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闇色主人公
あるところに、主人公がいました。
主人公は、温かい家庭で育ち、友達もたくさんいました。
主人公は、明るく誰にでも同じように接していたので、みんなから好かれていました。
主人公の周りは、いつも笑顔で溢れていました。
主人公は、確かに幸せそうに暮らしていました。
しかし、それは主人公の仮の、表面上だけの姿でした。
本当の姿の主人公は、生まれたときからずっと孤独で、寂しくで溜まりませんでした。
1人の夜は、いつも泣いていました。
本当の自分を曝け出すのが怖かったのです。
他人に嫌われるのがとても恐ろしいことだと思っていたのでずっと他人の顔色を窺って生きていました。
それは、物心ついた時からずっとそうでした。
両親に怒られるのがとんでもなく嫌で、いい子を演じていました。
両親に褒められたくて、箸の持ち方はすぐに覚えたし、お漏らしをした事は一度だってありません。
両親の機嫌が悪い日には、絶対に近づかないようにしていました。
逆に機嫌の良い日には、めいいっぱい遊んでもらいました。
いつでも完璧であろうとする子でした。
でも、それは主人公にどんな時も窮屈さを感じさせました。
幼稚園へ入ってもそうでした。
先生や友達に嫌われたくなくて、誰にでもいい顔をしていました。
友達が泥だんごを投げてきても、笑うだけでした。
やり返しはしませんでした。
鞄に昆虫を入れられた時も、びっくりしただけでした。
本当は嫌だったけど、嫌だとは言いませんでした。
先生は、それをみて主人公を褒めてくれました。
主人公は喜びました。
でも、それは本当の自分の姿ではありませんでした。
心から喜ぶことは出来ませんでした。
主人公は訳もわからず泣きました。
小学校へ入って、平仮名や足し算を勉強するようになりました。
主人公は優等生であるために、必死で平仮名を書き続けました。
あ、い、う、.....わ、を、んまで1日百字ずつ書きました。
そのノートを先生に見せると、先生はとても喜んで、嬉しそうにクラスの子にお手本として見せました。
友達は「すごいね!」と褒めてくれました。
主人公はとても誇らしい気持ちになりました。
でも、それは本当に誇らしくはありませんでした。
主人公はなんだか虚しくなって泣きました。
高学年になり、勉強はだんだん難しくなっていきました。
主人公は諦めずに勉強に励みました。
人の悪口を言う子が多くなってきました。
「〇〇うざい」
「〇〇嫌い」
そういう話を、よく聞くようになりました。
主人公は誰からも好かれる子でいるために、悪口なんか知らない、無邪気な子を演じていました。
友達は呆れていたけれど、気づかないフリをして、ひたすら笑顔で耐えていました。
そのうち、主人公の前ではみんな悪口を言わなくなりました。
主人公は、達成感がありました。
でもそれは、自分の中の正義ではなく、ただ嫌われないための正義でした。
主人公は、陰でみんなが自分の悪口を言っていることを知りました。
主人公は何が正義か分からなくなって泣きました。
中学に入り、主人公は今まで以上に他人の心に敏感になりました。
男子は皆、彼女や性の話ばかりするようになりました。
主人公も、みんなと話をするために彼女をつくり、セックスをして、友達と盛り上がりました。
でもそれは彼女が欲しかったわけでも、女の子とセックスをしたかったわけでもありませんでした。
彼女は可愛かったけれど、好きだという感情は抱かなかったし、性行為に至っては何が気持ちいいのか分からず、吐き気さえ覚えました。
ただ、友達についていけなくなるのが嫌だっただけでした。
主人公はただただ気持ち悪くて泣きました。
主人公は、自分の考えを表現することが苦手でした。
苦手というより、出来ませんでした。
物心ついたときから周りの目ばかりを気にして過ごしてきたので、自分の考えというものがなかったのです。
「空虚」
そう、主人公はまさに空っぽでした。
それに気づいた時、主人公は自分に対する激しい嫌悪感を覚えました。
