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猫に自己紹介をする
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ついに朝がやって来た。今日、ぼくはおばあちゃんがいる北海道まで旅をする。まずは両親と羽田空港まで行って、飛行機からは一人で行動する。そして新千歳空港では、おばあちゃんが待ってくれている。わずか1時間半のフライトだけど、一人で飛行機に乗るのは初めてだ。緊張する。
パパが運転する車で、羽田空港の駐車場まで行った。駐車場からターミナルまでは少し遠いので、パパがぶつぶつ文句を言いながら、ぼくの荷物を運ぶ。
パパは事前に航空会社に、「お子様一人旅サポート」を申し込んでいた。だから気楽に行けばいい、と言われたものの、やっぱりちょっと緊張する。
航空会社のカウンターで手続きを済ませ、搭乗口までスタッフに案内してもらう。振り返ると、パパとママが手を振っている。なんだか大袈裟だな、と思いつつ、「お子様一人旅」のお子様としておとなしく振る舞う。
飛行機に乗ると客室乗務員の目に届きやすい後方の座席を案内された。客席が埋まっていき、アナウンスが入る。飛行機は滑走路に出て、そして離陸した。離陸の瞬間、機体が揺れたのでヒヤヒヤしたけど、すぐに安定してホッとする。客室乗務員さんが「大丈夫ですか?」と声を掛けてきてくれる。ぼくは、なんて事ない風を装って、「大丈夫です」とニッコリ返した。
機内にいる間に読もうと思って持ってきた、ぼくの愛読書である「ファーブル昆虫記」を開く。お気に入りのセミのページにはしおりを挟んでおいた。セミの生活、セミの一生、セミは自分の鳴き声が聞こえているのか?なんて面白い疑問にファーブル先生は実験をして答えを出している。北海道は珍しいセミ、いるのかな?
1時間半は、あっという間だった。ぼくは担当してくれた客室乗務員さんに丁重にお礼をして、タラップを降りて行った。
北海道の地に降り立って、ぼくは空気を目一杯吸い込んだ。昼間なので暑いことは暑いけど、カラッとしていて東京と比べたら全然違って過ごしやすい。これぐらいの暑さなら、色んなところに遊びに行ける気がする。
手続きを済ませ、スタッフさんとおばあちゃんが来るのを待つ。
「あっ、おばあちゃん!」
「あちらの方ですか?」
「そうです。ありがとうございました」
「では、よい旅を」
付き添ってくれたスタッフさんに別れを告げ、荷物を引きずりながら、おばあちゃんの元へと向かう。
「おばあちゃん!」
「優斗、久しぶりだねぇ。遠い所まで一人でよく来てくれたね」
「1時間半だし、あっという間だったよ。おばあちゃん、車で来てるの?」
「そうだよ。民宿の送迎用の車で申し訳ないけど。じゃあ行こうか?」
「うん」
ぼくは、車体に「民宿はせがわ」と書かれた車に乗り込んだ。おばあちゃんはアラ還だけど、いつも元気に動き回っている。車の運転も、パパより上手い。
「優斗は何年ぶりかなぁ。ちっちゃかったからあんまり覚えてないのと違う?」
「たぶん、4歳ぐらいだったと思う。池でカエルがすごい大きな声で鳴いててびっくりしたの覚えてる」
「平岡公園かな?春頃にカエルが大合唱するんだよ」
ぼくは窓の外を眺めながら、東京よりも風景が横に長いなぁと思った。緑も多い。1時間ほど車に揺られ、おばあちゃんの家でもある「民宿はせがわ」に到着した。
見た目は普通の家っぽいけど、中は広くて部屋数もたくさんある。
車の音に気がついたのか、両開きの引き戸が開いた。
「いらっしゃい、優斗君」
「あっ、こんにちは路代おばさん」
「こんにちは、久しぶりね」
路代おばさんは、パパの妹で結婚して、おばあちゃんの家のすぐ近所に住んでいる。民宿の仕事も手伝っているらしい。
「あっ、猫!」
路代おばさんは、猫を抱いていた。
「この猫ね、タンタンって言うのよ。不思議な子なんだけど」
