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第3章 陰陽師、囚われる
13.***成呪***
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呪われよ、地を統べる神々を認めぬ空の輩を滅ぼせ。
燃え上がる炎に、呪詛を刻んだ木片を放り込む。竹管と同じように割った木片に文字を刻んだ。その文字が呪詛となり、蛇の血を混ぜた墨が煙を起こす。
壮年の男は黒い衣の裾を翻し、繰り返し呪いをかけ続けた。
濁った黒い煙の中で、ひたすらに呪詛を吐く。呪いはやがて形を与えられて、黒い人形を取る。
「滅びよ、天に連なる者ども。世界の中心は天にあらず。地へと戻せ」
己の血を吐きながら呪いを撒き散らし、男はゆっくり倒れた。その顔は老人、僅かな時間で精魂尽き果てるまで霊力を搾り出し皺枯れた手は、枯れ木のように炎を受け入れる。あっという間に全身に火が回り、彼自身を供物として呪詛は色を濃くした。
笑みを浮かべた満足げな死体が燃え尽きる頃、洞窟の中は黒い煙のみが残される。空気を燃やし尽くして生まれた黒い人影は、やがて外へ流れるように吸い出された。
嫌な予感がする。
北斗が用意した封じの札が座敷牢を囲む形で貼られていく。北斗の霊力が人間の中で特別に多く格が高いとはいえ、闇の神族でもある真桜には遠く及ばなかった。そのため、霊視を妨げる効力すらない。
壁に背を預けて寄りかかり、呼吸を整えて霊体を切り離した。
『真桜様』
「悪いけど、身体を頼む」
じっと座ったままの己の体を見下ろしながら、霊体の手を振る。呆れたような顔をした黒葉がふわりと結界を張った。赤銅色の髪がふわりと風に舞い、続いて冷たい空気が膜のように広がっていく。
『結界を張りましたので、私もご一緒いたします』
「……わかった」
闇の眷属である黒葉の結界を破れる者など限られる。真桜であっても多少苦戦するほど強固な結界は、他の雑霊など寄せ付けないだろう。
霊体が傷を負うと本体に傷が転嫁されるため、霊体を著しく損傷した術師は死に至る。守護者として生まれた黒葉が、己の本体ともいえる真桜を心配するのは当然だった。
「黒刃になれるか?」
頷いた黒葉がするりと形を変え、真桜の左手に収まった。黒く光を吸い込む刃は美しく、その柄はどこまでも手に馴染む。
残される身体を一瞥し、真桜は牢を抜け出した。外は欠けた月がわずかな光を注いでいる。あと数日で完全に月は姿を隠すだろう。それは天津神の守護が弱まることを意味していた。
新月は天にある神々の力を封じ、無力な状態が続く。呪詛の主がその機会を見逃すとは思えなかった。あと数日の猶予、白く細い月を見上げた真桜は大地へ身を溶かした。
燃え上がる炎に、呪詛を刻んだ木片を放り込む。竹管と同じように割った木片に文字を刻んだ。その文字が呪詛となり、蛇の血を混ぜた墨が煙を起こす。
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濁った黒い煙の中で、ひたすらに呪詛を吐く。呪いはやがて形を与えられて、黒い人形を取る。
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笑みを浮かべた満足げな死体が燃え尽きる頃、洞窟の中は黒い煙のみが残される。空気を燃やし尽くして生まれた黒い人影は、やがて外へ流れるように吸い出された。
嫌な予感がする。
北斗が用意した封じの札が座敷牢を囲む形で貼られていく。北斗の霊力が人間の中で特別に多く格が高いとはいえ、闇の神族でもある真桜には遠く及ばなかった。そのため、霊視を妨げる効力すらない。
壁に背を預けて寄りかかり、呼吸を整えて霊体を切り離した。
『真桜様』
「悪いけど、身体を頼む」
じっと座ったままの己の体を見下ろしながら、霊体の手を振る。呆れたような顔をした黒葉がふわりと結界を張った。赤銅色の髪がふわりと風に舞い、続いて冷たい空気が膜のように広がっていく。
『結界を張りましたので、私もご一緒いたします』
「……わかった」
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