1,265 / 1,397
92章 新種発見ラッシュ
1260. 分解して再構築された?
しおりを挟む
巨大な蟻っぽい生物も、最終的に仮の字がついて保留となった。今後の検証を待って領地や名前が与えられる。アベルはすでに「ビックアント」とか勝手に名を呼んでいたが。
「魔の森は新種を作る基準を何に定めてるんだ?」
魔物も魔族もいる。意思の疎通が必要な魔族なら、共通言語を作って全員に与えればいい。なのに通じたり通じなかったりするため、毎回手探りで種族認定を行ってきた。その辺の疑問を口にしながら、ルシファーはテラスでベーコンを突く。隣のリリスは目玉焼きをパンに乗せたところだった。
「よくわからないわ。私を作った時は、森で人族の赤子を回収したらしいの。それを分解して再構成したんだと思う」
人族はよく魔の森に、子どもや赤子を捨てた。ルシファーが最初にリリスと出会った時も、場所が魔王城の城門前でなければ、誰も疑問に思わなかっただろう。頻度は高く、よく魔獣や魔物の餌になった。以前アスタロトが潜入して確認した情報では、口減らしという表現がなされた。食べていくのがやっとなのに、望まぬ子が生まれたため始末するのだ。
自分達の手を汚すのは怖いし、嫌だ。だから確実に死ぬとわかっていて、森の中に捨てる。捨てた親はもしかしたら生きているかも、とくだらない感傷に浸りながら罪悪感を薄めるらしい。反吐が出ると吐き捨てたアスタロトが、次の日にその都を滅ぼしたのは数千年前の話だったか。
魔の森に吸収された赤子もいたのかと目を細め、ベーコンを齧った。少し火の通りが良すぎて硬い。もぐもぐと咀嚼する隣で、リリスは思わぬ発言をした。
「そういえば……アベルってば先日、魔の森に食われちゃったのよ」
「は?」
給仕していたアデーレが、珍しく食器を落とす。リリスお気に入りの薔薇のカップが転がった。
「し、失礼いたしました」
「ああ、気にするな。復元するから触らなくていいぞ」
縁が少し欠けたが、元に戻す魔法陣を投げて対応する。綺麗に修復されたのを確認し、アデーレはそのカップを一度下げた。浄化で十分対応できるが、彼女は吸血種だ。危険なので、浄化は使わないのが礼儀だった。
代わりに取り出したのは小花が散る愛らしいカップだ。そちらに青いお茶を淹れて差し出した。リリスの好きなマメ科のハーブティだ。目を輝かせる彼女のために、レモンが添えられる。絞ったら真っ青なお茶は紫になり、やがてピンクに変化するのだ。問題はピンクになるまでレモンを絞ると、味が酸っぱすぎる点だった。そこは蜂蜜で補う。
リリスが幼い頃に開発した、レモン絞り限定の魔法陣を使い、ぽたぽたと時間をかけて絞る。その間に立ち直ったアデーレが口を開いた。
「リリス様、先ほど……アベルが森に食われたと仰いましたが」
「ええ。そう、食べちゃったのよ。分解したかは聞いてないわ」
「そうですか」
もし分解されて組み立てられたとしても、現時点で変化はないので問題にならないが。知らない間に分解されて組み立てられた魔族がいるかも知れない。その辺は調査をしておくか。
「森に食われた人が出たときは、すぐに教えてくれ」
「なぜ? ちゃんと帰してくれるわ」
危険性を認識しないリリスは、きょとんと首を傾げた。中で分解されても、元通りに組み立てて帰してくれるならいいじゃない。乱暴な理論で応じる。
「ルキフェルの手が空き次第、アベルの総点検だ」
「陛下、その言い方ですと機械や道具のようです」
「……検査?」
「そちらの方が相応しいかと」
にっこり笑いながら言葉を正され、ルシファーは目を逸らした。アスタロトもそうだが、吸血種は賢い者が多いので怖い。鋭い指摘が飛んでくるのだ。
「ルシファー、蜂蜜を入れて」
「ああ。いつもの量でいいか?」
きらきらした金色のスプーンで掬い、たっぷりと注いだ。ピンクのお茶の底で輝く琥珀はすぐに溶けて、リリスは満足そうに口をつけた。
「魔の森は新種を作る基準を何に定めてるんだ?」
魔物も魔族もいる。意思の疎通が必要な魔族なら、共通言語を作って全員に与えればいい。なのに通じたり通じなかったりするため、毎回手探りで種族認定を行ってきた。その辺の疑問を口にしながら、ルシファーはテラスでベーコンを突く。隣のリリスは目玉焼きをパンに乗せたところだった。
「よくわからないわ。私を作った時は、森で人族の赤子を回収したらしいの。それを分解して再構成したんだと思う」
