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76章 一難去るとまた……
1044. 原因特定、解決は未定
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見た目はほぼ同じだが、10年前のプリンは少し色が濃い。この点はあまり重要ではない。計測結果が示すのは、別の問題だった。
リリスは教わった通りに作り、誰もその作り方に口だししなかった。そのため同じ作り方、同じ材料で繰り返し作ったため、比較対象として最適だ。10年ほど前のプリンは、魔王が最上級の魔法と収納空間で保存した。
幼い頃のリリスは魔力の操作が苦手で、作った料理に魔力を込められなかった。新しい方のプリンを作った今は、魔力が封じられているため使えない。ほぼ条件は同じ。
なのに計測結果に大きな差が出た。まず最初に疑われる魔力量はほぼゼロ、どちらも同じ。味を比較する糖度測定や滑らかさも違いはなかった。一番の差は、卵や牛乳に残るはずの生命力――栄養素だ。
味に変化はないのに、栄養がごっそり抜けている。だから食べた動物や人は気づかなかった。獲物の肉を食べて、その魔力を吸収する魔獣にも影響は少ない。だが、食物連鎖の裾野を担う動物は違った。
魔力を持たない動物達は、食べても魔力を活用できない。排泄物に含んで排出し、それは森の栄養素となった。動物にとって重要なのは、栄養の部分だけ。
イザヤ達の知るビタミンやタンパク質は、生命力という項目に集約されていた。その生命力がほぼゼロに近い数値を示す。
「これは食べても食べても太れないよね」
参ったな。そう呟いてルキフェルは額を押さえた。見た目で区別がつかない栄養のない食事、魔族に影響が出るのは数年から数十年後だろう。魔獣はもっと早く、2~3年で影響が出始める。
魔力と栄養を含んだ草を食べた動物が栄養を消費し、残った魔力を魔獣が喰らう。その魔獣を魔族が食す食物連鎖だ。末端が崩壊したら、最後は頂点まで巻き込まれる。
「生命力を戻す方法……いや、なくなった原因を探る方が先?」
ぶつぶつ言いながら、ルキフェルは10年前のプリンの残りをスプーンで突いた。直後、大きな爆発が起きて周囲が煙に覆われる。
「けほっ、またやっちゃった」
ルキフェルはさらに袖の焦げた研究用の白衣を脱ぎ捨てた。周囲に甘い匂いが立ち込める。
「これ、バニラの匂いね」
安全な結界に守られたアンナは、兄イザヤの腕の中で瞬く。鼻をくすぐる香りは、バニラエッセンスに似ていた。爆発したのがプリンだからだろう。先程スライムかと思った散乱物も、どうやらプリンだったらしい。
研究に必要な量を複製するスプーンが爆発の原因だ。急激に複製されたプリンが飛び散った地面を、ピヨが掃除していく。嘴で突きストローのように吸い込む姿は、器用の一言に尽きた。執念で会得した技術のようだ。
ヤンが身を挺してピヨを守ったので、彼の灰色の毛皮にも大量のプリンが付着していた。それを嘴で追いかけるピヨが擽ったいのか、ヤンは逃げ回っている。
「無事ですか?」
駆けつけたベールが、ルキフェルの焦げた毛先を修復し、真剣に資料を読む青年を抱き上げる。ぶつぶつと解決策を呟くルキフェルはそのまま拉致され、イザヤは溜め息をついた。
「終わりのようだが……この結界はどうしたらいいのか」
外へ出られるようだが、放置しても問題ないとは限らない。ひとまず自分が先に出て安全を確認したイザヤは、妹アンナを結界から連れ出した。条件付けされていた魔法陣が消えたのを確かめ、ほっとした顔を見せる。
アンナは大量のプリンを踏みしめながら、近くの通路に敷かれた煉瓦道まで避難した。
「ご苦労様でした。今日の業務は終了にして帰って構いませんよ」
連続した爆発の確認にきたアスタロトが、被害状況を記録しながら指示を出す。イザヤとアンナは言葉に甘えることにして、帰宅の途についた。しかしその夜、すぐに呼び出されることになるとは夢にも思わず。
リリスは教わった通りに作り、誰もその作り方に口だししなかった。そのため同じ作り方、同じ材料で繰り返し作ったため、比較対象として最適だ。10年ほど前のプリンは、魔王が最上級の魔法と収納空間で保存した。
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なのに計測結果に大きな差が出た。まず最初に疑われる魔力量はほぼゼロ、どちらも同じ。味を比較する糖度測定や滑らかさも違いはなかった。一番の差は、卵や牛乳に残るはずの生命力――栄養素だ。
味に変化はないのに、栄養がごっそり抜けている。だから食べた動物や人は気づかなかった。獲物の肉を食べて、その魔力を吸収する魔獣にも影響は少ない。だが、食物連鎖の裾野を担う動物は違った。
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「生命力を戻す方法……いや、なくなった原因を探る方が先?」
ぶつぶつ言いながら、ルキフェルは10年前のプリンの残りをスプーンで突いた。直後、大きな爆発が起きて周囲が煙に覆われる。
「けほっ、またやっちゃった」
ルキフェルはさらに袖の焦げた研究用の白衣を脱ぎ捨てた。周囲に甘い匂いが立ち込める。
「これ、バニラの匂いね」
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研究に必要な量を複製するスプーンが爆発の原因だ。急激に複製されたプリンが飛び散った地面を、ピヨが掃除していく。嘴で突きストローのように吸い込む姿は、器用の一言に尽きた。執念で会得した技術のようだ。
ヤンが身を挺してピヨを守ったので、彼の灰色の毛皮にも大量のプリンが付着していた。それを嘴で追いかけるピヨが擽ったいのか、ヤンは逃げ回っている。
「無事ですか?」
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アンナは大量のプリンを踏みしめながら、近くの通路に敷かれた煉瓦道まで避難した。
「ご苦労様でした。今日の業務は終了にして帰って構いませんよ」
連続した爆発の確認にきたアスタロトが、被害状況を記録しながら指示を出す。イザヤとアンナは言葉に甘えることにして、帰宅の途についた。しかしその夜、すぐに呼び出されることになるとは夢にも思わず。
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