【完結】最初で最後の恋をしましょう

関鷹親

文字の大きさ
46 / 95

46 助言

しおりを挟む
 ミリアに強引に連れられて来たテオドールは不満そうな顔を隠しもせずグラスに口をつけており、そんな姿にミリアは苦笑を隠し得なかった。

「もうそんなに不機嫌そうにしないでってば」
「少しでも一緒に居たいのに引き離した姉上が悪いです」
「まぁまぁ少しくらい良いじゃない。ちゃんと話がしたかったのよ」
「先程の話じゃ足りませんでしたか?」
「そうね、足りないわ。と言うよりもあの場では出来ない話だもの」

 一体何お話をしようとしているのだろうと首を傾げたテオドールに、ミリアは困った子供を見るように笑うと一つ息をついてから真剣な表情になる。

「貴方達の事情はお母様から全て聞いてるの」
「成程、そうでしたか」
「貴方が悩んでる事もわかってる。だから私が少し助言をしようと思ったのよ。お父様もお兄様もフェリチアーノに丸投げすぎるのだもの」

 テオドールはまさかミリアが事情を知っているとは思わなかった為、驚きに目を見開いた。
 ミリアもまた他の人々と同じく新聞記事や噂を聞いて興味を持ち、本人達から詳しく話を聞こうと今日の晩餐会を開いたのだとばかり思って居たからだ。
 それに王族に準ずるミリアが全ての事情を知りつつも、助言をくれると言事にも驚いていた。
 父や兄は言わずもがな、婚約回避の相談など出来るはずもなく、他の親族にもこんな考えを相談する事も悩みを打ち明ける事もやはり出来るわけがなく、一人暗闇を彷徨い歩いているような物だったのだ。
 けれども兄姉の中で一番仲の良いミリアが何故助言をしようと思ったのか疑問も残る。彼女もまた王族の一員で、私より公を選ぶ筈であるのに。

「驚くのも無理はないわね。これは謂わば私から貴方へのお礼と言うか、贖罪よ」
「どう言う事ですか?」
「貴方は私と夫が恋愛結婚だと思っているでしょう? それは大きな間違いよ。彼と私は貴方達と同じ様に利害の一致から始まった関係だもの」
「冗談でしょう? だって今も昔もあんなに仲睦まじいじゃないですか」
「今はちゃんと愛があるわよ? だけれど当時はそんな物無かったわ。私も彼も政略結婚なんて話は出ていなかったけれどそんな物嫌だったし、恋人を探すのも面倒だったのよ。だったら気が合う幼馴染の相手を恋人として据えて居た方が楽だと気が付いたの。虫除けにもなるしね? 勿論本当に好きな相手が出来ればいつでも解消する予定であったけれど、そうはならなかった」
「信じられません」
「そうでしょうね? だって私達は真実味を増す為に幼い貴方を一番に騙して利用したんですもの。よく思い出してごらんなさい。いつも私達と一緒にいて、私達がいかに相思相愛で素晴らしいかを周りに語って居たのは貴方でしょうテオドール」

 ミリアから語られる真実にテオドールは頭を殴られた様な感覚に陥った。
 幼い頃のミリアとその夫であるジャン・グレイス侯爵との結婚を後押ししたのは確かにテオドールだった。
 二人は物語に出てくるような素敵な恋人同士で、テオドールの憧れであったと言ってもいい。しかしそれが全て偽りだったと言われれば同様しない訳がない。

「私達は私達の安寧の為にテオ、貴方を利用した。だから少しでも罪を償いたいのよ。許してくれるかしら?」
「……今は幸せなのですか?」
「勿論、今は嘘偽りなく彼に愛情があるのよ。それは彼も同じ」
「だったらいいです、姉上の提案を受け入れます」
「ふふ、良かった! ずっと謝りたかったのよ、その機会ができて嬉しいわ」

 沈んだ空気を一掃するように明るく笑ったミリアに、テオドールもそれに合わせて困った様に笑った。
 直接的な支援や援護射撃が今の時点でミリアから受けれない事は分かっているが、助言だけでも貰えると言うのならこれ程心強い事はなかった。

 それからテオドールは自分が知り得る限りの情報をミリアに話す。
 恋人ごっこの期限も、フェリチアーノの家族の事も、そして最終的に婚約を回避してフェリチアーノと共に歩んでいきたいという想いも全てミリアに打ち明けた。
 テオドールの話を決して馬鹿にせず、フェリチアーノの事情を聞いても眉を顰める事もせず、一所懸命話すテオドールをミリアは真剣な表情で耳を傾けていた。
しおりを挟む
感想 24

あなたにおすすめの小説

婚約破棄?しませんよ、そんなもの

おしゃべりマドレーヌ
BL
王太子の卒業パーティーで、王太子・フェリクスと婚約をしていた、侯爵家のアンリは突然「婚約を破棄する」と言い渡される。どうやら真実の愛を見つけたらしいが、それにアンリは「しませんよ、そんなもの」と返す。 アンリと婚約破棄をしないほうが良い理由は山ほどある。 けれどアンリは段々と、そんなメリット・デメリットを考えるよりも、フェリクスが幸せになるほうが良いと考えるようになり…… 「………………それなら、こうしましょう。私が、第一王妃になって仕事をこなします。彼女には、第二王妃になって頂いて、貴方は彼女と暮らすのです」 それでフェリクスが幸せになるなら、それが良い。 <嚙み痕で愛を語るシリーズというシリーズで書いていきます/これはスピンオフのような話です>

