221 / 438
第8章 強者の元に集え
219.口を割らぬなら引き裂くまで
しおりを挟む
術など知らぬ――白を切るウラノスの言い分に、口元が歪んだ。笑みを作るオレに、興味深そうな表情でウラノスが首をかしげる。何も知らぬと嘯く吸血種へ、魔力が絡み付いた。拘束する魔力が反発する激痛に、ウラノスの額に汗が滲む。
「口を割らぬなら、それも良い。わかっているであろう」
裏切り者の末路は悲惨だ。
ウラノスは忠誠を口にしながら知識を隠した。オレが必要とする知識であると知りながら、クリスティーヌにしか扱えぬような口振りで誤魔化す。そこに滲む違和感を見逃してきたが、もう目を瞑ってやれる期間は過ぎた。
吸血種特有の秘儀ならば、無理に掘り起こすことはしない。だがこの魔術は他種族でも使える。根拠は、アースティルティトだった。吸血鬼の始祖である彼女が仮死状態を作り出したが、術の解除に特殊な種族や能力が必要ならば彼女は告げる。
有能な彼女が何も指示せずアナトを送った行為は、こちら側で解除する方法はさほど複雑ではなく、準備が不要だと判断したためだ。多少先走ったため、説明書より先にアナトが届いた可能性はある。空間と時間軸が狂った異世界への転送で、手順が逆になった可能性もあった。
それでも、ウラノスは隠したのだ。吸血種であるクリスティーヌしか扱えぬような口振りだが、そもそも当人が吸血種だった。自ら術の解除を施せばいい。それをハーフであるクリスティーヌに行わせたのは、失敗する可能性を考慮したため。
己が断罪される失敗を恐れたとも、失敗することを望んだとも取れた。どちらでも構わぬ。じわりと黒い魔力が少年を包んだ。首を絞め、手足の自由を奪い、魔力を搾り取る。
歯を食いしばるウラノスは、言葉を発しようとしない。誰かの命令であったのか、そんな裏話に興味はなかった。
アナトが今も動けないのは、仮死からの復元が中途半端だったから。そう仮定するなら、神族ではないククルが転送されたら死んだだろう。解除が不完全な理由を突き詰めれば、ウラノスの存在に行き着く。
魔術を使うために必要な魔力量を保有し、知識も技術も持ち得る存在が、複雑な魔術に手をこまねく理由――復活されては困るのだ。たどり着いてしまえば、後は当事者次第だった。
大人しくミスを認めて謝るなら、生かしてもいい。手元で飼い殺す程度の度量は持ち合わせているつもりだ。しかし逆らうなら……気遣う必要はあるまい?
「我が君、魔王陛下にお願いがございます」
無言で視線を向ける。指先を動かすこともなく思念だけで操る魔力は、ウラノスの指を1本ずつ潰しているところだった。末端から少しずつ、すり潰すように……痛みと苦しみに泣き叫び、許しを懇願するまで。それが魔族の拷問だ。
邪魔をするなら、獲物が1匹から2匹に増えるだけの話と笑った。銀の小蝿1匹始末するも、黒銀の蜥蜴が増えるも大した手間ではない。
「申してみよ」
くつりと喉を鳴らして促す先で、ウラノスの潰れた指が引き千切られた。激痛に身を捩るも、拘束により引き戻されたウラノスの呼吸音だけが地下牢に響き渡る。
顔を歪めた黒竜王アルシエルは、賭けに近い提案を口にした。それが招く誤解を恐れることなく……。
「口を割らぬなら、それも良い。わかっているであろう」
裏切り者の末路は悲惨だ。
ウラノスは忠誠を口にしながら知識を隠した。オレが必要とする知識であると知りながら、クリスティーヌにしか扱えぬような口振りで誤魔化す。そこに滲む違和感を見逃してきたが、もう目を瞑ってやれる期間は過ぎた。
吸血種特有の秘儀ならば、無理に掘り起こすことはしない。だがこの魔術は他種族でも使える。根拠は、アースティルティトだった。吸血鬼の始祖である彼女が仮死状態を作り出したが、術の解除に特殊な種族や能力が必要ならば彼女は告げる。
