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第3章 陰陽師、囚われる
22.***夜明***
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『これで終わりですか?』
事情を深く知らない黒葉の声に、華炎と華守流が顔を見合わせた。確かに呪詛の原因である術師は死んだし、影も封じた。これで都に呪詛を振りまく存在は消えたといえる。
洞窟で死んでいた術師は国津神の祭司に伝わる術を使っていた。この男の過去は分からないが、天津神を狙った呪詛は真桜の手によって散らされ、もう害を成すことはない。
「うーん、厳密にいえば…まだ、かなぁ」
唸りながら明るい空を見上げた。夜明けを過ぎて陽を浴びる都を見下ろし、真桜は大きく息を吐いた。式神や護り手である5人を見回し、複雑そうに呟く。
「とりあえず戻るぞ」
霊体から本体である肉体へ戻ると告げられ、藤姫や黒葉はほっとした様子を見せた。どうしても霊体は傷つけられやすく、それ故に彼らの緊張は高まる。本体である身体を纏ってくれる方が霊体は安定し、護りやすいのが本音だった。
怠い身体を起こす。寄りかかっていた壁が硬いからか、腰や首が痛かった。ぎしぎし悲鳴をあげる身体を伸ばして揺らし、少しずつ解してから座りなおす。
「疲れた」
「やっと戻ったか。じゃあ出ようぜ」
座敷牢の外側から声をかける友人に、真桜は苦笑いして近づく。まだ足が少しぎこちないが、歩くのに支障はなかった。痺れた足が完全に回復する前の、微妙な感覚が擽ったい。
「出していいのか?」
「許可は出てる」
「……お前も?」
奇妙な聞き返しをした真桜へ、北斗は大きく溜め息を吐いて髪をぐしゃりとかき乱した。荒々しい動きで髪を乱した後、座敷牢の格子をどんと叩く。
「いつ気付いた?」
「オレの札を利用したの、お前だろ」
「そっか」
北斗は言い訳をしなかった。それきり口を開かず、座敷牢の鍵を空けて肩を竦める。真桜の反応を待つ北斗の前に華炎が立ちふさがった。主に近づけないよう間に立つ式神に、真桜は首を横に振る。
「いい、下がれ。華炎」
滅多にない命令に目を見開き、悔しそうな顔で華炎が下がる。牢を出た真桜はゆっくり伸びをしてから北斗を招き寄せた。咄嗟に動こうとした華守流を睨んで止め、動かない北斗へ真桜が自ら歩み寄る。
隣に寄り添うアカリは真桜の顔しか見ていない。護り手である人外が真桜の身を護ろうとする中で、アカリは別の考えを持っていた。もし彼の身を護れたとしても、心を傷つけたら意味がないのだと。
「帰ろうぜ、北斗。酒でも飲もう」
「え?」
ひらひら手を振って付いて来いと示し、真桜は平然と背を向けた。呆然とする北斗がついて来ないのを、振り返ってまた招く。
「悪いと思うなら一緒に来い」
いつもの明るさが嘘のように俯いた北斗が、とぼとぼと後ろを歩いてくる。しょぼくれた友人の姿に苦笑いして、真桜は隣に並んだ。肩を組んで引き寄せると、普段より小声で囁く。
「酒代はお前もちだからな」
事情を深く知らない黒葉の声に、華炎と華守流が顔を見合わせた。確かに呪詛の原因である術師は死んだし、影も封じた。これで都に呪詛を振りまく存在は消えたといえる。
洞窟で死んでいた術師は国津神の祭司に伝わる術を使っていた。この男の過去は分からないが、天津神を狙った呪詛は真桜の手によって散らされ、もう害を成すことはない。
「うーん、厳密にいえば…まだ、かなぁ」
唸りながら明るい空を見上げた。夜明けを過ぎて陽を浴びる都を見下ろし、真桜は大きく息を吐いた。式神や護り手である5人を見回し、複雑そうに呟く。
「とりあえず戻るぞ」
霊体から本体である肉体へ戻ると告げられ、藤姫や黒葉はほっとした様子を見せた。どうしても霊体は傷つけられやすく、それ故に彼らの緊張は高まる。本体である身体を纏ってくれる方が霊体は安定し、護りやすいのが本音だった。
怠い身体を起こす。寄りかかっていた壁が硬いからか、腰や首が痛かった。ぎしぎし悲鳴をあげる身体を伸ばして揺らし、少しずつ解してから座りなおす。
「疲れた」
「やっと戻ったか。じゃあ出ようぜ」
座敷牢の外側から声をかける友人に、真桜は苦笑いして近づく。まだ足が少しぎこちないが、歩くのに支障はなかった。痺れた足が完全に回復する前の、微妙な感覚が擽ったい。
「出していいのか?」
「許可は出てる」
「……お前も?」
奇妙な聞き返しをした真桜へ、北斗は大きく溜め息を吐いて髪をぐしゃりとかき乱した。荒々しい動きで髪を乱した後、座敷牢の格子をどんと叩く。
「いつ気付いた?」
「オレの札を利用したの、お前だろ」
「そっか」
北斗は言い訳をしなかった。それきり口を開かず、座敷牢の鍵を空けて肩を竦める。真桜の反応を待つ北斗の前に華炎が立ちふさがった。主に近づけないよう間に立つ式神に、真桜は首を横に振る。
「いい、下がれ。華炎」
滅多にない命令に目を見開き、悔しそうな顔で華炎が下がる。牢を出た真桜はゆっくり伸びをしてから北斗を招き寄せた。咄嗟に動こうとした華守流を睨んで止め、動かない北斗へ真桜が自ら歩み寄る。
隣に寄り添うアカリは真桜の顔しか見ていない。護り手である人外が真桜の身を護ろうとする中で、アカリは別の考えを持っていた。もし彼の身を護れたとしても、心を傷つけたら意味がないのだと。
「帰ろうぜ、北斗。酒でも飲もう」
「え?」
ひらひら手を振って付いて来いと示し、真桜は平然と背を向けた。呆然とする北斗がついて来ないのを、振り返ってまた招く。
「悪いと思うなら一緒に来い」
いつもの明るさが嘘のように俯いた北斗が、とぼとぼと後ろを歩いてくる。しょぼくれた友人の姿に苦笑いして、真桜は隣に並んだ。肩を組んで引き寄せると、普段より小声で囁く。
「酒代はお前もちだからな」
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