【完結】魔王なのに、勇者と間違えて召喚されたんだが?

綾雅(りょうが)今年は7冊!

文字の大きさ
391 / 438
第11章 戦より儘ならぬもの

388.繋がりは持っておりません

しおりを挟む
 斥候に出たエルフが戻らない。その上奇妙な噂が流れてきた。

 巨大な銀狼であるマルコシアスに与えられたという、元グリュポス跡地で大捕物があった。魔王サタン自身が出向き、敵を捕獲した話だ。あっという間に広がった噂は、目撃者も多数いた。

 人間達の間でも同様の噂が広がり、決起した魔族の結束を揺るがす。元から魔族に団結力はない。強者は自分の好きに振る舞い、弱者は強者におもねり生き残ろうとした。それゆえに協力体制は壊れやすい。

 自分の利益や想いに反すると思えば、強者はすぐに離反する。弱者は右往左往するものの、基本的に役に立たなかった。戦力として数えることが出来ないから、弱者に分類されるのだ。

「どうします?」

「夢魔の魔王様もあちらにいると……」

「その話は本当か?」

「ええ。目撃したのは俺の部下です」

 夢魔も黒竜王も向こうについた。この状態で、吸血鬼王だったウラノスが確認されている。元魔王と先代魔王、彼らに並ぶ実力者が向こうについたとなれば――勝てる要素がなかった。

「まずいな」

 敵の強さもだが、このままでは味方が分裂してしまう。苦労して説得し、集めた連中だ。魔王位を異世界の魔王から取り戻す目的を掲げた集団が、空中分解してしまう。

 男にとってそれは許されない事態だった。自らが魔王になれると思った訳ではない。主君のために集めた手勢だった。もしこの作戦が失敗したら……主君に迷惑をかけてしまう。

 魔王を名乗る実力者サタンは、黒竜王以外にも黒竜を支配し、吸血種を複数所有し、ハイエルフやユニコーンも従えていた。反撃されたら、こちらに勝ち目はない。だからこそ搦手で足元を掬うつもりだった。

 人間の国を治めるという遊びに興じている間に、彼らのバランスを崩そうとした。やたら強いが種族不明の双子だけでも、取り込めたら……そんな思惑で手を出したのだ。実際には接触が難しく、サタンの評判を落とす方向へ変更されたのだが。

 まさかこのような形で戻ってくると思わなかった。焦る男は、奪った金銭や物品を入れた箱を地中深くに埋める。証拠が発見されなければ、のらりくらりと逃げればいい。片付けてほっとした男は、主君の元へ足を運んだ。

「お前、この件に絡んでないだろうな」

 念を押す主に膝をつき、笑顔でかわした。主君に偽りを口にするのは義に反する。だが真実を話すことは出来なかった。

「ご心配には及びません。持っておりません」

 関与の証拠はすでに手元から片付けた。自分が絡んだことを知る部下もいない。囚われたエルフから辿ろうにも途中で死人を介するため、一切の繋がりは切れていた。

 嘘をつかず上手に誤魔化し、男は主君に頭を下げる。平伏した部下に注ぐ主君の眼差しは、疑いを孕むが咎める証拠がなかった。

「まあいいさ。勝手にしろ」
しおりを挟む
感想 177

あなたにおすすめの小説

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。 追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。 追記2:ひとまず完結しました!

外れスキル《コピー》を授かったけど「無能」と言われて家を追放された~ だけど発動条件を満たせば"魔族のスキル"を発動することができるようだ~

空月そらら
ファンタジー
「鑑定ミスではありません。この子のスキルは《コピー》です。正直、稀に見る外れスキルですね、何せ発動条件が今だ未解明なのですから」 「何てことなの……」 「全く期待はずれだ」 私の名前はラゼル、十五歳になったんだけども、人生最悪のピンチに立たされている。 このファンタジックな世界では、15歳になった際、スキル鑑定を医者に受けさせられるんだが、困ったことに私は外れスキル《コピー》を当ててしまったらしい。 そして数年が経ち……案の定、私は家族から疎ましく感じられてーーついに追放されてしまう。 だけど私のスキルは発動条件を満たすことで、魔族のスキルをコピーできるようだ。 そして、私の能力が《外れスキル》ではなく、恐ろしい能力だということに気づく。 そんでこの能力を使いこなしていると、知らないうちに英雄と呼ばれていたんだけど? 私を追放した家族が戻ってきてほしいって泣きついてきたんだけど、もう戻らん。 私は最高の仲間と最強を目指すから。