有能な彼女が何も指示せずアナトを送った行為は、こちら側で解除する方法はさほど複雑ではなく、準備が不要だと判断したためだ。多少先走ったため、説明書より先にアナトが届いた可能性はある。空間と時間軸が狂った異世界への転送で、手順が逆になった可能性もあった。
それでも、ウラノスは隠したのだ。吸血種であるクリスティーヌしか扱えぬような口振りだが、そもそも当人が吸血種だった。自ら術の解除を施せばいい。それをハーフであるクリスティーヌに行わせたのは、失敗する可能性を考慮したため。
己が断罪される失敗を恐れたとも、失敗することを望んだとも取れた。どちらでも構わぬ。じわりと黒い魔力が少年を包んだ。首を絞め、手足の自由を奪い、魔力を搾り取る。
歯を食いしばるウラノスは、言葉を発しようとしない。誰かの命令であったのか、そんな裏話に興味はなかった。
アナトが今も動けないのは、仮死からの復元が中途半端だったから。そう仮定するなら、神族ではないククルが転送されたら死んだだろう。解除が不完全な理由を突き詰めれば、ウラノスの存在に行き着く。
魔術を使うために必要な魔力量を保有し、知識も技術も持ち得る存在が、複雑な魔術に手をこまねく理由――復活されては困るのだ。たどり着いてしまえば、後は当事者次第だった。
大人しくミスを認めて謝るなら、生かしてもいい。手元で飼い殺す程度の度量は持ち合わせているつもりだ。しかし逆らうなら……気遣う必要はあるまい?
「我が君、魔王陛下にお願いがございます」
無言で視線を向ける。指先を動かすこともなく思念だけで操る魔力は、ウラノスの指を1本ずつ潰しているところだった。末端から少しずつ、すり潰すように……痛みと苦しみに泣き叫び、許しを懇願するまで。それが魔族の拷問だ。
邪魔をするなら、獲物が1匹から2匹に増えるだけの話と笑った。銀の小蝿1匹始末するも、黒銀の蜥蜴が増えるも大した手間ではない。
「申してみよ」
くつりと喉を鳴らして促す先で、ウラノスの潰れた指が引き千切られた。激痛に身を捩るも、拘束により引き戻されたウラノスの呼吸音だけが地下牢に響き渡る。
顔を歪めた黒竜王アルシエルは、賭けに近い提案を口にした。それが招く誤解を恐れることなく……。
1
あなたにおすすめの小説
【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます
腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった!
私が死ぬまでには完結させます。
追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。
追記2:ひとまず完結しました!
無能扱いされ、パーティーを追放されたおっさん、実はチートスキル持ちでした。戻ってきてくれ、と言ってももう遅い。田舎でゆったりスローライフ。
さら
ファンタジー
かつて勇者パーティーに所属していたジル。
だが「無能」と嘲られ、役立たずと追放されてしまう。
行くあてもなく田舎の村へ流れ着いた彼は、鍬を振るい畑を耕し、のんびり暮らすつもりだった。
――だが、誰も知らなかった。
ジルには“世界を覆すほどのチートスキル”が隠されていたのだ。
襲いかかる魔物を一撃で粉砕し、村を脅かす街の圧力をはねのけ、いつしか彼は「英雄」と呼ばれる存在に。
「戻ってきてくれ」と泣きつく元仲間? もう遅い。
俺はこの村で、仲間と共に、気ままにスローライフを楽しむ――そう決めたんだ。
無能扱いされたおっさんが、実は最強チートで世界を揺るがす!?
のんびり田舎暮らし×無双ファンタジー、ここに開幕!