あと一度だけでもいいから君に会いたい

藤雪たすく
BL
異世界に転生し、冒険者ギルドの雑用係として働き始めてかれこれ10年ほど経つけれど……この世界のご飯は素材を生かしすぎている。 いまだ食事に馴染めず米が恋しすぎてしまった為、とある冒険者さんの事が気になって仕方がなくなってしまった。 もう一度あの人に会いたい。あと一度でもあの人と会いたい。 ※他サイト投稿済み作品を改題、修正したものになります

貴族軍人と聖夜の再会~ただ君の幸せだけを~

倉くらの
BL
「こんな姿であの人に会えるわけがない…」 大陸を2つに分けた戦争は終結した。 終戦間際に重症を負った軍人のルーカスは心から慕う上官のスノービル少佐と離れ離れになり、帝都の片隅で路上生活を送ることになる。 一方、少佐は屋敷の者の策略によってルーカスが死んだと知らされて…。 互いを思う2人が戦勝パレードが開催された聖夜祭の日に再会を果たす。 純愛のお話です。 主人公は顔の右半分に火傷を負っていて、右手が無いという状態です。 全3話完結。

出来損ないと虐げられ追放されたオメガですが、辺境で運命の番である最強竜騎士様にその身も心も溺愛され、聖女以上の力を開花させ幸せになります

水凪しおん
BL
虐げられ、全てを奪われた公爵家のオメガ・リアム。無実の罪で辺境に追放された彼を待っていたのは、絶望ではなく、王国最強と謳われるα「氷血の竜騎士」カイルとの運命の出会いだった。「お前は、俺の番だ」――無愛想な最強騎士の不器用で深い愛情に、凍てついた心は溶かされていく。一方、リアムを追放した王都は、偽りの聖女によって滅びの危機に瀕していた。真の浄化の力を巡る、勘違いと溺愛の異世界オメガバースBL。絶望の淵から始まる、世界で一番幸せな恋の物語。

【完結・ルート分岐あり】オメガ皇后の死に戻り〜二度と思い通りにはなりません〜

ivy
BL
魔術師の家門に生まれながら能力の発現が遅く家族から虐げられて暮らしていたオメガのアリス。 そんな彼を国王陛下であるルドルフが妻にと望み生活は一変する。 幸せになれると思っていたのに生まれた子供共々ルドルフに殺されたアリスは目が覚めると子供の頃に戻っていた。 もう二度と同じ轍は踏まない。 そう決心したアリスの戦いが始まる。

【8話完結】魔王討伐より、不機嫌なキミを宥める方が難易度「SSS」なんだが。

キノア9g
BL
世界を救った英雄の帰還先は、不機嫌な伴侶の待つ「絶対零度」の我が家でした。 あらすじ 「……帰りたい。今すぐ、愛する彼のもとへ!」 魔王軍の幹部を討伐し、王都の凱旋パレードで主役を務める聖騎士カイル。 民衆が英雄に熱狂する中、当の本人は生きた心地がしていなかった。 なぜなら、遠征の延長を愛する伴侶・エルヴィンに「事後報告」で済ませてしまったから……。 意を決して帰宅したカイルを迎えたのは、神々しいほどに美しいエルヴィンの、氷のように冷たい微笑。 機嫌を取ろうと必死に奔走するカイルだったが、良かれと思った行動はすべて裏目に出てしまい、家庭内での評価は下がる一方。 「人類最強の男に、家の中まで支配させてあげるもんですか」 毒舌、几帳面、そして誰よりも不器用な愛情。 最強の聖騎士といえど、愛する人の心の機微という名の迷宮には、聖剣一本では太刀打ちできない。 これは、魔王討伐より遥かに困難な「伴侶の機嫌取り」という最高難易度クエストに挑む、一途な騎士の愛と受難の記録。 全8話。

政略結婚のはずが恋して拗れて離縁を申し出る話

BL
聞いたことのない侯爵家から釣書が届いた。僕のことを求めてくれるなら政略結婚でもいいかな。そう考えた伯爵家四男のフィリベルトは『お受けします』と父へ答える。 ところがなかなか侯爵閣下とお会いすることができない。婚姻式の準備は着々と進み、数カ月後ようやく対面してみれば金髪碧眼の美丈夫。徐々に二人の距離は近づいて…いたはずなのに。『え、僕ってばやっぱり政略結婚の代用品!?』政略結婚でもいいと思っていたがいつの間にか恋してしまいやっぱり無理だから離縁しよ!とするフィリベルトの話。

偽りベータの宮廷薬師は、氷の宰相に匂いを嗅がれ溺愛される

水凪しおん
BL
「お前の匂いがないと、私は息ができない」 宮廷薬師のルチアーノは、オメガであることを隠し、自作の抑制薬でベータと偽って生きてきた。 しかしある日、冷徹無比と恐れられる「氷の宰相」アレクセイにその秘密がバレてしまう。 処刑を覚悟したルチアーノだったが、アレクセイが求めたのは、ルチアーノの身体から香る「匂い」だった!? 強すぎる能力ゆえに感覚過敏に苦しむ宰相と、彼の唯一の安らぎとなった薬師。 秘密の共有から始まる、契約と執着のオメガバース・ロマンス!

処理中です...