タンタンは、ぼくを上から下まで見定めて、「ニャン」と挨拶した。タンタンは、ぼくが何者か知りたがっている?ように思えたので、とりあえず自己紹介することにした。
「タンタン、こんにちは。東京から来た長谷川優斗です。小学5年生、虫の生態に興味があります」
すると路代おばさんが、
「あら、気が合うわね!タンタンも虫が大好きよ。セミなんて、しょっちゅう捕まえて来るんだから」
早速、北海道の地で、セミ友だちが出来た。
パパが運転する車で、羽田空港の駐車場まで行った。駐車場からターミナルまでは少し遠いので、パパがぶつぶつ文句を言いながら、ぼくの荷物を運ぶ。
パパは事前に航空会社に、「お子様一人旅サポート」を申し込んでいた。だから気楽に行けばいい、と言われたものの、やっぱりちょっと緊張する。
航空会社のカウンターで手続きを済ませ、搭乗口までスタッフに案内してもらう。振り返ると、パパとママが手を振っている。なんだか大袈裟だな、と思いつつ、「お子様一人旅」のお子様としておとなしく振る舞う。
飛行機に乗ると客室乗務員の目に届きやすい後方の座席を案内された。客席が埋まっていき、アナウンスが入る。飛行機は滑走路に出て、そして離陸した。離陸の瞬間、機体が揺れたのでヒヤヒヤしたけど、すぐに安定してホッとする。客室乗務員さんが「大丈夫ですか?」と声を掛けてきてくれる。ぼくは、なんて事ない風を装って、「大丈夫です」とニッコリ返した。
機内にいる間に読もうと思って持ってきた、ぼくの愛読書である「ファーブル昆虫記」を開く。お気に入りのセミのページにはしおりを挟んでおいた。セミの生活、セミの一生、セミは自分の鳴き声が聞こえているのか?なんて面白い疑問にファーブル先生は実験をして答えを出している。北海道は珍しいセミ、いるのかな?
1時間半は、あっという間だった。ぼくは担当してくれた客室乗務員さんに丁重にお礼をして、タラップを降りて行った。
北海道の地に降り立って、ぼくは空気を目一杯吸い込んだ。昼間なので暑いことは暑いけど、カラッとしていて東京と比べたら全然違って過ごしやすい。これぐらいの暑さなら、色んなところに遊びに行ける気がする。
手続きを済ませ、スタッフさんとおばあちゃんが来るのを待つ。
「あっ、おばあちゃん!」
「あちらの方ですか?」
「そうです。ありがとうございました」
「では、よい旅を」
付き添ってくれたスタッフさんに別れを告げ、荷物を引きずりながら、おばあちゃんの元へと向かう。
「おばあちゃん!」
「優斗、久しぶりだねぇ。遠い所まで一人でよく来てくれたね」
「1時間半だし、あっという間だったよ。おばあちゃん、車で来てるの?」
「そうだよ。民宿の送迎用の車で申し訳ないけど。じゃあ行こうか?」
「うん」
ぼくは、車体に「民宿はせがわ」と書かれた車に乗り込んだ。おばあちゃんはアラ還だけど、いつも元気に動き回っている。車の運転も、パパより上手い。
「優斗は何年ぶりかなぁ。ちっちゃかったからあんまり覚えてないのと違う?」
「たぶん、4歳ぐらいだったと思う。池でカエルがすごい大きな声で鳴いててびっくりしたの覚えてる」
「平岡公園かな?春頃にカエルが大合唱するんだよ」
ぼくは窓の外を眺めながら、東京よりも風景が横に長いなぁと思った。緑も多い。1時間ほど車に揺られ、おばあちゃんの家でもある「民宿はせがわ」に到着した。
見た目は普通の家っぽいけど、中は広くて部屋数もたくさんある。
車の音に気がついたのか、両開きの引き戸が開いた。
「いらっしゃい、優斗君」
「あっ、こんにちは路代おばさん」
「こんにちは、久しぶりね」
路代おばさんは、パパの妹で結婚して、おばあちゃんの家のすぐ近所に住んでいる。民宿の仕事も手伝っているらしい。
「あっ、猫!」
路代おばさんは、猫を抱いていた。
「この猫ね、タンタンって言うのよ。不思議な子なんだけど」
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