ただの平凡田舎男子は勇者な幼馴染と精霊に愛されます。

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その日の夜。
僕はまた深夜にランが寝たあとベッドから抜け出して宿屋の扉前に座っていた。
昨日と少し違うところといえば人が話す声や明日の祭りに向けて屋台のようなものを立てようとしているような音が聞こえることだ。

僕は今日も服の中に隠していた精霊の木の枝を握り話しかける。

「こんばんは。」

「ルイ。今日は色々あったみたいだな。」

「精霊達から聞いたの?」

「あぁ。」


僕が話しかけると早々に少し心配したような探るような感じで話しかけてくる。
どうやらあの二人の精霊達が事前に今日のことを伝えていたらしい。

「明日頑張らなきゃなんだ。」

「無理はするな。」

「優しいね。」

「お前は唯一無二だからな。私たちにとって。」

「唯一無二…。」
(そのことも知ってんのか。)

「捕まってしまった精霊達も心配だがルイに何かがある方が私たちにとっては辛い。」

「…うん。」

「だから絶対無理はするな。約束だ。」

「わかった。」

「何かあれば私が助けに行こう。」

「ふふっ。うん!」

精霊達は仲間を大切にするためきっと今回のことを聞いて僕が心配するよりずっと精霊のことが心配なはずなのに精霊の木は僕のことを心配してくれる。
僕はそんな優しさをしっかりと受け止めた。そのあとは少しだけ雑談をする。昨日と何も変わらないが何故か少しだけ勇気を貰ったような気がした。

お休みを言い合い少し空を見上げて見る。
雪祭りは雪が降る日に合わせて行われる。ということは明日はきっと雪が降るのだろう。
昨日よりも冷たい空気が流れていた。

「唯一無二か…。」

誰かの唯一になれることはこんなにも嬉しいものなのだなと空を見ながら思う。
なんの取り柄もない僕のことを好きだと、大切だと言ってくれる精霊達は僕にとってとても大切な存在だった。そんな彼らから唯一だと言われるのは僕が僕であっていいと言って貰えてるような気がした。

でも僕の中の唯一は出会った時からずっとランだ。
もちろん精霊たちも大切だけれどそれとは違う、
会いたい、触れたい、触れられたい、声が聞きたい、名前を呼んで欲しい、僕を…僕をランの唯一にして欲しい。
一見ただの可愛い恋心のようなこの感情は僕の中ではドロドロでそんな感情を向ける相手が勇者というこの世界の唯一無二の存在なのが僕の中にどうしようもない罪悪感を募らせる。

(ランの僕へ向けられた感情は勘違いだもんね…。)

だからランが僕の町へ帰ってきてから今日までずっと好きだと大切だと伝えてくれていることはとても嬉しかったがそれはずっと一緒にいて急に離れ離れになった『寂しい』の感情が変にこじれたものだと思うのだ。

馴染みのある家と町、そして人がいない環境できっとやりたいことなんてほぼさせて貰えなかった勇者時代はランの中の感情が変な方向へ行く条件を満たすにはあまりにもいい環境だっただろう。

(だめだめ。夜は感傷に浸りすぎちゃうや。)

「ルイ。」

「あれ?ラン。ごめん今日も起こしちゃった?」

「ううん。大丈夫。」
「昨日とは街の雰囲気違うけどこれもいいね。」

「うん。」

僕がいないことに気づき昨日と同じく探しに来たのだろうランが宿屋の扉を開け僕の隣へ腰掛ける。ランは大通りの方へと目をやると微笑みながら呟いた。ここから大通りが見えはしないがお祭り前の独特な雰囲気は何となく伝わってきた。

「ルイ。少しだけ目をつぶって?」

「え?」

「ん~と。よしっ。」
「目開けて?」

ランとそんな雰囲気をゆっくりと感じながら静かに深呼吸をする。そしてその後僕に目をつぶるように言ってきた。
僕は驚きながらも言われた通り目をつぶるとらんが僕の後ろへとまわって来る。
そして肩と首のところでゴソゴソ何かをしたかと思へばトンッと軽く肩を叩き目を開けるように言ってきた。

「もういいの…?」

「ルイ少し目線下げてみて?」

「…っえ!これって…」

「プレゼント。」

目を開け何か変わったのかと少し周りをきょろきょろするとランは優しく声をかけてきた。そして目線を下げてみるとそこには今日の昼に見た宝石店のネックレスが付けられていた。
嬉しいよりも驚きが勝ち少し思考が止まる。

「え、でもこれっ!」

「俺の目の色のネックレス。俺がルイに持ってて欲しくて。」

「…っ!自分で渡しておいて照れないでよ…。」

「ごめんごめん。」

これ高かったでしょうと言おうとして目線をランへと向けるとそこには夜のお陰で紅くなってるかは分からないもののものすごく照れたような表情で僕を見つめるランがいた。
人は人が照れるとつられるものなのか僕もそんなランにつられてぶわっと体温が上がるのがわかる。

今日はずっと一緒に街を回っていたからいつ買ってきたのだろうか。

(そういえば宿屋に着いてから30分くらい部屋にいなかった時間があったな。)
(相当勇気いっただろうなぁ。)

こういうサプライズが得意な方ではないはずなのに僕のために頑張ってくれているランが思い浮かんでとても愛おしく思える。

初めは申し訳なさ過ぎて貰えないと返そうかとも思った。きっとこれを買えるお金を僕が稼ごうとすると5、6年はかかる気がする。いやもっとか。
でもそんなことよりも僕のために頑張ってくれたランを思うと申し訳ないという理由でネックレスを返すのは違う気がした。

「ありがとう。大切にする。」

「うん。ずっと付けててね?」

「ふふっ。わかった。」
「…。」

「部屋へ戻ろう。」

「うん。」

小さく存在感を出すそのネックレスは月のあかりに照らされてキラキラ輝いている。

そんなネックレスを少しだけ眺めたあと僕たちは宿屋へと入っていった。

僕の唯一から貰った僕の一番好きな色のネックレス。
僕はきっとずっと大切にするものだと思う。
もしも僕の隣から君が居なくなってもそれはきっと変わらないのだ。

少し冷たくなった体を温めるように僕達は2人ベッドへと戻っていく。
今日は昨日よりもいい夢が見られそうな気がした。


o,+:。☆.*・+。o,+:。☆.*・+。o,+:。☆.*・+。o,+:。☆.*・+。

王都編で精霊の木がついに…!!という予定です。
はぁ。やっとだ長かった。
王都編が落ち着いてきたらそろそろルイくんには2人が大きな愛をぶつけに行きますかね。
その頃からランsideもスタートです!

私の中にいる2人がうずうずしてしょうがないので笑


ここまで支離滅裂なお話を根気強く読んで頂きありがとうございます!
これからもゆっくりな進み方ですがよろしくお願いします!
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