それは何をしても癒えることはなく、月がでない夜空よりも暗い、闇色の嫌悪感でした。
主人公はいい子の自分に反抗しようとしました。
両親の話を一回でも聞かないで夜遅くまで外で遊んでいようと思いました。
友達の約束をすっぽかして、ゲーセンに籠ろうかと思いました。
授業中、先生の言うことを無視して机に突っ伏して寝ようかと思いました。
でも、
出来ませんでした。
抵抗しようとすると、脚がすくんで、ブルブル震えだしました。
顎がガクガクなりました。
誰かに盾つくことを、自分自身が許さなかったのです。
どうしようも出来なくて、苦しくて、主人公は泣きました。
誰にも気づかれないように。
そっと。
主人公は、自分が嫌いになりました。
それは、高校に入っても変わりませんでした。
主人公は、未だ自分の考えを持つことが出来ませんでした。
顔色を窺って、周りに合わせることしかできませんでした。
自分を嫌いになったくらいで、今まで培ってきたものを変えることなどできなかったのです。
相変わらず両親にも、先輩、後輩、友達、彼女にも、先生にも、みんなにいい顔をするうわべだけの人間でした。
主人公は自分が恐ろしくなりました。
恐ろしくてたまらなくって、殺してやりたくなりました。
1人の夜に、自分の首を思いっきり絞めてみました。
息ができなくなって、ミシミシ音がして、苦しくなって脚をバタバタしました。
意識が朦朧とし始めたとき、手が緩んでしまいました。
反射的に息を吸ってしまいました。
主人公は死ぬことができませんでした。
泣きたくなって、
でも泣けませんでした。
泣きたいのに泣けなかったのです。
泣き声をあげてみました。
瞬きせずに涙をためてみました。
でも、
泣くことは出来ませんでした。
そのうち主人公は、何が悲しいのか分からなくなりました。
とうとう、主人公には感情がなくなりました。
自分を守り続けていたものがなくなってしまったので、主人公は自分自身の感情をズタズタにしてしまったのです。
今日も主人公は生きています。
何も感じないまま、無感情で生き続けます。
優等生を演じたまま、渇いた笑顔を武器に。
主人公は、温かい家庭で育ち、友達もたくさんいました。
主人公は、明るく誰にでも同じように接していたので、みんなから好かれていました。
主人公の周りは、いつも笑顔で溢れていました。
主人公は、確かに幸せそうに暮らしていました。
しかし、それは主人公の仮の、表面上だけの姿でした。
本当の姿の主人公は、生まれたときからずっと孤独で、寂しくで溜まりませんでした。
1人の夜は、いつも泣いていました。
本当の自分を曝け出すのが怖かったのです。
他人に嫌われるのがとても恐ろしいことだと思っていたのでずっと他人の顔色を窺って生きていました。
それは、物心ついた時からずっとそうでした。
両親に怒られるのがとんでもなく嫌で、いい子を演じていました。
両親に褒められたくて、箸の持ち方はすぐに覚えたし、お漏らしをした事は一度だってありません。
両親の機嫌が悪い日には、絶対に近づかないようにしていました。
逆に機嫌の良い日には、めいいっぱい遊んでもらいました。
いつでも完璧であろうとする子でした。
でも、それは主人公にどんな時も窮屈さを感じさせました。
幼稚園へ入ってもそうでした。
先生や友達に嫌われたくなくて、誰にでもいい顔をしていました。
友達が泥だんごを投げてきても、笑うだけでした。
やり返しはしませんでした。
鞄に昆虫を入れられた時も、びっくりしただけでした。
本当は嫌だったけど、嫌だとは言いませんでした。
先生は、それをみて主人公を褒めてくれました。
主人公は喜びました。
でも、それは本当の自分の姿ではありませんでした。
心から喜ぶことは出来ませんでした。
主人公は訳もわからず泣きました。
小学校へ入って、平仮名や足し算を勉強するようになりました。
主人公は優等生であるために、必死で平仮名を書き続けました。
あ、い、う、.....わ、を、んまで1日百字ずつ書きました。
そのノートを先生に見せると、先生はとても喜んで、嬉しそうにクラスの子にお手本として見せました。
友達は「すごいね!」と褒めてくれました。
