【完結】魔王なのに、勇者と間違えて召喚されたんだが?

綾雅(りょうが)今年は7冊!

文字の大きさ
95 / 438
第4章 愚王の成れの果て

93.滅びも美しくありたいものだ

しおりを挟む
 崩れる城の中で、悲鳴を上げて逃げ回る。王侯貴族は己が優先されるべき命だと勘違いしている者が多く、傲慢にして愚かな行動を恥じることがない生き物だった。城に勤める者達を押しのけ、我先にと助かる方法を模索する。

 手にじゃらじゃらと嵌めた指輪をちらつかせ、捉まえた侍女に逃げ道を尋ねた。王族が使う脱出用の通路を探す者……右往左往する人間の醜さを露呈する王宮内は、愚者の品評会のようだった。

「おい、私を逃がせ」

「逃亡用の抜け道はどこだ!」

「王がいないぞ」

 貴族達がざわめく中、黒銀の鱗を煌めかせるドラゴンは遠慮なく城を壊す。体当たりして漆喰塗りの壁を壊し、立ち上がった前足の爪と体重を利用して屋根をつぶした。思うまま壊しても構わない状況は、リリアーナにとって本領発揮の場だ。

 ぐおおお! 一鳴きしたドラゴンのブレスが後宮を焼き払う。痛みを感じる間もなく消滅させた場に、わずかな灰が降った。権威を示す高い塔を尻尾の一振りでなぎ倒す。脅威でしかないドラゴンの巨体に、雨のように矢が射かけられた。それらを鱗ではじき、黒竜は機嫌よく吠える。

 ぐしゃりと潰した屋根の下に人がいようと、倒した壁が誰かの手足を挟もうと、彼女には関係なかった。魔族とは本来他者の迷惑など考えない。自分がしたいままに行動し、気に入らなければ力づくで止めるのが当たり前だった。

 リリアーナを止めることが出来る実力者であるサタンが黙っている以上、何もしても許される――魔族流の考え方であり、ひとつの真実だ。

 ドラゴンが楽しそうに壊す積木細工の城を、遠目に眺めながらオレは空中に腰掛けた。椅子を取り出す手間を省いた行為に何を思ったか、グリフォンが自分の背に乗るよう誘う。大きな獅子の胴にまたがると、鷲の羽を羽ばたかせたオリヴィエラは得意げに咆哮を放った。

 応じるように遠吠えした狼の群れは、都の死骸を避けて中に入り込んでいく。都の人間が城壁や建物の上階に逃げ込む騒ぎの中、わき目も振らずマルコシアスが城へ向かった。マーナガルムは後ろに続く群れに指示を出しながら、街の構造を把握にかかる。

 役割分担も指揮の統一もなされた魔狼の群れは、人間の兵士より役立つ。彼らの評価を上げながら、足元の騒動を無感動に眺めた。

 兵士一万人の死体は、グリュポスだけでない人間の国々へのけん制だ。王の不在に宣戦布告の手順を踏まず、不当に侵略した行為への返礼だった。今回の侵攻は、彼らがオレの和解案を蹴ったことへの報復となる。

 素直に金銭で解決すればよかったのに……愚かにも金を惜しんだ。この国の民がまともであれば、王族の決断に反旗を翻す者が出るかとオリヴィエラを偵察に出したが、彼らは王の愚かな判断を支持した。他国に侵略した王を支持するなら、民も相応の対価を支払うが道理。

 交渉の余地は与えた。彼らが身銭を切り痛みを分かち合うなら、人的被害をゼロでグリュポスを滅ぼすつもりでいたが……グリュポスはオレに弓引くことを選んだ。

 知らぬでは済まない。逆らえなかったと言い逃れることも許さない。自分たちが虐げる相手の痛みを気にせず踏みにじる以上、その痛みが返されたら甘んじて受けるが世の習いだ。

 弱肉強食――強者であれば非道な振る舞いも正当化されるが、己が常に強者でなければ淘汰される掟だった。庇護を求める弱者を懐に入れるも、殲滅させるも強者の胸一つ。それが嫌なら知恵を使って成り上がるなり、他の強者の庇護下にはいればいい。弱者であっても生き残る術は残されていた。

 人間だけがその掟を無視して、弱者を頂点に立てて強者に歯向かう。ならば……人間という種族自体を弱者として淘汰する権利が、魔族に与えられているはずだ。

 この国の民に滅びる王族の象徴たる城を見せつけ、それでも立場を弁えず恭順を示さぬなら、望みどおりに滅ぼしてやろう。

「滅びも美しくありたいものだ」

 醜くあがく足元の蟻を嘲笑う皮肉は、誰の耳にも届かぬまま風に溶けた。
しおりを挟む
感想 177

あなたにおすすめの小説

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。 追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。 追記2:ひとまず完結しました!

