今夜、オオカミの夢を見る

闇からの訪問者②

「あなたを、愛してる。誰よりも。——あなたを愛することができるのは、わたしだけ…」
「……」
その声は、いつも甘い。底なしに。
そして、応じたが最後、行きつく先は地獄だろう。
己に呪いをかけたのも、この女ならば、解くことができるのも、この女ただ一人。
しかし―。
「…どうしたの？なぜなの、ルシウス？」
「……」
「さぁ、口づけを…。わたしの、あなた。醜いあなた。他の誰が、あなたを愛するというの？かわいそうな、あなた…」
彼女は、芯から、男を憐あわれんでいるようだった。
ルシウスの顎あごに唇を寄せ、ひとつ、口づけた。
「さぁ、早く。誓って…。お願いよ」
甘く、切なく。
男の耳に、注ぎ込む。
ルシウスは、強く目を閉じた。

「——ルシウス？」

「…っ…」
その声は、小さく。あまりにも小さく。
だが、ルシウスには、それで十分だった。
ロゼーが、目を見開く。
今、世界を破ったのは、誰？
視線をあちこち飛ばす。
見つけた。
みすぼらしい…。いやに整った顔の…。
「お前は、何？…そうよ、お前。子供に用はないわ」
子供、と言われ、その子がムッとする。
ロゼーは、せせら笑った。
いい気味。
大切な時間を邪魔したのだもの。
すぐに、見向きもしなくなる。
ところが、その子供は、黙っていなかった。
「あんたこそ。こんな夜中に、人を叩き起こしといて…、よっぽど常識が無いらしい」
「…なんですって」
その言葉は、彼女の癇かんに障ったらしい。
瞳孔どうこうを乱し、