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
神眼の鑑定師~女勇者に追放されてからの成り上がり~大地の精霊に気に入られてアイテム作りで無双します
すもも太郎
ファンタジー
伝説級勇者パーティーを首になったニースは、ギルドからも放逐されて傷心の旅に出る。
その途中で大地の精霊と運命の邂逅を果たし、精霊に認められて加護を得る。
出会った友人たちと共に成り上がり、いつの日にか国家の運命を変えるほどの傑物となって行く。
そんなニースの大活躍を知った元のパーティーが追いかけてくるが、彼らはみじめに落ちぶれて行きあっという間に立場が逆転してしまう。
大精霊の力を得た鑑定師の神眼で、透視してモンスター軍団や敵国を翻弄したり、創り出した究極のアイテムで一般兵が超人化したりします。
今にも踏み潰されそうな弱小国が超大国に打ち勝っていくサクセスストーリーです。
※ハッピーエンドです
外れスキル《コピー》を授かったけど「無能」と言われて家を追放された~ だけど発動条件を満たせば"魔族のスキル"を発動することができるようだ~
空月そらら
ファンタジー
「鑑定ミスではありません。この子のスキルは《コピー》です。正直、稀に見る外れスキルですね、何せ発動条件が今だ未解明なのですから」
「何てことなの……」
「全く期待はずれだ」
私の名前はラゼル、十五歳になったんだけども、人生最悪のピンチに立たされている。
このファンタジックな世界では、15歳になった際、スキル鑑定を医者に受けさせられるんだが、困ったことに私は外れスキル《コピー》を当ててしまったらしい。
そして数年が経ち……案の定、私は家族から疎ましく感じられてーーついに追放されてしまう。
だけど私のスキルは発動条件を満たすことで、魔族のスキルをコピーできるようだ。
そして、私の能力が《外れスキル》ではなく、恐ろしい能力だということに気づく。
そんでこの能力を使いこなしていると、知らないうちに英雄と呼ばれていたんだけど?
私を追放した家族が戻ってきてほしいって泣きついてきたんだけど、もう戻らん。
私は最高の仲間と最強を目指すから。
地獄の手違いで殺されてしまったが、閻魔大王が愛猫と一緒にネット環境付きで異世界転生させてくれました。
克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作、面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります!
高橋翔は地獄の官吏のミスで寿命でもないのに殺されてしまった。だが流石に地獄の十王達だった。配下の失敗にいち早く気付き、本来なら地獄の泰広王(不動明王)だけが初七日に審理する場に、十王全員が勢揃いして善後策を協議する事になった。だが、流石の十王達でも、配下の失敗に気がつくのに六日掛かっていた、高橋翔の身体は既に焼かれて灰となっていた。高橋翔は閻魔大王たちを相手に交渉した。現世で残されていた寿命を異世界で全うさせてくれる事。どのような異世界であろうと、異世界間ネットスーパーを利用して元の生活水準を保証してくれる事。死ぬまでに得ていた貯金と家屋敷、死亡保険金を保証して異世界で使えるようにする事。更には異世界に行く前に地獄で鍛錬させてもらう事まで要求し、権利を勝ち取った。そのお陰で異世界では楽々に生きる事ができた。
追放貴族少年リュウキの成り上がり~魔力を全部奪われたけど、代わりに『闘気』を手に入れました~
さとう
ファンタジー
とある王国貴族に生まれた少年リュウキ。彼は生まれながらにして『大賢者』に匹敵する魔力を持って生まれた……が、義弟を溺愛する継母によって全ての魔力を奪われ、次期当主の座も奪われ追放されてしまう。
全てを失ったリュウキ。家も、婚約者も、母の形見すら奪われ涙する。もう生きる力もなくなり、全てを終わらせようと『龍の森』へ踏み込むと、そこにいたのは死にかけたドラゴンだった。
ドラゴンは、リュウキの境遇を憐れみ、ドラゴンしか使うことのできない『闘気』を命をかけて与えた。
これは、ドラゴンの力を得た少年リュウキが、新しい人生を歩む物語。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる