【完結】勇者に折られた魔王のツノは、幼児の庇護者になりました

綾雅(りょうが)要らない悪役令嬢

文字の大きさ
61 / 82

61.腹の中に何かがいる!?

 ショックも一週間ほど経過すると薄れてくる。メスになってしまったんだから、仕方ない。ここは、性転換したことを受け止めるのが正しいんだと思う。

「シドウ、最近太ってないか?」

「バルテル殿、言葉を包んでください。お腹が張ってきただけですよね」

 バルテルとベリアルに指摘され、お座りして自分の体を眺める。そういや、ぐるっと丸くなる時に苦しかったりするけど。運動不足か? 元が野生の獣だから、運動量が凄かった可能性もある。急に運動をやめてご飯を食べれば、太るのも当然だった。

 この体ががりがりに痩せていたこともあり、アルマがたくさん料理を分けてくれたんだよな。分からなかった味も徐々に感じるようになって、この体に馴染んだ分だけ消化して吸収できている。この体を受け入れると決めたら、格段にふっくらしてきた。

 毛並みも整ってきて、ふわふわだし……最近はすっかり琥珀の枕だった。

『太ったかな……運動するか』

 狼だし、一人で散歩に行っても平気だろう。森人も僕が中にいることはあっさり受け入れてくれたし、首のリボンを落としたりしなければ攻撃されることもなさそうだ。問題は熊などの捕食動物がいないかだけど。厨二詠唱さえ我慢すれば、かなり強いから平気だろう。

『散歩に行って来る』

「僕も」

 がっちり僕にしがみ付く琥珀が、腹に手を回して胴体を拘束してくる。まだ背中まで手が回らないところが可愛いな。無理に振り払うこともないので、一度伏せて話を聞くことにした。

『近所の散歩で、すぐ戻ってくるぞ』

「だめ」

『熊が出たら琥珀を呼ぶから』

「危ないもん」

 とにかく出るなの一点張りだ。よく分からない。それより伏せたこの姿勢、妙に落ちつく。眠くなってきたぞ。変だな、昨日も昼寝してしまったし。睡眠時間が長くなったのは獣の体に引きずられてるからか?

「危ない、ここ……」

 訴える琥珀が撫でているのは、僕の腹部だ。運動しようと思った原因の腹は、ぽっこりと飛び出ていた。これは人間の三段腹じゃないか? 絶対に痩せてスリムになろう。メスの体なのに、元の持ち主が泣く案件だ。

「ぶつけると死んじゃう」

『ん?』

 奇妙な表現をした。腹を打つと死ぬ、それは熊に攻撃されたらの意味か? まあ腹じゃなく頭でも死ぬけど、なぜ腹に限定したんだ。同じ疑問を抱いたベリアルが琥珀に尋ねる。

「なぜお腹なのですか」

「中にいる。ナウ達と同じ」

 は?

 一瞬世界が止まった。というか、僕の呼吸が止まったらしい。バルテルにぺちぺちと頬を叩かれて、蘇生する。恐る恐るお腹を見て、そっと目を逸らした。中に、何がいる――って?!
感想 15

あなたにおすすめの小説

積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!

ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。 悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。

本の虫な転生赤ちゃんは血塗りの宰相の義愛娘~本の世界に入れる『ひみちゅのちから』でピンチの帝国を救ったら、冷酷パパに溺愛されてます

青空あかな
ファンタジー
ブラック企業に勤める本の虫でアラサーOLの星花は、突然水に突き落とされた衝撃を感じる。 藻掻くうちに、自分はなぜか赤ちゃんになっていることを理解する。 溺死寸前の彼女を助けたのは、冷徹な手腕により周囲から「血塗りの宰相」と恐れられるアイザック・リヴィエール公爵だった。 その後、熱に浮かされながら見た夢で前世を思い出し、星花は異世界の赤ちゃんに転生したことを自覚する。 目覚めた彼女は周囲の会話から、赤ちゃんの自分を川に落としたのは実の両親だと知って、強いショックを受けた。 前世の両親もいわゆる毒親であり、今世では「親」に愛されたかったと……。 リヴィエール公爵家の屋敷に連れて行かれると、星花にはとても貴重な聖属性の魔力があるとわかった。 アイザックに星花は「ステラ」と名付けられ彼の屋敷で暮らすようになる。 当のアイザックとはほとんど会わない塩対応だが、屋敷の善良な人たちに温かく育てられる。 そんなある日、精霊と冒険する絵本を読んだステラはその世界に入り込み、実際に精霊と冒険した。 ステラには「本の世界に入り込み、その本の知識や内容を実際に体験したように習得できる特別な力」があったのだ。 彼女はその力を使って、隣国との条約締結に関する通訳不在問題や皇帝陛下の病気を治す薬草探索など、様々な問題を解決する。 やがて、アイザックは最初は煩わしかったはずのステラの活躍と愛らしさを目の当たりにし、彼女を「娘として」大切に思うようになる。 これは赤ちゃんに転生した本好きアラサーの社畜OLが、前世の知識と本好きの力を活かして活躍した結果、冷徹な義父から溺愛される話である。

【完結】貧乏令嬢の野草による領地改革

うみの渚
ファンタジー
八歳の時に木から落ちて頭を打った衝撃で、前世の記憶が蘇った主人公。 優しい家族に恵まれたが、家はとても貧乏だった。 家族のためにと、前世の記憶を頼りに寂れた領地を皆に支えられて徐々に発展させていく。 主人公は、魔法・知識チートは持っていません。 加筆修正しました。 お手に取って頂けたら嬉しいです。

侯爵家の愛されない娘でしたが、前世の記憶を思い出したらお父様がバリ好みのイケメン過ぎて毎日が楽しくなりました

下菊みこと
ファンタジー
前世の記憶を思い出したらなにもかも上手くいったお話。 ご都合主義のSS。 お父様、キャラチェンジが激しくないですか。 小説家になろう様でも投稿しています。 突然ですが長編化します!ごめんなさい!ぜひ見てください!

契約結婚から始まる公爵家改造計画 ~魔力ゴミ令嬢は最強魔術師の胃袋をつかみました~

夢喰るか
恋愛
貧乏男爵令嬢エマは、破格の報酬に惹かれて「人食い公爵」と恐れられるヴォルガード公爵邸の乳母に応募する。そこで出会ったのは、魔力過多症で衰弱する三歳のレオと、冷酷な氷の魔術師ジークフリート。前世の保育士経験を持つエマは、自身の「浄化魔力」で作った料理でレオを救い、契約結婚を結ぶことに。エマの温かさに触れ、ジークフリートの凍りついた心は次第に溶けていく。

貧乏で凡人な転生令嬢ですが、王宮で成り上がってみせます!

小針ゆき子
ファンタジー
フィオレンツァは前世で日本人だった記憶を持つ伯爵令嬢。しかしこれといった知識もチートもなく、名ばかり伯爵家で貧乏な実家の行く末を案じる毎日。そんな時、国王の三人の王子のうち第一王子と第二王子の妃を決めるために選ばれた貴族令嬢が王宮に半年間の教育を受ける話を聞く。最初は自分には関係のない話だと思うが、その教育係の女性が遠縁で、しかも後継者を探していると知る。 これは高給の職を得るチャンス!フィオレンツァは領地を離れ、王宮付き教育係の後継者候補として王宮に行くことになる。 真面目で機転の利くフィオレンツァは妃候補の令嬢たちからも一目置かれる存在になり、王宮付き教師としての道を順調に歩んでいくかと思われたが…。

一度目で黒狼公に討たれた私ですが、二度目の夜はお父様のそばでしか眠れません

師走
恋愛
八歳の冬、リリア・ヴァルグレイは父に殺された。 王国最強の討魔貴族――黒狼公レオンハルト・ヴァルグレイ。 人にも魔にも容赦のないその男は、黒花の災厄に呑まれかけた実の娘を、自らの手で討ったのだ。 けれど次に目を覚ました時、リリアは赤ん坊に戻っていた。 もう二度と、お父様に剣を向けられたくない。 そう願うのに、夜になるとまた黒花の囁きが忍び寄る。甘くやさしいその声は、孤独な心に触れて、静かに破滅へと導こうとする。 そして、その囁きがぴたりと止むのは――世界でいちばん怖いお父様のそばだけだった。 一度目の父は、同じ城で暮らしていても遠い人だった。 リリアを見ない。抱かない。呼びもしない。 そのくせ二度目の父は、相変わらず冷たいまま、なぜか夜ごとリリアを放っておいてくれない。侍女を替え、部屋を守らせ、怯えて眠れない娘を黙って自分の近くへ置いてしまう。 人にはあれほど容赦がないのに、リリアにだけ少しずつおかしくなっていく。 怖い。近づきたくない。 それでも、その腕の中でしか眠れない。 またあの冬が来る。 また同じように、黒花はリリアを呑み込もうとするかもしれない。 今度こそ囁きに負けないために。今度こそ父に剣を抜かせないために。 一度目で父に討たれた娘は、二度目の人生でもっとも恐ろしいその人のそばへ、自分の意志で手を伸ばしていく。 小説家になろう様でも掲載中

中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています

浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】 ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!? 激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。 目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。 もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。 セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。 戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。 けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。 「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの? これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、 ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。 ※小説家になろうにも掲載中です。