外れスキル《コピー》を授かったけど「無能」と言われて家を追放された~ だけど発動条件を満たせば"魔族のスキル"を発動することができるようだ~

空月そらら
ファンタジー
「鑑定ミスではありません。この子のスキルは《コピー》です。正直、稀に見る外れスキルですね、何せ発動条件が今だ未解明なのですから」 「何てことなの……」 「全く期待はずれだ」 私の名前はラゼル、十五歳になったんだけども、人生最悪のピンチに立たされている。 このファンタジックな世界では、15歳になった際、スキル鑑定を医者に受けさせられるんだが、困ったことに私は外れスキル《コピー》を当ててしまったらしい。 そして数年が経ち……案の定、私は家族から疎ましく感じられてーーついに追放されてしまう。 だけど私のスキルは発動条件を満たすことで、魔族のスキルをコピーできるようだ。 そして、私の能力が《外れスキル》ではなく、恐ろしい能力だということに気づく。 そんでこの能力を使いこなしていると、知らないうちに英雄と呼ばれていたんだけど? 私を追放した家族が戻ってきてほしいって泣きついてきたんだけど、もう戻らん。 私は最高の仲間と最強を目指すから。

【完】転職ばかりしていたらパーティーを追放された私〜実は88種の職業の全スキル極めて勇者以上にチートな存在になっていたけど、もうどうでもいい

冬月光輝
ファンタジー
【勇者】のパーティーの一員であったルシアは職業を極めては転職を繰り返していたが、ある日、勇者から追放(クビ)を宣告される。 何もかもに疲れたルシアは適当に隠居先でも見つけようと旅に出たが、【天界】から追放された元(もと)【守護天使】の【堕天使】ラミアを【悪魔】の手から救ったことで新たな物語が始まる。 「わたくし達、追放仲間ですね」、「一生お慕いします」とラミアからの熱烈なアプローチに折れて仕方なくルシアは共に旅をすることにした。 その後、隣国の王女エリスに力を認められ、仕えるようになり、2人は数奇な運命に巻き込まれることに……。 追放コンビは不運な運命を逆転できるのか? (完結記念に澄石アラン様からラミアのイラストを頂きましたので、表紙に使用させてもらいました)

お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~

志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」 この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。 父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。 ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。 今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。 その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。

地獄の手違いで殺されてしまったが、閻魔大王が愛猫と一緒にネット環境付きで異世界転生させてくれました。

克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作、面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります! 高橋翔は地獄の官吏のミスで寿命でもないのに殺されてしまった。だが流石に地獄の十王達だった。配下の失敗にいち早く気付き、本来なら地獄の泰広王(不動明王)だけが初七日に審理する場に、十王全員が勢揃いして善後策を協議する事になった。だが、流石の十王達でも、配下の失敗に気がつくのに六日掛かっていた、高橋翔の身体は既に焼かれて灰となっていた。高橋翔は閻魔大王たちを相手に交渉した。現世で残されていた寿命を異世界で全うさせてくれる事。どのような異世界であろうと、異世界間ネットスーパーを利用して元の生活水準を保証してくれる事。死ぬまでに得ていた貯金と家屋敷、死亡保険金を保証して異世界で使えるようにする事。更には異世界に行く前に地獄で鍛錬させてもらう事まで要求し、権利を勝ち取った。そのお陰で異世界では楽々に生きる事ができた。

追放された最強ヒーラーは、美少女令嬢たちとハーレム生活を送る ~公爵令嬢も義妹も幼馴染も俺のことを大好きらしいので一緒の風呂に入ります~

軽井広@北欧美少女 書籍化!
ファンタジー
白魔道師のクリスは、宮廷魔導師団の副団長として、王国の戦争での勝利に貢献してきた。だが、国王の非道な行いに批判的なクリスは、反逆の疑いをかけられ宮廷を追放されてしまう。 そんなクリスに与えられた国からの新たな命令は、逃亡した美少女公爵令嬢を捕らえ、処刑することだった。彼女は敵国との内通を疑われ、王太子との婚約を破棄されていた。だが、無実を訴える公爵令嬢のことを信じ、彼女を助けることに決めるクリス。 クリスは国のためではなく、自分のため、そして自分を頼る少女のために、自らの力を使うことにした。やがて、同じような境遇の少女たちを助け、クリスは彼女たちと暮らすことになる。 一方、クリスのいなくなった王国軍は、隣国との戦争に負けはじめた……。

神眼の鑑定師~女勇者に追放されてからの成り上がり~大地の精霊に気に入られてアイテム作りで無双します

すもも太郎
ファンタジー
 伝説級勇者パーティーを首になったニースは、ギルドからも放逐されて傷心の旅に出る。  その途中で大地の精霊と運命の邂逅を果たし、精霊に認められて加護を得る。  出会った友人たちと共に成り上がり、いつの日にか国家の運命を変えるほどの傑物となって行く。  そんなニースの大活躍を知った元のパーティーが追いかけてくるが、彼らはみじめに落ちぶれて行きあっという間に立場が逆転してしまう。  大精霊の力を得た鑑定師の神眼で、透視してモンスター軍団や敵国を翻弄したり、創り出した究極のアイテムで一般兵が超人化したりします。  今にも踏み潰されそうな弱小国が超大国に打ち勝っていくサクセスストーリーです。  ※ハッピーエンドです

処理中です...