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第3章 表と裏
37.声は封じなかったが、答えられぬか?
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「なるほど」
にやりと笑って表情を作る。組んでいた足をゆったりと解き、足に触れていたオリヴィエラの顎に手をかけて上を向かせると、うっとりと目を閉じた。オレンジがかった口紅の脇、口角に唇を寄せて離れる。触れるだけで、接吻けと呼ぶに値しない行為だが……彼女は満足そうだった。
「情報の褒美だ。新しい情報を持ってこい」
言外に、そうしたら今度はきちんと接吻けてやると匂わせる。頬を赤く染めたオリヴィエラが嬉しそうに頬と口元を手で覆った。
「……ずるい」
一連の言動を見ていたリリアーナが唇を尖らせる。身を起こして拗ねるリリアーナの頬を撫でて、手招きした。立ち上がったリリアーナを膝の上に抱き上げる。玉座のひじ掛けに足を、膝の上に尻が乗せられた不安定な姿勢を嫌い、リリアーナの手が自然と首に回された。
「ん……これ、なんかいい」
満足そうなドラゴンの背で、ぱたりと羽が揺れる。
「一番なんだろう?」
先ほどの順位の話を持ち出してやれば、リリアーナは「うん」と頷いて胸元に顔をすり寄せた。軽く背を支えてやれば、自分でバランスを取る少女の表情は笑みで彩られる。
「負けた気分ですわ」
「不満なら情報を持ってこい」
一礼して出ていくオリヴィエラを見送り、膝の上で寛ぐリリアーナの金髪を手に取る。香水をつけたり化粧する年齢ではない子供は、少し甘い香りがした。
「さっき、甘いの……もらった」
口の中に入れた飴を見せる。これが甘い香りの正体らしい。鼻に届いた香りが気になり、顔を近づけた。リリアーナは頬を赤く染めて「食べる?」と飴を舌先に乗せる。それを接吻けて受け取った。
くすりと笑みが漏れる。
「いまの、番、みたい」
否定も賛同もせず、リリアーナに見えないよう飴を吐き出した。手の上に転がる飴の色は赤――鮮やかな色と甘い香りは、子供が好みそうな菓子だ。手の飴をバレないよう処分する。
腕の中が温かいのか、眠そうに目元を擦った。うとうと船を漕ぎ始めたリリアーナを抱き寄せ、オレも目を閉じる。ゆっくり呼吸を減らして、200程数えた頃……わずかな気配が動いた。
足元の影だろうか。ぞわりと背筋を撫でられたような気持の悪さに、緩みそうになる口元を引き締める。引っ掛かったか?
狙われたのは首筋、後ろから突き刺さる殺気を感じながら、オレは目を開かない。武器を振りかぶる気配に、そのまま声をかけた。
「やめておけ、手を傷めるだけだ」
「……っ」
飛び退った者が影に飛び込む前に、足元に闇を広げる。結界として普段から纏っている闇で謁見の間を染め抜き、影を消し去った。逃げ場を奪うために光を作れば、強烈な影が出来る。だが逆に闇で覆い尽くせば、逃げるべき影は消滅するのだ。壁も天井も窓も……逃げ場は存在しない。
「リリアーナに薬を盛ったのもお前か。理由を聞こう」
ようやく開いた目だが、闇によって覆われた空間は何も見えなかった。この気配と魔力は覚えがある。見えないのを承知で笑みを作って向き直った。
闇で手足を拘束し、逃げられぬ状態の刺客へ優し気な声をかける。
「声は封じなかったが、答えられぬか? ――オリヴィエラ」
にやりと笑って表情を作る。組んでいた足をゆったりと解き、足に触れていたオリヴィエラの顎に手をかけて上を向かせると、うっとりと目を閉じた。オレンジがかった口紅の脇、口角に唇を寄せて離れる。触れるだけで、接吻けと呼ぶに値しない行為だが……彼女は満足そうだった。
「情報の褒美だ。新しい情報を持ってこい」
言外に、そうしたら今度はきちんと接吻けてやると匂わせる。頬を赤く染めたオリヴィエラが嬉しそうに頬と口元を手で覆った。
「……ずるい」
一連の言動を見ていたリリアーナが唇を尖らせる。身を起こして拗ねるリリアーナの頬を撫でて、手招きした。立ち上がったリリアーナを膝の上に抱き上げる。玉座のひじ掛けに足を、膝の上に尻が乗せられた不安定な姿勢を嫌い、リリアーナの手が自然と首に回された。
「ん……これ、なんかいい」
満足そうなドラゴンの背で、ぱたりと羽が揺れる。
「一番なんだろう?」
先ほどの順位の話を持ち出してやれば、リリアーナは「うん」と頷いて胸元に顔をすり寄せた。軽く背を支えてやれば、自分でバランスを取る少女の表情は笑みで彩られる。
「負けた気分ですわ」
「不満なら情報を持ってこい」
一礼して出ていくオリヴィエラを見送り、膝の上で寛ぐリリアーナの金髪を手に取る。香水をつけたり化粧する年齢ではない子供は、少し甘い香りがした。
「さっき、甘いの……もらった」
口の中に入れた飴を見せる。これが甘い香りの正体らしい。鼻に届いた香りが気になり、顔を近づけた。リリアーナは頬を赤く染めて「食べる?」と飴を舌先に乗せる。それを接吻けて受け取った。
くすりと笑みが漏れる。
「いまの、番、みたい」
否定も賛同もせず、リリアーナに見えないよう飴を吐き出した。手の上に転がる飴の色は赤――鮮やかな色と甘い香りは、子供が好みそうな菓子だ。手の飴をバレないよう処分する。
腕の中が温かいのか、眠そうに目元を擦った。うとうと船を漕ぎ始めたリリアーナを抱き寄せ、オレも目を閉じる。ゆっくり呼吸を減らして、200程数えた頃……わずかな気配が動いた。
足元の影だろうか。ぞわりと背筋を撫でられたような気持の悪さに、緩みそうになる口元を引き締める。引っ掛かったか?
狙われたのは首筋、後ろから突き刺さる殺気を感じながら、オレは目を開かない。武器を振りかぶる気配に、そのまま声をかけた。
「やめておけ、手を傷めるだけだ」
「……っ」
飛び退った者が影に飛び込む前に、足元に闇を広げる。結界として普段から纏っている闇で謁見の間を染め抜き、影を消し去った。逃げ場を奪うために光を作れば、強烈な影が出来る。だが逆に闇で覆い尽くせば、逃げるべき影は消滅するのだ。壁も天井も窓も……逃げ場は存在しない。
「リリアーナに薬を盛ったのもお前か。理由を聞こう」
ようやく開いた目だが、闇によって覆われた空間は何も見えなかった。この気配と魔力は覚えがある。見えないのを承知で笑みを作って向き直った。
闇で手足を拘束し、逃げられぬ状態の刺客へ優し気な声をかける。
「声は封じなかったが、答えられぬか? ――オリヴィエラ」
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