77 / 149
077 謝罪文
しおりを挟む
タイラント公爵の襟首を掴んで引き起こし、執務机に向かって投げつける。
「さっさと襲わせた理由と謝罪文を書け! 筆跡を崩したり署名を偽れば、即座に死んで貰うので心して書けよ」
論点ずらしや自分は止めたが、ヒンメル伯爵がと言い訳に始終した書面を三度書き直させた所で、訓練用の木剣で左腕を叩き潰した。
呆然と複雑骨折をした歪な腕を見ていたが〈ヒイーィィィ〉と、か細い悲鳴を上げると泡を吹いて気絶してしまった。
扉の陰で小さくなっている執事を手招きして、キャビネットから酒とグラスを持って来させる。
その間に公爵の頭からウォーターをザブザブと掛けて、お漏らしの匂いを流してやる。
目覚めた公爵に気付けの酒を飲ませてから、潰れた左腕の掌を机に置きロングソードを突き立てる。
「その剣を見ながら書け! 次は書き直しは無いが、その剣が胸に突き立つと覚悟して書くんだな」
がっくりと肩を落として泣き出したが「書く気が無いのなら・・・」と、言ったら漸く諦めた様だ。
長い時間を掛けて書いた書面を受け取り、確認して署名の下に血判を押させる。
「まっ、こんなものだろう。腰巾着のヒンメルやツアイスに知らせても良いが、その時は隠居の約束を破ったと見做すからな」
「判っている。此を抜いて治療をしてくれ」
掌に突き立つ剣を恨めしそうに見ている。
砕かれた腕が痛み出したのか額から冷や汗が流れているが、少しは痛い思いをしろ。
「その前に迷惑料を貰っておこうか」
「迷惑料だと」
「当たり前だろう。御免なさいと言って紙切れ一枚で済ませるつもりなの? 他人に被害を与えたら、謝罪と賠償はセットだよ。嫌なら、此の屋敷を吹き飛ばす事になるけど良いかな」
「そんな無茶な!」
「無茶って、俺は西門で攻撃されたときからお前を殺して屋敷を吹き飛ばす気でいたんだ。それを騎士団長がお前と話し合ってくれと懇願するので、大人しく此処まで来たんだ。まっ、お前達はそれが気に入らない様だけど、俺は彼の頼みを聞きいれて、屋敷を吹き飛ばして皆殺しにするのを控えたんだ。出来ないと思うか」
にっこりと笑って尋ねると、頬をピクピクさせて黙り込んだ。
「ランディス様、如何程をお望みですか」
「ん、其処のジブリアと兄弟の様だが」
「三男のセビリア・タイラントと申します」
「騎士団長、クビになったら行く当てはあるのか?」
「まあ此の街道筋を離れて、冒険者にでもなるさ」
「そう、なら頼みがあるのだが聞いてくれないか。勿論手間賃は払うぞ」
「何を考えているのか知らないが、安全に此の地を離れる事が出来るのなら聞こうか」
「セビリアと言ったな、金貨1,000枚と酒蔵の酒をもらおうか」
「父上、宜しいでしょうか?」
「好きに持って行け!」
《グレイ、アッシュを連れてきて》
《あい》
「えっ・・・消えた」
「やはり、彼奴は転移魔法が使えるのか」
驚く二人の前に、アッシュの尻尾を咥えた二人が現れて室内に響めきが起きた。
《アッシュ、ちょっと酒蔵探訪と洒落込むので、此のおっさん達を見張っていてよ》
《良いわよ。話は付いたの?》
《まぁね。約束が守られるかどうかは何とも言えないけど》
革袋の乗ったワゴンを執事が押して来て頭を下げる。
タイラント公爵家の紋章入り革袋をマジックポーチに放り込む。
「さてと酒蔵探訪に言っている間に、公爵様は隠居願いを書いておけよ」
「此の剣を抜いて治療を・・・」
「俺はお前を信用していないんだ。戻ってきたら抜いてやるよ。治療はお抱えの治癒魔法師に頼むんだな」
またまた泣きそうな顔になっているが知った事か。
「誰が案内してくれるのかな」
「マジール、案内しろ!」
公爵が自棄糞気味に叫んでいる。
フラッグを連れて執事の後に続き執務室を出るが、通路の奥に騎士や警備兵達が群れている。
執事に手を振られて下がるが、何が起きているのか判らない様だ。
隠し階段を使って地下に降りると、何やら曰くありげな扉が目につくが執事のマジールは素通りする。
お宝の匂いがプンプンするが、俺の目的は酒なので素通りする。
公爵愛飲の酒を中心に各種10本~20本をマジックポーチに放り込んでいき、秘蔵の逸品等は隠居後の楽しみのために残しておいてやる。
同一瓶で数の多い物を頂いたので、それ程無茶はしていないと思うが、200~300本は頂いたかな。
満足して執務室に戻ると、隠居願いを前に憮然とした顔の公爵。