能力『ゴミ箱』と言われ追放された僕はゴミ捨て町から自由に暮らすことにしました

御峰。
ファンタジー
十歳の時、貰えるギフトで能力『ゴミ箱』を授かったので、名門ハイリンス家から追放された僕は、ゴミの集まる町、ヴァレンに捨てられる。 でも本当に良かった!毎日勉強ばっかだった家より、このヴァレン町で僕は自由に生きるんだ! これは、ゴミ扱いされる能力を授かった僕が、ゴミ捨て町から幸せを掴む為、成り上がる物語だ――――。

地獄の手違いで殺されてしまったが、閻魔大王が愛猫と一緒にネット環境付きで異世界転生させてくれました。

克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作、面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります! 高橋翔は地獄の官吏のミスで寿命でもないのに殺されてしまった。だが流石に地獄の十王達だった。配下の失敗にいち早く気付き、本来なら地獄の泰広王(不動明王)だけが初七日に審理する場に、十王全員が勢揃いして善後策を協議する事になった。だが、流石の十王達でも、配下の失敗に気がつくのに六日掛かっていた、高橋翔の身体は既に焼かれて灰となっていた。高橋翔は閻魔大王たちを相手に交渉した。現世で残されていた寿命を異世界で全うさせてくれる事。どのような異世界であろうと、異世界間ネットスーパーを利用して元の生活水準を保証してくれる事。死ぬまでに得ていた貯金と家屋敷、死亡保険金を保証して異世界で使えるようにする事。更には異世界に行く前に地獄で鍛錬させてもらう事まで要求し、権利を勝ち取った。そのお陰で異世界では楽々に生きる事ができた。

神眼の鑑定師~女勇者に追放されてからの成り上がり~大地の精霊に気に入られてアイテム作りで無双します

すもも太郎
ファンタジー
 伝説級勇者パーティーを首になったニースは、ギルドからも放逐されて傷心の旅に出る。  その途中で大地の精霊と運命の邂逅を果たし、精霊に認められて加護を得る。  出会った友人たちと共に成り上がり、いつの日にか国家の運命を変えるほどの傑物となって行く。  そんなニースの大活躍を知った元のパーティーが追いかけてくるが、彼らはみじめに落ちぶれて行きあっという間に立場が逆転してしまう。  大精霊の力を得た鑑定師の神眼で、透視してモンスター軍団や敵国を翻弄したり、創り出した究極のアイテムで一般兵が超人化したりします。  今にも踏み潰されそうな弱小国が超大国に打ち勝っていくサクセスストーリーです。  ※ハッピーエンドです

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

無能扱いされ、パーティーを追放されたおっさん、実はチートスキル持ちでした。戻ってきてくれ、と言ってももう遅い。田舎でゆったりスローライフ。

さら
ファンタジー
かつて勇者パーティーに所属していたジル。 だが「無能」と嘲られ、役立たずと追放されてしまう。 行くあてもなく田舎の村へ流れ着いた彼は、鍬を振るい畑を耕し、のんびり暮らすつもりだった。 ――だが、誰も知らなかった。 ジルには“世界を覆すほどのチートスキル”が隠されていたのだ。 襲いかかる魔物を一撃で粉砕し、村を脅かす街の圧力をはねのけ、いつしか彼は「英雄」と呼ばれる存在に。 「戻ってきてくれ」と泣きつく元仲間? もう遅い。 俺はこの村で、仲間と共に、気ままにスローライフを楽しむ――そう決めたんだ。 無能扱いされたおっさんが、実は最強チートで世界を揺るがす!? のんびり田舎暮らし×無双ファンタジー、ここに開幕!

処理中です...