【完結】魔王なのに、勇者と間違えて召喚されたんだが?

綾雅(りょうが)今年は7冊!

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第10章 覇王を追撃する闇

325.わかった、責任を取ってやる

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 マントを掴んで抗議するリリアーナが、大声で泣き出した。泣きながら何か叫んでいるが、言葉にならない。仕方なく座り直して手を伸ばした。引きずって移動するわけにもいかないだろう。苛立ちゆえに、少し乱暴な所作で頭を撫でて引き寄せた。

 ずるずると這うように近づき、鼻を啜るリリアーナはオレの顔色を窺い、膝の上に頭を乗せる。膝立ちの姿勢は辛いだろうと抱き起こそうとすれば、アスタルテが声をあげた。

「陛下! その手を伸ばす意味をお分かりか?」

「疲れる姿勢をそのままにしろと?」

 どこまでも平行線で交わらない会話に、アガレスが口を挟む。厄介ごとを上手に避ける男にしては珍しい行動だった。

「陛下がリリアーナ嬢を娶るおつもりなら、何も申しません。未婚女性を抱き寄せる意味をご理解ください。彼女はすでに指輪や装身具を賜り、陛下のご寵愛を賜る女性とみなされております」

 先ほどアスタルテも「婚期にかかわる」と言った。つまり、このままリリアーナをそばに置くと、彼女が嫁にいけなくなるのか。愛玩動物として100年ほど飼うつもりであったが……。

 視線を向けると、リリアーナは嬉しそうに笑った。頭を撫でる手に頬を緩める姿は可愛いが……手放す時期なのだろう。仕方あるまい、皆が進言するなら、間違っているのはオレだ。

「わかった。リリアーナを手放せと申すのだな」

「「「違う!!」」」

 少女姿に戻ったククルに、双子神も声を重ねた。全力で否定され、きょとんとしてしまう。何が間違っている? 側に置くと嫁にいけぬと進言したのは、お前達ではないか。

 驚いた顔をしたオレは、昔のやりとりを思い出した。アナトやバアルを拾った時も、アスタルテに注意された。ククルの時は呆れた様子ながら受け入れた。その違いは何か。まったく状況が理解できなかった。

 これが戦場なら命取りだ。そんな考えが顔に出たらしく、アスタルテが砕いて言い直した。

「リリアーナは陛下の妻になりたいのです。わかりますか? その子を隣に置いて可愛がるなら、ペットではなく恋人です。将来を誓う気がないのであれば、早めに彼女を解放すべきでしょう」

 誤解や勘違いが発生しないよう、きっちり言葉を選んだ側近を見つめる。妻――僅か数十年しか生きていない、この赤子同然の娘が? 

 必死でしがみつくリリアーナは、くしゃくしゃの顔でオレの膝に頬を寄せる。いじらしく愛らしいと思うが、それが妻となると話は別だった。愛玩動物とは飼っている間に、妻に進化するのか? そんな話は聞いていない。

「責任、とって」

 しゃくりあげながら、リリアーナは赤く染まった頬でそう告げる。心当たりがあった。初対面のあの日の、尻尾を掴んで裏返す行為だ。あれは夫となる雄が雌に対し、力でねじ伏せて襲い掛かる所作だった。力を重視する竜ならば、雄にひっくり返された雌が服従するのも理解できる。

 壊れた噴水を確認する際に、人前で彼女を辱めてしまった事実を思い出し、額を押さえた。確かに責任を取るべき事案だろう。

「わかった。責任を取ってやる」
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