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79章 先祖返りが増えてませんか
1094. お揃いにしたかったの
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通常、犬獣人の子は犬獣人が多い。しかし獣人は、魔力量が少なかった。制御に関しても苦手とし、体内を巡らせて身体強化や跳躍力アップなどに使う。魔法の仕組みを理解し、魔石を使って発動する道具を開発したのなら、ある程度魔法を使える種族の可能性が高かった。
「ああ、それが種族がよくわからなくて。見た目は魔獣っぽいんですけど。人化すると手先が器用なんです」
種族不明。その時点で、アスタロトが考え込んだ。ベルゼビュートは深い意味があって質問した訳ではないらしく、適当に「ふーん」と相槌を打つ。
「会わせてくれぬか。害は及ぼさないし、捕まえもしない。これを作るところが見たいのだ」
ルシファーが製作風景が見たいと告げた途端、犬獣人の店主は表情が明るくなった。意図せず爆発させたことで、咎められると心配していたのだろう。捕まえないと明言したことで、ほっとしたらしい。
「構いません。いつおいでになりますか」
「明日にしよう。今日では慌てさせてしまうからな」
約束を取り付ける魔王の傍で、アスタロトは思い出しかけた何かが引っかかっていた。だが結局わからぬまま、店主に大量の食料を土産に持たせて帰す。
「あとは明日だ」
「では書類処理がありますので、今日は屋敷に引き上げましょうか」
「……書類」
「あ。あたくしは辺境に戻るわ。まだ見回りがあるの」
書類と聞くなり、ベルゼビュートは果物をいくつか抱えて転移した。見送るルシファーを、アスタロトが促す。
「大した量ではありません。1時間もあれば終わりますから」
その後は自由にしていい。約束を取り付けると、ルシファーは提案した。
「だったら、もう少し街を回らせてくれ。夕方までには帰る」
「構いませんよ」
譲歩したアスタロトに、ルシファーはリリスと腕を組んで店を出た。魔王様御一行が休憩している間に、店の外は人だかりが出来ている。
「リリス達の靴を買おうと思ってな」
祭典用の衣装や装飾品は、専門職へオーダーする。しかし普段使いの身の回り品は、気に入った物を都度購入してきた。そこで視察に同行する大公女とリリスの靴を購入しようと思ったのだ。転移ばかりなら必要ないが、こうして歩く時間が長ければ楽な靴がいいだろう。
数店覗いて、ルーサルカが見つけた靴に決めた。丈夫な革で作られた靴底は平らで、全体によく滑してあり柔らかい。
「色はどうする?」
「同じじゃなくていいわ。好きな色にしましょうよ」
革に着色しているため、染料の具合で色が少しずつ異なる。楽しむように並べて選び始めた彼女達を見守り、アスタロトが会計を済ませた。魔王城の経費ではなく、個人的な出費扱いだ。それぞれに買ったばかりの靴に履き替え、収納空間へ靴をしまった。
「ルシファー、預かっておいて」
「ああ、そうだった」
リリスの魔力は封じられているので、靴を受け取ってルシファーがしまう。それから足元の靴を全員が見せてくれた。
同じ形でつま先が尖っておらず、ぽてっと丸い形が愛らしい。シトリーは水色、レライエは緑、ルーサルカは赤を選んだ。リリスは意外なことに黒である。
「珍しいな。ピンクがなかったのか?」
「あったわよ」
指差す先に、ピンクや黄色が並んでいた。そしてリリスは紙に包まれた靴をイポスへ差し出す。
「これを履いてくれる?」
「私に、でございますか」
頷くリリスに促され、イポスが取り出したのは同じデザインの淡い紫色だった。ラベンダーを薄くした、ピンクに近い色合いだ。ハーブの花で染めた色らしく、柔らかな印象だった。
「これで全員お揃いよ。ルーシアにもクリーム色を買ったの」
機嫌よく笑うリリスに、イポスは何度も礼を言って履き替えた。色違いの靴をそれぞれに左足だけ前に出し、見比べて嬉しそうに声を上げた。平和な光景に頷くルシファーは、店の外を見て慌てる。
