【完結】勇者に折られた魔王のツノは、幼児の庇護者になりました

綾雅(りょうが)要らない悪役令嬢

文字の大きさ
51 / 82

51.死体を乗っ取る? それ冗談だから

 果物の味は、西瓜が近いのかと想像する。琥珀が両手を広げて説明してくれた内容は、水っぽくて甘い。だけど甘すぎないで、野菜みたい。瓜のイメージだ。西瓜やメロンだろう。

 シェンは風呂と石鹸が気に入り、また来ると言い置いて帰っていった。果物を手土産にするくらいだから、それなりに敬意を表してくれてるのか。シェンは古龍で強者だから、彼が頻繁に出入りすることで魔族や人間からの攻撃をかわせる利点もあった。まあ、シェンのことだから琥珀が大きくなるまで、見守る気でいるんだと思う。優しい奴だな。

「ところで、シドウ。それだけの魔力があるのに手足を作れないのか?」

『あれば体が欲しいけど、どうするんだよ』

 作り方の本があれば読むが、異世界ラノベでも聞いたことがない。ツノって本来、無機物に分類されるし。意識や記憶があって話すなんて想定外だろう。方法がわからないと説明したら、アルマに相談することになった。

「体の作り方? 考えたこともないわね。それ以前に魔法で作ったら、常に魔法を発動し続ける必要があるわよ」

 ご指摘の通り。それはしんどい。常に魔力を使って魔法を展開するのは無理だ。寝てる間に消えてツノに戻る予感しかない。

『空いてる体を乗っ取る方が早かったりして』

 冗談半分で笑いながら口にした途端、バルテルが手を叩いた。

「その手があった! 腐る前の死体を探そう」

「相性もあると思うけど、乗っ取る方が確実ね」

 え? バルテルに続いてアルマまで賛成するの? 冗談で、本気じゃないぞ。というか、死体を腐らないように維持する魔法を使うなら、結局のところ自分の体を作っても同じじゃないか。

「全然違うわ。魔力の消費量もそうだけど、具体的にイメージし続けるのよ? 手を伸ばすときに細かく手の動きや指に力を入れる加減を、ずっと想像し続けるのは至難の業よ」

 あ、うん。無理。そこまで意識して手足を動かしたことがないから、途中で意識が疎かになった首が転げ落ちたり、ホラーな予感がする。指の動きに集中して、腕自体が消えたりしそうだった。

「形のあるものを動かす方が簡単だな」

 バルテルの言葉に頷くものの、そもそも腐ってない体なんて、死にたてほやほやだろ? 滅多にないし。向かってきた敵を殺して、乗っ取るなんて鬼畜の所業だ。断固として拒否する。

「そういう潔癖なところ、シドウらしいな」

「死体、僕作る!」

 きょろきょろしながら話を聞いていた琥珀が、ぐっと拳を握った。決意表明は愛らしいが、内容がエグかった。

『作らないでいい。他の方法を考えるから』

「あら、いいものがあるわ」

 思い出したようにアルマが部屋を出ていく。森人はツリーハウスに上がれなくなったら、お迎えが来たと表現して寿命なのだそう。足腰達者で結構なことです。アルマはすいすいと降りていき、何かを抱えて戻ってきた。

「これを使っていいわよ。作ったばかりなの」
感想 15

あなたにおすすめの小説

積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!

ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。 悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。

本の虫な転生赤ちゃんは血塗りの宰相の義愛娘~本の世界に入れる『ひみちゅのちから』でピンチの帝国を救ったら、冷酷パパに溺愛されてます

青空あかな
ファンタジー
ブラック企業に勤める本の虫でアラサーOLの星花は、突然水に突き落とされた衝撃を感じる。 藻掻くうちに、自分はなぜか赤ちゃんになっていることを理解する。 溺死寸前の彼女を助けたのは、冷徹な手腕により周囲から「血塗りの宰相」と恐れられるアイザック・リヴィエール公爵だった。 その後、熱に浮かされながら見た夢で前世を思い出し、星花は異世界の赤ちゃんに転生したことを自覚する。 目覚めた彼女は周囲の会話から、赤ちゃんの自分を川に落としたのは実の両親だと知って、強いショックを受けた。 前世の両親もいわゆる毒親であり、今世では「親」に愛されたかったと……。 リヴィエール公爵家の屋敷に連れて行かれると、星花にはとても貴重な聖属性の魔力があるとわかった。 アイザックに星花は「ステラ」と名付けられ彼の屋敷で暮らすようになる。 当のアイザックとはほとんど会わない塩対応だが、屋敷の善良な人たちに温かく育てられる。 そんなある日、精霊と冒険する絵本を読んだステラはその世界に入り込み、実際に精霊と冒険した。 ステラには「本の世界に入り込み、その本の知識や内容を実際に体験したように習得できる特別な力」があったのだ。 彼女はその力を使って、隣国との条約締結に関する通訳不在問題や皇帝陛下の病気を治す薬草探索など、様々な問題を解決する。 やがて、アイザックは最初は煩わしかったはずのステラの活躍と愛らしさを目の当たりにし、彼女を「娘として」大切に思うようになる。 これは赤ちゃんに転生した本好きアラサーの社畜OLが、前世の知識と本好きの力を活かして活躍した結果、冷徹な義父から溺愛される話である。

