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15 魔王ガベルトゥス
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岩を削りだし作られた階段を上り、開かれた魔王城の中へと踏み入れる。中は普通の城と何ら変わりないような作りだった。違うところと言えば煌びやかさではなく、薄暗く重々しい荘厳な雰囲気が漂っているところだろうか。
荒廃したような城かと想像していた春輝は、その内部を珍しそうに見回してしまう。それは他の騎士達も同様で、明るくしていれば王族が住んでいても違和感のない物だと小声で囁いていた。
静まり返ったホールには騎士達の甲冑の金属音が反響する。誰かに見られているような感覚はあるものの、魔族一人出て来ない。
「気味が悪いですね。まるで奥まで誘われているようだ」
トビアスが言うように、まさに先を示すかの如く壁に掛けられているランプが自動点灯のように明かりが灯っていく。警戒しながらそれに従い歩いて行けば、一際大きな扉の前へと辿り着いた。
「待ちくたびれたぞ、勇者」
ゆっくりと開かれる扉の向こうから聞こえて来た声に、春輝は思わず目を見開いた。今の声には聞き覚えがあり過ぎたのだ。
完全に開ききった扉の向こうは広々とした玉座の間で、その最奥にある豪奢な玉座に足を組み、頬杖をつきながらゆったりと座っている魔王に春輝は目が離せなかった。
「我が名はガベルトゥス・サウザー、お前達が魔王と呼んでいる者だ。さて、よくここまで辿り着けたと褒めてやろう」
そう言った瞬間、春輝の目の前に移動したガベルトゥスが春輝に頭に手を乗せる。一瞬の出来事に誰もが動けないまま、春輝だけは聖剣をガベルトゥスに向かい横凪ぎにする。
ガベルトゥスは軽くステップを踏むように後ろに下がり、春輝からの剣撃を躱すと目を細めて春輝を見てきた。
「さて俺は名乗ったぞ? 名を名乗るのが礼儀だろう」
「……お前ならもう知ってるんじゃないのか? さんざん夢に出てきただろ」
「まぁ確かにそうだが、雰囲気があるだろう?」
片眉を上げ首を傾げるガベルトゥスに、魔王と言うイメージが余り湧かなった。聖剣からもたらされた知識の中にはそもそも魔王の姿はない。
春輝は漠然と、魔獣のような異形の者か、もしくは映画などに出てくるような人型であれど、角が生えたような禍々しい容貌だろうと思い込んでいたのだ。
実際玉座の横に立つ魔族であろう男は、顔色が今まで見てきた魔族と同じように、血の気がない青白くうっすらと灰色がかった肌をしている。そして目は黄色で瞳孔は猫のように縦長に細められていた。腰から生える蝙蝠のような翼もまた魔族と言われれば納得するものだ。
だが実際に対峙したガベルトゥスはそのどれでもない。見た目は春輝達と何ら変わりのない人間そのものだった。
長身で、黒く豪華な羽織がはだけていてその胸元はがっしりとした筋肉がついている。肌は春輝よりも色濃く、日焼けしている騎士達と同じくらいだ。これが本当に魔王なのだろうかと疑問さえ過る。
「ハルキはどうしても名乗りたくないらしい、残念だ」
「なんだよ、やっぱり知ってるんじゃないか」
肩を竦めたガベルトゥスに問答無用で春輝が切り掛かれば、玉座の脇に控えていた魔族の男が間に割り込み、鋭く変化した爪で春輝の剣を受け止める。
「名も名乗らない上にいきなり切りかかるとは、今回の勇者は品性に欠けますね?」
「品性? そんなもんでアイツが倒せるかよ」
「なんと勇者らしくない方ですね」
「おいハンネス、いつ俺の邪魔をしていいと言った? それは俺の獲物だぞ」
ブワッとガベルトゥスから広がった威圧に、ハンネスは瞳孔を極限まで細めると春輝から距離を取りガベルトゥスの前で礼を取った。
「お前の相手は後ろの奴らだ。勇者には手を出すな」
「申し訳ございません。ではあ奴らは私が殲滅いたしましょう」
にこりと笑みを浮かべたハンネスは、すぐさまトビアス達に攻撃を仕掛けていく。騎士の人数が減ったとはいえ、その数はまだ百はいる。
その中を一人で相手にするハンネスはよほど強いのだろう。春輝はちらりと後方を気にしながらも、援護は期待できないことに内心溜息を吐いた。
一対一で果たして目の前にいる魔王に勝てるのだろうかと頭を過ってしまうが、ここでガベルトゥスを打ち倒さなければいちかの元へは帰れない。
深く息を吸い込み覚悟を深めた春輝はガベルトゥスを睨みつけてくる。春輝のその様子にガベルトゥスは愉快そうに目に弧を描いた。
数百年ぶりに湧き上がる高揚感にガベルトゥスは喜色を隠せない。
「なにせ数百年ぶりに戦うんだ。俺を楽しませ、そして見極めさせろハルキ」
荒廃したような城かと想像していた春輝は、その内部を珍しそうに見回してしまう。それは他の騎士達も同様で、明るくしていれば王族が住んでいても違和感のない物だと小声で囁いていた。
静まり返ったホールには騎士達の甲冑の金属音が反響する。誰かに見られているような感覚はあるものの、魔族一人出て来ない。
「気味が悪いですね。まるで奥まで誘われているようだ」
トビアスが言うように、まさに先を示すかの如く壁に掛けられているランプが自動点灯のように明かりが灯っていく。警戒しながらそれに従い歩いて行けば、一際大きな扉の前へと辿り着いた。
「待ちくたびれたぞ、勇者」
ゆっくりと開かれる扉の向こうから聞こえて来た声に、春輝は思わず目を見開いた。今の声には聞き覚えがあり過ぎたのだ。
完全に開ききった扉の向こうは広々とした玉座の間で、その最奥にある豪奢な玉座に足を組み、頬杖をつきながらゆったりと座っている魔王に春輝は目が離せなかった。
「我が名はガベルトゥス・サウザー、お前達が魔王と呼んでいる者だ。さて、よくここまで辿り着けたと褒めてやろう」
そう言った瞬間、春輝の目の前に移動したガベルトゥスが春輝に頭に手を乗せる。一瞬の出来事に誰もが動けないまま、春輝だけは聖剣をガベルトゥスに向かい横凪ぎにする。
ガベルトゥスは軽くステップを踏むように後ろに下がり、春輝からの剣撃を躱すと目を細めて春輝を見てきた。
「さて俺は名乗ったぞ? 名を名乗るのが礼儀だろう」
「……お前ならもう知ってるんじゃないのか? さんざん夢に出てきただろ」
「まぁ確かにそうだが、雰囲気があるだろう?」
片眉を上げ首を傾げるガベルトゥスに、魔王と言うイメージが余り湧かなった。聖剣からもたらされた知識の中にはそもそも魔王の姿はない。
春輝は漠然と、魔獣のような異形の者か、もしくは映画などに出てくるような人型であれど、角が生えたような禍々しい容貌だろうと思い込んでいたのだ。
実際玉座の横に立つ魔族であろう男は、顔色が今まで見てきた魔族と同じように、血の気がない青白くうっすらと灰色がかった肌をしている。そして目は黄色で瞳孔は猫のように縦長に細められていた。腰から生える蝙蝠のような翼もまた魔族と言われれば納得するものだ。
だが実際に対峙したガベルトゥスはそのどれでもない。見た目は春輝達と何ら変わりのない人間そのものだった。
長身で、黒く豪華な羽織がはだけていてその胸元はがっしりとした筋肉がついている。肌は春輝よりも色濃く、日焼けしている騎士達と同じくらいだ。これが本当に魔王なのだろうかと疑問さえ過る。
「ハルキはどうしても名乗りたくないらしい、残念だ」
「なんだよ、やっぱり知ってるんじゃないか」
肩を竦めたガベルトゥスに問答無用で春輝が切り掛かれば、玉座の脇に控えていた魔族の男が間に割り込み、鋭く変化した爪で春輝の剣を受け止める。
「名も名乗らない上にいきなり切りかかるとは、今回の勇者は品性に欠けますね?」
「品性? そんなもんでアイツが倒せるかよ」
「なんと勇者らしくない方ですね」
「おいハンネス、いつ俺の邪魔をしていいと言った? それは俺の獲物だぞ」
ブワッとガベルトゥスから広がった威圧に、ハンネスは瞳孔を極限まで細めると春輝から距離を取りガベルトゥスの前で礼を取った。
「お前の相手は後ろの奴らだ。勇者には手を出すな」
「申し訳ございません。ではあ奴らは私が殲滅いたしましょう」
にこりと笑みを浮かべたハンネスは、すぐさまトビアス達に攻撃を仕掛けていく。騎士の人数が減ったとはいえ、その数はまだ百はいる。
その中を一人で相手にするハンネスはよほど強いのだろう。春輝はちらりと後方を気にしながらも、援護は期待できないことに内心溜息を吐いた。
一対一で果たして目の前にいる魔王に勝てるのだろうかと頭を過ってしまうが、ここでガベルトゥスを打ち倒さなければいちかの元へは帰れない。
深く息を吸い込み覚悟を深めた春輝はガベルトゥスを睨みつけてくる。春輝のその様子にガベルトゥスは愉快そうに目に弧を描いた。
数百年ぶりに湧き上がる高揚感にガベルトゥスは喜色を隠せない。
「なにせ数百年ぶりに戦うんだ。俺を楽しませ、そして見極めさせろハルキ」
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