人族はよく魔の森に、子どもや赤子を捨てた。ルシファーが最初にリリスと出会った時も、場所が魔王城の城門前でなければ、誰も疑問に思わなかっただろう。頻度は高く、よく魔獣や魔物の餌になった。以前アスタロトが潜入して確認した情報では、口減らしという表現がなされた。食べていくのがやっとなのに、望まぬ子が生まれたため始末するのだ。
自分達の手を汚すのは怖いし、嫌だ。だから確実に死ぬとわかっていて、森の中に捨てる。捨てた親はもしかしたら生きているかも、とくだらない感傷に浸りながら罪悪感を薄めるらしい。反吐が出ると吐き捨てたアスタロトが、次の日にその都を滅ぼしたのは数千年前の話だったか。
魔の森に吸収された赤子もいたのかと目を細め、ベーコンを齧った。少し火の通りが良すぎて硬い。もぐもぐと咀嚼する隣で、リリスは思わぬ発言をした。
「そういえば……アベルってば先日、魔の森に食われちゃったのよ」
「は?」
給仕していたアデーレが、珍しく食器を落とす。リリスお気に入りの薔薇のカップが転がった。
「し、失礼いたしました」
「ああ、気にするな。復元するから触らなくていいぞ」
縁が少し欠けたが、元に戻す魔法陣を投げて対応する。綺麗に修復されたのを確認し、アデーレはそのカップを一度下げた。浄化で十分対応できるが、彼女は吸血種だ。危険なので、浄化は使わないのが礼儀だった。
代わりに取り出したのは小花が散る愛らしいカップだ。そちらに青いお茶を淹れて差し出した。リリスの好きなマメ科のハーブティだ。目を輝かせる彼女のために、レモンが添えられる。絞ったら真っ青なお茶は紫になり、やがてピンクに変化するのだ。問題はピンクになるまでレモンを絞ると、味が酸っぱすぎる点だった。そこは蜂蜜で補う。
リリスが幼い頃に開発した、レモン絞り限定の魔法陣を使い、ぽたぽたと時間をかけて絞る。その間に立ち直ったアデーレが口を開いた。
「リリス様、先ほど……アベルが森に食われたと仰いましたが」
「ええ。そう、食べちゃったのよ。分解したかは聞いてないわ」
「そうですか」
もし分解されて組み立てられたとしても、現時点で変化はないので問題にならないが。知らない間に分解されて組み立てられた魔族がいるかも知れない。その辺は調査をしておくか。
「森に食われた人が出たときは、すぐに教えてくれ」
「なぜ? ちゃんと帰してくれるわ」
危険性を認識しないリリスは、きょとんと首を傾げた。中で分解されても、元通りに組み立てて帰してくれるならいいじゃない。乱暴な理論で応じる。
「ルキフェルの手が空き次第、アベルの総点検だ」
「陛下、その言い方ですと機械や道具のようです」
「……検査?」
「そちらの方が相応しいかと」
にっこり笑いながら言葉を正され、ルシファーは目を逸らした。アスタロトもそうだが、吸血種は賢い者が多いので怖い。鋭い指摘が飛んでくるのだ。
「ルシファー、蜂蜜を入れて」
「ああ。いつもの量でいいか?」
きらきらした金色のスプーンで掬い、たっぷりと注いだ。ピンクのお茶の底で輝く琥珀はすぐに溶けて、リリスは満足そうに口をつけた。
51
あなたにおすすめの小説
五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~
放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」
大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。
生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。
しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。
「すまない。私は父としての責任を果たす」
かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。
だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。
これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。
【完結】聖獣もふもふ建国記 ~国外追放されましたが、我が領地は国を興して繁栄しておりますので御礼申し上げますね~
綾雅(りょうが)要らない悪役令嬢
ファンタジー
婚約破棄、爵位剥奪、国外追放? 最高の褒美ですね。幸せになります!
――いま、何ておっしゃったの? よく聞こえませんでしたわ。
「ずいぶんと巫山戯たお言葉ですこと! ご自分の立場を弁えて発言なさった方がよろしくてよ」
すみません、本音と建て前を間違えましたわ。国王夫妻と我が家族が不在の夜会で、婚約者の第一王子は高らかに私を糾弾しました。両手に花ならぬ虫を這わせてご機嫌のようですが、下の緩い殿方は嫌われますわよ。
婚約破棄、爵位剥奪、国外追放。すべて揃いました。実家の公爵家の領地に戻った私を出迎えたのは、溺愛する家族が興す新しい国でした。領地改め国土を繁栄させながら、スローライフを楽しみますね。
最高のご褒美でしたわ、ありがとうございます。私、もふもふした聖獣達と幸せになります! ……余計な心配ですけれど、そちらの国は傾いていますね。しっかりなさいませ。
【同時掲載】小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
※2022/05/10 「HJ小説大賞2021後期『ノベルアップ+部門』」一次選考通過
※2022/02/14 エブリスタ、ファンタジー 1位
※2022/02/13 小説家になろう ハイファンタジー日間59位
※2022/02/12 完結
※2021/10/18 エブリスタ、ファンタジー 1位
※2021/10/19 アルファポリス、HOT 4位
※2021/10/21 小説家になろう ハイファンタジー日間 17位
この度、猛獣公爵の嫁になりまして~厄介払いされた令嬢は旦那様に溺愛されながら、もふもふ達と楽しくモノづくりライフを送っています~
柚木崎 史乃
ファンタジー
名門伯爵家の次女であるコーデリアは、魔力に恵まれなかったせいで双子の姉であるビクトリアと比較されて育った。
家族から疎まれ虐げられる日々に、コーデリアの心は疲弊し限界を迎えていた。
そんな時、どういうわけか縁談を持ちかけてきた貴族がいた。彼の名はジェイド。社交界では、「猛獣公爵」と呼ばれ恐れられている存在だ。
というのも、ある日を境に文字通り猛獣の姿へと変わってしまったらしいのだ。
けれど、いざ顔を合わせてみると全く怖くないどころか寧ろ優しく紳士で、その姿も動物が好きなコーデリアからすれば思わず触りたくなるほど毛並みの良い愛らしい白熊であった。
そんな彼は月に数回、人の姿に戻る。しかも、本来の姿は類まれな美青年なものだから、コーデリアはその度にたじたじになってしまう。
ジェイド曰くここ数年、公爵領では鉱山から流れてくる瘴気が原因で獣の姿になってしまう奇病が流行っているらしい。
それを知ったコーデリアは、瘴気の影響で不便な生活を強いられている領民たちのために鉱石を使って次々と便利な魔導具を発明していく。
そして、ジェイドからその才能を評価され知らず知らずのうちに溺愛されていくのであった。
一方、コーデリアを厄介払いした家族は悪事が白日のもとに晒された挙句、王家からも見放され窮地に追い込まれていくが……。
これは、虐げられていた才女が嫁ぎ先でその才能を発揮し、周囲の人々に無自覚に愛され幸せになるまでを描いた物語。
他サイトでも掲載中。
神様の忘れ物
mizuno sei
ファンタジー
仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。
わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。
【完結】魔王様、今度も過保護すぎです!
綾雅(りょうが)要らない悪役令嬢
ファンタジー
「お生まれになりました! お嬢様です!!」
長い紆余曲折を経て結ばれた魔王ルシファーは、魔王妃リリスが産んだ愛娘に夢中になっていく。子育ては二度目、余裕だと思ったのに予想外の事件ばかり起きて!?
シリアスなようでコメディな軽いドタバタ喜劇(?)です。
魔王夫妻のなれそめは【魔王様、溺愛しすぎです!】を頑張って読破してください(o´-ω-)o)ペコッ
【同時掲載】アルファポリス、カクヨム、エブリスタ、小説家になろう
※2023/06/04 完結
※2022/05/13 第10回ネット小説大賞、一次選考通過
※2021/12/25 小説家になろう ハイファンタジー日間 56位
※2021/12/24 エブリスタ トレンド1位
※2021/12/24 アルファポリス HOT 71位
※2021/12/24 連載開始
本の知識で、らくらく異世界生活? 〜チート過ぎて、逆にヤバい……けど、とっても役に立つ!〜
あーもんど
ファンタジー
異世界でも、本を読みたい!
ミレイのそんな願いにより、生まれた“あらゆる文書を閲覧出来るタブレット”
ミレイとしては、『小説や漫画が読めればいい』くらいの感覚だったが、思ったよりチートみたいで?
異世界で知り合った仲間達の窮地を救うキッカケになったり、敵の情報が筒抜けになったりと大変優秀。
チートすぎるがゆえの弊害も多少あるものの、それを鑑みても一家に一台はほしい性能だ。
「────さてと、今日は何を読もうかな」
これはマイペースな主人公ミレイが、タブレット片手に異世界の暮らしを謳歌するお話。
◆小説家になろう様でも、公開中◆
◆恋愛要素は、ありません◆
狼の子 ~教えてもらった常識はかなり古い!?~
一片
ファンタジー
バイト帰りに何かに引っ張られた俺は、次の瞬間突然山の中に放り出された。
しかも体をピクリとも動かせない様な瀕死の状態でだ。
流石に諦めかけていたのだけど、そんな俺を白い狼が救ってくれた。
その狼は天狼という神獣で、今俺がいるのは今までいた世界とは異なる世界だという。
右も左も分からないどころか、右も左も向けなかった俺は天狼さんに魔法で癒され、ついでに色々な知識を教えてもらう。
この世界の事、生き延び方、戦う術、そして魔法。
数年後、俺は天狼さんの庇護下から離れ新しい世界へと飛び出した。
元の世界に戻ることは無理かもしれない……でも両親に連絡くらいはしておきたい。
根拠は特にないけど、魔法がある世界なんだし……連絡くらいは出来るよね?
そんな些細な目標と、天狼さん以外の神獣様へとお使いを頼まれた俺はこの世界を東奔西走することになる。
色々な仲間に出会い、ダンジョンや遺跡を探索したり、何故か謎の組織の陰謀を防いだり……。
……これは、現代では失われた強大な魔法を使い、小さな目標とお使いの為に大陸をまたにかける小市民の冒険譚!
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる