【完結】あなたの思い違いではありませんの?

綾雅(りょうが)要らない悪役令嬢

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23.共通点の少ない物語

 物語が不明のコルジリネを除き、四人の物語を確認する。すべての物語を知っている者はなく、あらすじを纏めた一覧を眺めた。

「……よくわからないわね」

 カレンデュラが溜め息を吐く。それもそのはずだ。全員が違う物語の登場人物なのだから。一つの話に全員が登場している物語はなかった。モブとして名前や地位が伏せられていた可能性も考慮すれば、すべての物語が該当する可能性もある。

 聖女ビオラの乙女ゲーム『聖女は月光を手に』――聖女が異世界から召喚され、男爵家の養女となる。王子の婚約者に虐められたことを公表し、王子様と結ばれハッピーエンド。攻略対象は他にも数名いるが、逆ハーエンドは存在しないらしい。

 公爵令嬢カレンデュラは、恋愛小説『婚約破棄で結構ですわ』の主人公だ。異世界から転移した女性に浮気する婚約者。王子である彼に夜会で婚約破棄を告げられ、その場で隣国から来ていた皇太子殿下と婚約する。優秀な彼女を失ったあとで、国は傾いてざまぁが成立する。

 コミカライズされた『花冠に愛を誓う』で、悪役令嬢のお取り巻きモブAとして、ティアレラが登場する。辺境伯令嬢の肩書きも一致した。ヒロインとなる男爵令嬢に罠を仕掛けられ、実家のある辺境へ帰される。だが隣国から攻められ、辺境伯家はあっさり滅びた。最後は、ヒロインが実は異世界からの転移者で、訳のわからない魔法を使い助かる。ある意味、とんでも展開だったようだ。

 クレチマスの義妹が主人公の『リクニスの花』は、専用の脚本で作られたアニメだった。流行の悪役令嬢物をアレンジしたらしく、攻略対象とされる異性をヒロインが口説く展開だ。その攻略対象の一人である兄を守ろうと奮闘する妹。後半で血の繋がりがないと分かり、二人は結ばれた。

「私は『リクニスの花』と『婚約破棄で結構ですわ』しか知らないわ」

 カレンデュラはあらすじを読んで、困った顔をする。ビオラは自称オタクだけあって詳しいが、亡くなった後の展開は当然知らない。『花冠に愛を誓う』も原作は読んだが、その時点でコミカライズ展開はなかった。そのため、コミカライズで増えたモブAの存在もわからない。

「結局のところ、どの物語も違うのではないか?」

 コルジリネの発言に、四人は顔を見合わせた。食事を終えて休憩を挟み、再び集まった彼らの前に置かれたカップの中身はコーヒーだ。個性的にミルクや砂糖で味付けされている。ミルクたっぷりはクレチマスとティアレラ、砂糖とミルク両方のビオラ、カレンデュラは砂糖を少々。

 自国の特産品であるコーヒーを手土産にしたコルジリネは、この話し合いにやや飽きていた。ブラックで口に運んだ皇太子は、音もなくソーサーへカップを戻す。

「逆に、少しずつ混ざった可能性もある」

 転生や転移がこんなにいるんだ。混じった可能性もあるだろう? クレチマスの言い分も一理ある。様々な意見が出たものの、答えは見つからなかった。

「物語に関しては、後日研究するとして……まずはこの国の行く末を考えなくては」

 ティアレラの尤もな意見に、ビオラが手を挙げる。当ててくれと期待の眼差しを向けられ、学校じゃないのよと思いながら指名する。

「えっと! それって王様の仕事ですよね。私達は関係ありません」

「っ……」

「確かに」

 核心をついた発言だが、無責任に放り出したとも言える。まだ未成年だし、家督も継いでいない。そうなれば、当たり前の結論でもあった。

「ビオラ嬢の意見でいこう。あとは大人の仕事だ」

 早くカレンデュラを自国に連れて行きたい。すぐにでも結婚したいコルジリネは、にやりと笑った。
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