主人公はとても誇らしい気持ちになりました。
でも、それは本当に誇らしくはありませんでした。
主人公はなんだか虚しくなって泣きました。
高学年になり、勉強はだんだん難しくなっていきました。
主人公は諦めずに勉強に励みました。
人の悪口を言う子が多くなってきました。
「〇〇うざい」
「〇〇嫌い」
そういう話を、よく聞くようになりました。
主人公は誰からも好かれる子でいるために、悪口なんか知らない、無邪気な子を演じていました。
友達は呆れていたけれど、気づかないフリをして、ひたすら笑顔で耐えていました。
そのうち、主人公の前ではみんな悪口を言わなくなりました。
主人公は、達成感がありました。
でもそれは、自分の中の正義ではなく、ただ嫌われないための正義でした。
主人公は、陰でみんなが自分の悪口を言っていることを知りました。
主人公は何が正義か分からなくなって泣きました。
中学に入り、主人公は今まで以上に他人の心に敏感になりました。
男子は皆、彼女や性の話ばかりするようになりました。
主人公も、みんなと話をするために彼女をつくり、セックスをして、友達と盛り上がりました。
でもそれは彼女が欲しかったわけでも、女の子とセックスをしたかったわけでもありませんでした。
彼女は可愛かったけれど、好きだという感情は抱かなかったし、性行為に至っては何が気持ちいいのか分からず、吐き気さえ覚えました。
ただ、友達についていけなくなるのが嫌だっただけでした。
主人公はただただ気持ち悪くて泣きました。
主人公は、自分の考えを表現することが苦手でした。
苦手というより、出来ませんでした。
物心ついたときから周りの目ばかりを気にして過ごしてきたので、自分の考えというものがなかったのです。
「空虚」
そう、主人公はまさに空っぽでした。
それに気づいた時、主人公は自分に対する激しい嫌悪感を覚えました。
それは何をしても癒えることはなく、月がでない夜空よりも暗い、闇色の嫌悪感でした。
主人公はいい子の自分に反抗しようとしました。
両親の話を一回でも聞かないで夜遅くまで外で遊んでいようと思いました。
友達の約束をすっぽかして、ゲーセンに籠ろうかと思いました。
授業中、先生の言うことを無視して机に突っ伏して寝ようかと思いました。
でも、
出来ませんでした。
抵抗しようとすると、脚がすくんで、ブルブル震えだしました。
顎がガクガクなりました。
誰かに盾つくことを、自分自身が許さなかったのです。
どうしようも出来なくて、苦しくて、主人公は泣きました。
誰にも気づかれないように。
そっと。
主人公は、自分が嫌いになりました。
それは、高校に入っても変わりませんでした。
主人公は、未だ自分の考えを持つことが出来ませんでした。
顔色を窺って、周りに合わせることしかできませんでした。
自分を嫌いになったくらいで、今まで培ってきたものを変えることなどできなかったのです。
相変わらず両親にも、先輩、後輩、友達、彼女にも、先生にも、みんなにいい顔をするうわべだけの人間でした。
主人公は自分が恐ろしくなりました。
恐ろしくてたまらなくって、殺してやりたくなりました。
1人の夜に、自分の首を思いっきり絞めてみました。
息ができなくなって、ミシミシ音がして、苦しくなって脚をバタバタしました。
意識が朦朧とし始めたとき、手が緩んでしまいました。
反射的に息を吸ってしまいました。
主人公は死ぬことができませんでした。
泣きたくなって、
でも泣けませんでした。
泣きたいのに泣けなかったのです。
泣き声をあげてみました。
瞬きせずに涙をためてみました。
でも、
泣くことは出来ませんでした。
そのうち主人公は、何が悲しいのか分からなくなりました。
とうとう、主人公には感情がなくなりました。
自分を守り続けていたものがなくなってしまったので、主人公は自分自身の感情をズタズタにしてしまったのです。
今日も主人公は生きています。
何も感じないまま、無感情で生き続けます。
優等生を演じたまま、渇いた笑顔を武器に。
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