【完結】勇者に折られた魔王のツノは、幼児の庇護者になりました

綾雅(りょうが)要らない悪役令嬢

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45.相談から過去に牽制した逸話がぽろり

 琥珀は誰かを敵対視することはまずない。気に入って持ち歩く僕を取ろうとしたからベリアルを嫌ったが、奪わないと分かったらあっさり懐いた。こういう部分は子どもらしい。この年齢だから、計算しての言動ってこともないだろう。

 ベリアルの方が面食らったらしく、簡単に人を信じてはいけないと言い聞かせていた。そういうところが信用された一因だと思うが。アスモデウスの世話を焼いていたせいか、ベリアルは痒いところに手が届くタイプの側近だった。あれこれと集落の問題を解決して回る。

 敵として登場した悪いイメージを払拭したいと相談された。相談するための手土産で果物を運んできたため、バルテルが剥いて琥珀が食べる。見た目は林檎のようだったが、味はミカンらしい。食べられないので、せっかくの異世界転生も活用できないな。

「私は魔王の側近として、それらしく振舞ってきました。もちろん強気に出て相手を威圧するのも日常で、結構恨まれていると思うのです」

『ああ、うん、確かに好まれる感じじゃないよな。魔王の片腕っぽさはあったけど』

 すでに閨事情を含めて全部知られているので、僕には相談しやすいのか。外で偉そうに振舞う姿を覚えてるけど、魔王アスモデウスの腕の中だと普段から大人しく控えめだった。単に彼に気を遣ってるんだと思ってたぞ。物静かな方が本来のベリアルだとしたら、魔王の側近をこなすのは相当気を張っていただろう。

 腕があったら、よしよしと慰めてやりたいところだ。

『嫌われてるかと聞かれたら、そうでもないと思うぞ』

「お気遣いありがとうございます」

『いや、気遣いじゃなくて。ベリアルは魔族の中でモテたからな』

 曖昧に笑みを浮かべて流そうとするベリアルの表情は、そんな嘘で慰めてくれる親切な人に対する心遣いでいっぱいだった。だから、嘘じゃないんだってば。

 琥珀は両手で果物を掴んで食べるため、僕を専用の台に設置した。話の内容に興味はないようだ。警戒心たっぷりの野生児琥珀が、ベリアルの前で僕を手から離してること自体……ひとつの証拠なんだけどね。

『ベリアルに告白しようとしてアスモデウスに排除された奴、並べてやろうか? 凄い数いるぞ。だから恨まれるとしたらアスモデウスだと思う』

 側近として絡め取り、無体を強いた――おそらくそんな風に思われてる。だから魔族にとってベリアルは気の毒な被害者であり、魅力的な伴侶候補だった。

『アドラメレク、バティン、ビフロンス、ブネ、フォラス、グレモリーもそうか』

「え? アドラメレクですか?」

 驚いた顔をするベリアルに頷く。

『幼馴染だっけ? 彼は割と早い段階で排除されたよな。アスモデウスが洗脳得意なの、覚えてない?』

 僕は頭上で見ていた。洗脳に抵抗して暴れるアドラメレクを笑いながら、剣で串刺しにする非道な行為。止める方法がなかったから見てたけどさ。

『ある日突然、ベリアルに冷たくなっただろ。あの前の日に洗脳してた』

「あの人がそんなことを」

 なぜ頬を染める? ちょっとドン引きだが、アスモデウスとベリアルはいいカップルみたいだ。
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