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その日は私の17歳の誕生日。

当然ながら国内外から賓客を招いての舞踏会が催されていた。

私は綺麗に巻かれたシルバーのロングヘアにアメジストを思わせる紫の瞳をもったスレンダー美人である筆頭婚約者候補のレイチェル嬢と踊りながら

(この世界はゲームの世界だからこのままレイチェル嬢と婚約してあれやこれやがあってヒロインのリリアナ嬢と一緒になるんだろうな…)

などと思いながら頭の中でふわふわのローズブロンドにピンクの瞳の見るからに庇護欲を掻き立てられる可愛らしさのヒロインを思い返す。

だけどそれは決められた未来。

元々オンリープリンセスにそこまでハマらなかったのと、決まった将来がどうにも嫌でとりあえずレイチェル嬢との婚約を先延ばしにしてきたが、そろそろ限界かもしれないとも考えていた。

だが私と婚約することでレイチェル嬢は悪役令嬢になり断罪される。

それは気持ちの良いものではない。

しかもそれ以前に私はヒロインのリリアナ嬢に興味がない。

そんなことを考えている間に一曲踊り終えお互いに礼をする。

そしていつも通り周りから溢れんばかりの拍手をもらって私は自分の席に戻った。

すると母親である王妃が扇で口元を隠し小声で話しかけてきた。

「ねえルイス、そろそろレイチェル嬢と婚約してはどう?
家柄も見目も教養も申し分ないと思うのだけど?」

またか…

レイチェル嬢は母上のお気に入りでもあるので毎日同様にこの台詞を聞く。

が、まだ首を縦には振りたくない。

「母上、今はその様なことを話す時ではないと思われますが?」

とりあえずそう言って誤魔化したが、まだ何か言いそうな雰囲気だったので

「少し夜風にあたって来ます」

と言ってその場を逃げ出した。

バルコニーに出ると冷んやりとした夜風が気持ち良かった。

来る時に取ってきたシャンパンを一口飲む。

そして

「やはり私の未来は変えられないものなんだろうか…?」

と独りごちたその時

「やあ、ルイス。
誕生日おめでとう。
だけど退屈そうだな」

という声が聞こえて振り向く。

すると思った通りの人物が意外にも御令嬢と一緒に立っていた。
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