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59章 お祭りはそれでも続行
823. 報復は10年越しで
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貴族がたくさん集まる中庭から城門前へ、ぞろぞろと人が移動する。門番のアラエルやピヨも一緒に参加することとなり、魔王城の入り口にルキフェルが新たな結界を張った。結界後に外へ出た者はまた入れるが、一度も通過していない者を弾くように設計したと得意げに説明される。
「これが張られていたら、門番が要らないんじゃないかしら」
もっともなレライエの指摘に、ルキフェルは首を横に振った。
「それは無理だよ。だって謁見に来た人が城に入れないし、客も弾き出されちゃう。何より、毎回入る人を登録して変更するのが面倒だからね」
「あとね、ピヨとアラエルが玄関にいないと寂しいじゃない」
瑠璃竜王の説明に、リリスがにこにこと付け加えた。確かに勇者が来たときは鳳凰が威嚇すると効果が高そうだ。違う意味にとったルシファーとアスタロトが「なるほど」と納得する。互いの誤解は、それぞれに尾ひれ背びれを付けて、評価を高める結果に落ち着いた。
「かまどを作るぞ」
「出来てますぜ」
ドワーフ連中が張り切って作ったかまどがすでに並び、机や椅子も用意されている。エルフが敷物代わりの芝を敷き詰めた前庭は、豪華な緑の絨毯状態だった。子供が靴を脱いで走り回る姿から、安全性は高いようだ。
「我が君、こちらへ」
他より大きめの机の前で、ごろんとヤンが丸くなる。てしてしと前足が誘うため近づくと、リリスが大喜びでヤンの上に飛びついた。またソファ役を買って出たフェンリルの喉を撫で、遠慮なく毛皮に埋もれる。
「皆もこっちよ」
ルーシアとレライエ、シトリーが呼ばれて近づき「お邪魔します」と断ってからヤンの毛皮に頬を緩める。焼肉が決まってすぐイポスに手伝いを頼んで洗ったため、薔薇の香油のよい香りがした。獣としては狩りの邪魔になる匂いだが、焼肉の間のソファとしては満点だ。
「ヤン、匂いは平気か?」
心配して尋ねるルシファーへ、くーんと鼻を鳴らしたフェンリルは「お気遣い感謝いたします」と尻尾を振った。香油の匂いも間もなく焼肉の煙でかき消されてしまうだろう。ぶんぶん大きく振る尻尾に、興奮したピヨが抱き着いた。
「ママぁ!!」
「尻尾を噛むなと教えたであろう!」
ばしっと叩いて躾けるヤンに、アラエルが申し訳なさそうに近づいた。ピヨの尾羽を咥えると、自分の背中に投げて受け止める。
「申し訳ない、母上殿」
「母ではないっ!」
娘婿に噛みつく勢いで吠えたヤンに、アスタロトが生ぬるい眼差しを送る。外から自分も同じように見えている自覚はないらしい。親バカでモンスターペアレント……強者であるフェンリルと吸血鬼王はある意味同種であった。
「始めますぜ!」
その一声に、慌ててアラエルが駆けていく。背中のピヨはすでに炎を噴いており、鳳凰の背中でなければ大惨事だっただろう。器用に背中のピヨを咥えて下すと、アラエルの指示でかまどに火を入れ始めた。離れた場所でも、火龍がかまどに火を入れる。
今回の焼肉大会は、民も貴族も同じ場所で食べることになった。今回の海絡みの戦いで、一緒に戦った魔族の結束はいつになく強い。あちこちで鍛冶屋が持ち込んだ鉄板が熱せられ、ルキフェルが提供した海のイカは風魔法が得意な獣人やドラゴンによって、ばらばらに刻まれた。
「準備できやした!」
「あとは陛下のご挨拶だ」
駆け付けた城下町の民は、屋台を持ち込んで場を盛り上げる。ヤンの毛皮に足を取られそうになり、こっそり魔力で浮いた魔王は、アスタロトに渡された瓶を掴んで掲げた。
「乾杯!」
「「「乾杯!」」」
シンプルな挨拶ながら、こういう場面で長い挨拶は嫌われる。しかもうっかり発言は長い挨拶で漏れることが多く、ルシファーは求められた最低限の役目を果たした。
「ルシファー、乾杯」
にっこり笑うリリスの、ピンクのジュースが入ったグラスに瓶を近づけ、中身に気づいた。赤かったので、ワインだろうと勝手に思い込んだが……これは?
「アスタロト」
「はっ」
「なんだ、これは……」
「見ての通り、蛇酒です」
「うぎゃぁあああああ!」
瓶を放り出した。透明の瓶の中に、赤黒い蛇がとぐろを巻いており、琥珀色の液体の中で揺らめいている。割れる前に受け止めたアスタロトは、肩を竦めた。
「これは10年前に陛下が仕留めた戦果ではありませんか。毒抜きして漬け込んだのはルキフェルですが、まさか部下の苦労を無にしようとなさるなんて」
迫力満点の笑みに、ルシファーは項垂れた。間違いなく、窓からの飛び降り許可についての報復だ。今後は彼に逆らうのはやめよう、本当に本当にやめよう。硬く心に誓う魔王だが、どうせ1年もすれば忘れるのだ。懲りない魔王と、懲りて欲しい側近のやり取りは今日も平和だった。
「これが張られていたら、門番が要らないんじゃないかしら」
もっともなレライエの指摘に、ルキフェルは首を横に振った。
「それは無理だよ。だって謁見に来た人が城に入れないし、客も弾き出されちゃう。何より、毎回入る人を登録して変更するのが面倒だからね」
「あとね、ピヨとアラエルが玄関にいないと寂しいじゃない」
瑠璃竜王の説明に、リリスがにこにこと付け加えた。確かに勇者が来たときは鳳凰が威嚇すると効果が高そうだ。違う意味にとったルシファーとアスタロトが「なるほど」と納得する。互いの誤解は、それぞれに尾ひれ背びれを付けて、評価を高める結果に落ち着いた。
「かまどを作るぞ」
「出来てますぜ」
ドワーフ連中が張り切って作ったかまどがすでに並び、机や椅子も用意されている。エルフが敷物代わりの芝を敷き詰めた前庭は、豪華な緑の絨毯状態だった。子供が靴を脱いで走り回る姿から、安全性は高いようだ。
「我が君、こちらへ」
他より大きめの机の前で、ごろんとヤンが丸くなる。てしてしと前足が誘うため近づくと、リリスが大喜びでヤンの上に飛びついた。またソファ役を買って出たフェンリルの喉を撫で、遠慮なく毛皮に埋もれる。
「皆もこっちよ」
ルーシアとレライエ、シトリーが呼ばれて近づき「お邪魔します」と断ってからヤンの毛皮に頬を緩める。焼肉が決まってすぐイポスに手伝いを頼んで洗ったため、薔薇の香油のよい香りがした。獣としては狩りの邪魔になる匂いだが、焼肉の間のソファとしては満点だ。
「ヤン、匂いは平気か?」
心配して尋ねるルシファーへ、くーんと鼻を鳴らしたフェンリルは「お気遣い感謝いたします」と尻尾を振った。香油の匂いも間もなく焼肉の煙でかき消されてしまうだろう。ぶんぶん大きく振る尻尾に、興奮したピヨが抱き着いた。
「ママぁ!!」
「尻尾を噛むなと教えたであろう!」
ばしっと叩いて躾けるヤンに、アラエルが申し訳なさそうに近づいた。ピヨの尾羽を咥えると、自分の背中に投げて受け止める。
「申し訳ない、母上殿」
「母ではないっ!」
娘婿に噛みつく勢いで吠えたヤンに、アスタロトが生ぬるい眼差しを送る。外から自分も同じように見えている自覚はないらしい。親バカでモンスターペアレント……強者であるフェンリルと吸血鬼王はある意味同種であった。
「始めますぜ!」
その一声に、慌ててアラエルが駆けていく。背中のピヨはすでに炎を噴いており、鳳凰の背中でなければ大惨事だっただろう。器用に背中のピヨを咥えて下すと、アラエルの指示でかまどに火を入れ始めた。離れた場所でも、火龍がかまどに火を入れる。
今回の焼肉大会は、民も貴族も同じ場所で食べることになった。今回の海絡みの戦いで、一緒に戦った魔族の結束はいつになく強い。あちこちで鍛冶屋が持ち込んだ鉄板が熱せられ、ルキフェルが提供した海のイカは風魔法が得意な獣人やドラゴンによって、ばらばらに刻まれた。
「準備できやした!」
「あとは陛下のご挨拶だ」
駆け付けた城下町の民は、屋台を持ち込んで場を盛り上げる。ヤンの毛皮に足を取られそうになり、こっそり魔力で浮いた魔王は、アスタロトに渡された瓶を掴んで掲げた。
「乾杯!」
「「「乾杯!」」」
シンプルな挨拶ながら、こういう場面で長い挨拶は嫌われる。しかもうっかり発言は長い挨拶で漏れることが多く、ルシファーは求められた最低限の役目を果たした。
「ルシファー、乾杯」
にっこり笑うリリスの、ピンクのジュースが入ったグラスに瓶を近づけ、中身に気づいた。赤かったので、ワインだろうと勝手に思い込んだが……これは?
「アスタロト」
「はっ」
「なんだ、これは……」
「見ての通り、蛇酒です」
「うぎゃぁあああああ!」
瓶を放り出した。透明の瓶の中に、赤黒い蛇がとぐろを巻いており、琥珀色の液体の中で揺らめいている。割れる前に受け止めたアスタロトは、肩を竦めた。
「これは10年前に陛下が仕留めた戦果ではありませんか。毒抜きして漬け込んだのはルキフェルですが、まさか部下の苦労を無にしようとなさるなんて」
迫力満点の笑みに、ルシファーは項垂れた。間違いなく、窓からの飛び降り許可についての報復だ。今後は彼に逆らうのはやめよう、本当に本当にやめよう。硬く心に誓う魔王だが、どうせ1年もすれば忘れるのだ。懲りない魔王と、懲りて欲しい側近のやり取りは今日も平和だった。
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