゴンと試したと笑いながら、今度は違う種族がいいと目を輝かせる。近くにいたエルフに手を振り、試そうと提案する。どんな状況でも楽しむのは良いことだった。
よく見れば、アベル以外にもあちこちに声をかけて回る者がいる。かと思えば、恋人同士や家族同士で手を繋いで注いでいる者も見られた。
共通しているのは、全員が義務として嫌々行うのではなく、現状を遊び感覚で楽しいと感じていることだ。少し考えた後、ルシファーはアベルに声をかけた。
「アベル。オレ達とも試すか?」
「いいんすか! やった!! 先輩やアンナちゃんも呼んできます」
元気よく2人を呼びに行ったアベルを見送るリリスが「叱られないといいけど」と呟いた。意味を考えて「仲のいいバカップルのお邪魔虫」という結論に至り、ルシファーが笑い出す。リリスは近くで試していた4人の側近たちを呼んだ。
「試してみましょうよ」
「「「はい」」」
4人は属性がすべて違うため、1人ずつ組み合わせて研究していたがリリスの声掛けに歩み寄る。見れば、彼女たちのドレスやワンピースは海水で濡れていた。足元はサンダルをはいたルーシア以外は素足だ。
「ルシファー、私もサンダル脱ぐわ」
「わかった。預かろう」
濡れたサンダルを脱いだリリスから預かったルシファーが収納へほうり込み、ついでに自分も靴を脱いだ。屋外で素足になるなど滅多にない。打ち寄せる波が足の隙間から砂を抜いていくのが、擽ったくて顔を見合わせて笑った。
幸せそうな2人の様子を見た近くの獣人が真似をして、砂浜の感触に大騒ぎする。魔王軍もベールが止める間もなく、靴やブーツを脱いで素足になった。新たな流行を作り出すのは魔王や魔王妃だが、海辺を素足で楽しむことも広まるだろう。
「陛下、さすがに素足は……」
正装姿で何をしてるのか。そう咎めるベールの声に、擽ったさに肩を震わせながら魔王は振り返る。
「こんな状況で気取っても仕方あるまい。楽しんだ者勝ちだぞ!」
「そうよ、ベルちゃんたら硬いんだから」
自由で適応力が豊かすぎる2人に肩を落とすが、アスタロトも苦笑するだけで口を挟まなかった。魔王が魔力を海へ供給すると決め、魔王軍は最高司令官の意思に従った。民も同じように自主的に魔力の供給を始め、それを楽しんでいる。咎める要素はないのだ。
「ルカ、カルンを見せて」
リリスに強請られ、大切に胸元に保管していた珊瑚を取り出す。赤珊瑚のように滑らかな表面ではなく、玉珊瑚に比べて形も悪い。ごつごつした紫色の珊瑚は、海で生きる生物らしい歪さの中に自然な美しさを秘めていた。
「綺麗ね。大丈夫よ、いつか戻れるわ。だから海へ返してあげて」
リリスの言葉に驚いた顔をしたルーサルカだが、手の上に返された珊瑚を見つめながら強く握り込む。ひとつ深呼吸をして、勢いよく珊瑚を投げた。泳いでも届かないほど遠くへ――。
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