【完結】貧乏令嬢の野草による領地改革

うみの渚
ファンタジー
八歳の時に木から落ちて頭を打った衝撃で、前世の記憶が蘇った主人公。 優しい家族に恵まれたが、家はとても貧乏だった。 家族のためにと、前世の記憶を頼りに寂れた領地を皆に支えられて徐々に発展させていく。 主人公は、魔法・知識チートは持っていません。 加筆修正しました。 お手に取って頂けたら嬉しいです。

侯爵家の愛されない娘でしたが、前世の記憶を思い出したらお父様がバリ好みのイケメン過ぎて毎日が楽しくなりました

下菊みこと
ファンタジー
前世の記憶を思い出したらなにもかも上手くいったお話。 ご都合主義のSS。 お父様、キャラチェンジが激しくないですか。 小説家になろう様でも投稿しています。 突然ですが長編化します!ごめんなさい!ぜひ見てください!

契約結婚から始まる公爵家改造計画 ~魔力ゴミ令嬢は最強魔術師の胃袋をつかみました~

夢喰るか
恋愛
貧乏男爵令嬢エマは、破格の報酬に惹かれて「人食い公爵」と恐れられるヴォルガード公爵邸の乳母に応募する。そこで出会ったのは、魔力過多症で衰弱する三歳のレオと、冷酷な氷の魔術師ジークフリート。前世の保育士経験を持つエマは、自身の「浄化魔力」で作った料理でレオを救い、契約結婚を結ぶことに。エマの温かさに触れ、ジークフリートの凍りついた心は次第に溶けていく。

貧乏で凡人な転生令嬢ですが、王宮で成り上がってみせます!

小針ゆき子
ファンタジー
フィオレンツァは前世で日本人だった記憶を持つ伯爵令嬢。しかしこれといった知識もチートもなく、名ばかり伯爵家で貧乏な実家の行く末を案じる毎日。そんな時、国王の三人の王子のうち第一王子と第二王子の妃を決めるために選ばれた貴族令嬢が王宮に半年間の教育を受ける話を聞く。最初は自分には関係のない話だと思うが、その教育係の女性が遠縁で、しかも後継者を探していると知る。 これは高給の職を得るチャンス!フィオレンツァは領地を離れ、王宮付き教育係の後継者候補として王宮に行くことになる。 真面目で機転の利くフィオレンツァは妃候補の令嬢たちからも一目置かれる存在になり、王宮付き教師としての道を順調に歩んでいくかと思われたが…。

一度目で黒狼公に討たれた私ですが、二度目の夜はお父様のそばでしか眠れません

師走
恋愛
八歳の冬、リリア・ヴァルグレイは父に殺された。 王国最強の討魔貴族――黒狼公レオンハルト・ヴァルグレイ。 人にも魔にも容赦のないその男は、黒花の災厄に呑まれかけた実の娘を、自らの手で討ったのだ。 けれど次に目を覚ました時、リリアは赤ん坊に戻っていた。 もう二度と、お父様に剣を向けられたくない。 そう願うのに、夜になるとまた黒花の囁きが忍び寄る。甘くやさしいその声は、孤独な心に触れて、静かに破滅へと導こうとする。 そして、その囁きがぴたりと止むのは――世界でいちばん怖いお父様のそばだけだった。 一度目の父は、同じ城で暮らしていても遠い人だった。 リリアを見ない。抱かない。呼びもしない。 そのくせ二度目の父は、相変わらず冷たいまま、なぜか夜ごとリリアを放っておいてくれない。侍女を替え、部屋を守らせ、怯えて眠れない娘を黙って自分の近くへ置いてしまう。 人にはあれほど容赦がないのに、リリアにだけ少しずつおかしくなっていく。 怖い。近づきたくない。 それでも、その腕の中でしか眠れない。 またあの冬が来る。 また同じように、黒花はリリアを呑み込もうとするかもしれない。 今度こそ囁きに負けないために。今度こそ父に剣を抜かせないために。 一度目で父に討たれた娘は、二度目の人生でもっとも恐ろしいその人のそばへ、自分の意志で手を伸ばしていく。 小説家になろう様でも掲載中

掃除婦に追いやられた私、城のゴミ山から古代兵器を次々と発掘して国中、世界中?がざわつく

タマ マコト
ファンタジー
王立工房の魔導測量師見習いリーナは、誰にも測れない“失われた魔力波長”を感じ取れるせいで奇人扱いされ、派閥争いのスケープゴートにされて掃除婦として城のゴミ置き場に追いやられる。 最底辺の仕事に落ちた彼女は、ゴミ山の中から自分にだけ見える微かな光を見つけ、それを磨き上げた結果、朽ちた金属片が古代兵器アークレールとして完全復活し、世界の均衡を揺るがす存在としての第一歩を踏み出す。