「そろそろ屋敷に帰ろうか」
大通りに戻った一行は、さらに菓子の店や雑貨の販売をする露店に引っかかりながら、数十分後にようやく引き上げとなった。
「ああ、それが種族がよくわからなくて。見た目は魔獣っぽいんですけど。人化すると手先が器用なんです」
種族不明。その時点で、アスタロトが考え込んだ。ベルゼビュートは深い意味があって質問した訳ではないらしく、適当に「ふーん」と相槌を打つ。
「会わせてくれぬか。害は及ぼさないし、捕まえもしない。これを作るところが見たいのだ」
ルシファーが製作風景が見たいと告げた途端、犬獣人の店主は表情が明るくなった。意図せず爆発させたことで、咎められると心配していたのだろう。捕まえないと明言したことで、ほっとしたらしい。
「構いません。いつおいでになりますか」
「明日にしよう。今日では慌てさせてしまうからな」
約束を取り付ける魔王の傍で、アスタロトは思い出しかけた何かが引っかかっていた。だが結局わからぬまま、店主に大量の食料を土産に持たせて帰す。
「あとは明日だ」
「では書類処理がありますので、今日は屋敷に引き上げましょうか」
「……書類」
「あ。あたくしは辺境に戻るわ。まだ見回りがあるの」
書類と聞くなり、ベルゼビュートは果物をいくつか抱えて転移した。見送るルシファーを、アスタロトが促す。
「大した量ではありません。1時間もあれば終わりますから」
その後は自由にしていい。約束を取り付けると、ルシファーは提案した。
「だったら、もう少し街を回らせてくれ。夕方までには帰る」
「構いませんよ」
譲歩したアスタロトに、ルシファーはリリスと腕を組んで店を出た。魔王様御一行が休憩している間に、店の外は人だかりが出来ている。
「リリス達の靴を買おうと思ってな」
祭典用の衣装や装飾品は、専門職へオーダーする。しかし普段使いの身の回り品は、気に入った物を都度購入してきた。そこで視察に同行する大公女とリリスの靴を購入しようと思ったのだ。転移ばかりなら必要ないが、こうして歩く時間が長ければ楽な靴がいいだろう。
数店覗いて、ルーサルカが見つけた靴に決めた。丈夫な革で作られた靴底は平らで、全体によく滑してあり柔らかい。
「色はどうする?」
「同じじゃなくていいわ。好きな色にしましょうよ」
革に着色しているため、染料の具合で色が少しずつ異なる。楽しむように並べて選び始めた彼女達を見守り、アスタロトが会計を済ませた。魔王城の経費ではなく、個人的な出費扱いだ。それぞれに買ったばかりの靴に履き替え、収納空間へ靴をしまった。
「ルシファー、預かっておいて」
「ああ、そうだった」
リリスの魔力は封じられているので、靴を受け取ってルシファーがしまう。それから足元の靴を全員が見せてくれた。
同じ形でつま先が尖っておらず、ぽてっと丸い形が愛らしい。シトリーは水色、レライエは緑、ルーサルカは赤を選んだ。リリスは意外なことに黒である。
「珍しいな。ピンクがなかったのか?」
「あったわよ」
指差す先に、ピンクや黄色が並んでいた。そしてリリスは紙に包まれた靴をイポスへ差し出す。
「これを履いてくれる?」
「私に、でございますか」
頷くリリスに促され、イポスが取り出したのは同じデザインの淡い紫色だった。ラベンダーを薄くした、ピンクに近い色合いだ。ハーブの花で染めた色らしく、柔らかな印象だった。
「これで全員お揃いよ。ルーシアにもクリーム色を買ったの」
機嫌よく笑うリリスに、イポスは何度も礼を言って履き替えた。色違いの靴をそれぞれに左足だけ前に出し、見比べて嬉しそうに声を上げた。平和な光景に頷くルシファーは、店の外を見て慌てる。
「そろそろ屋敷に帰ろうか」
大通りに戻った一行は、さらに菓子の店や雑貨の販売をする露店に引っかかりながら、数十分後にようやく引き上げとなった。
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