隠居願いと謝罪文の文字を見比べ、署名に違いがない事を確認する。
掌を貫いた剣を抜き、執事に新たな用紙を持って来させて俺が二通の書状を認める。
「騎士団長・・・もう首になるのなら騎士団長はないな」
「ヨハンス・アドバルトだ、しかし公爵権限の男爵位で家名も授かったものなので、ヨハンスだな」
「家族は?」
「妻と子供に両親がこの街に居るぞ。妻の両親と兄弟もな」
「セビリア、騎士団長・・・ヨハンスとその家族は街を去る事になるが、残る家族に手を出すなよ」
「お約束します。長兄にも申し伝えておきます」
「それじゃ、お暇するので馬車をお借りしても良いかな」
「直ぐに用意させますので、暫しお待ち下さい」
「あのう・・・治療費は支払いますので・・・」
「ん、お抱えの治癒魔法師は?」
「先程の様な治療が出来る腕はありません。怪我が治ったからといってご迷惑はお掛けしませんので、お願いします」
えらく態度が大人しくなり、泣きそうな顔で懇願してくる。
複雑骨折しているであろう腕は、服の袖がパンパンになる程に膨れ上がり掌は黒ずんでいる。
《グレイ、嫌だろうけど彼奴の怪我を治してやってよ》
《あーい》
《なーおーれー》
公爵を睨みつけながらの治療だが、腫れ上がった腕が元に戻り黒ずんだ掌も綺麗に治っていく。
心得顔の執事が革袋を二つ捧げ持って来たので有り難く頂いておく。
* * * * * * *
用意された馬車にヨハンスと共に乗り、公爵邸を後に彼の妻子の元に向かった。
「頼みとは、タイラント公爵の隠居願いと謝罪文を王城まで届けて欲しいんだ。依頼料は金貨1,000枚でどうだ」
人を食った様な物腰の騎士団長・・・ヨハンスが、ポカンとしているのを見るのは面白い。
「それじゃ謝罪金は何の為に・・・」
「ああ、それはどうでも良かったんだ。謝罪金を支払った、その事実だけがあればね。序でに、首になる騎士団長への慰労金だな」
「幻獣を五頭も連れている非常識な奴だと思ったが、中々気が利くじゃないか」
「気が利く序でに、冒険者になるのならハイムントに行きなよ。抜け目のないおっさんだけど、ホールデンス公爵に紹介状を書いておくよ。無理に仕える必要はないけど、元の雇い主があれだから、断りの一つも言っておけば大丈夫だよ」
* * * * * * *
ヒューヘン宰相の下に急報が届いた。
曰く、ランディスがバテスト街道のエルバスからバネッサに入った所で、クロスボウと魔法使い多数の待ち伏せを受けたとの事だった。
此は伝令による急報で、続報を待たねば詳しい事は判らないのでやきもきしていたが、続報は一時間もせずに届いた。
ランディスは待ち伏せ攻撃を撃退してバネッサに向かったと。
ただ届けられた報告では攻撃側はほぼ全滅で、その数4、50人以上との事だった。
街道上での攻撃にて、戦闘終了後は野次馬の数が多くて調査が難しく、その後タイラント公爵の警備兵達が現場を封鎖したので正確な数は不明との事。
ランディスの行動監視と支援要員からの報告書では、バテスト街道を歩くランディスに対して、クロスボウや魔法部隊に拠る左右からの一斉攻撃だった事。
ランディスは攻撃を受けたが、その後攻撃側の頭上で連続した爆発が起き、攻撃側が甚大な被害を受けて闘いは終わったと締めくくられていた。
半日遅れて届いた報告書では、バネッサの出入り口の門や防壁が4、50mにわたり壊されていて、多数の被害が出ている事。
ランディスはタイラント公爵邸に向かったとの目撃情報があると締めくくられていた。
一番恐れていた事が起きている様だが迂闊に兵を動かせない、下手に動けばクラウディオ王国を刺激してしまう。
* * * * * * *
知らせを受けて国王陛下に報告をしたが、王国騎士団と兵の出兵準備と待機を命じられた。
「タイラントは、あの男と幻獣に勝てると思うか?」
「あの二頭だけでも、不意打ちか毒殺でなければ無理かと。今や五頭の幻獣を従えた彼を倒すなど、不可能でしょう」
「クラウディオ王国が動けば、ブリスト伯爵が耐えている間に兵を送り彼にも支援を依頼をせねばならない。決して居場所から目を離すなよ」
* * * * * * *
翌日届いた知らせは意外なもので、ランディスはタイラント公爵家の騎士団長とその家族と共に街を出て、王都方面に向かっているとの事だった。
追記として、タイラント公爵は健在だが多数の配下を失い、領都バネッサは騒然としていると書かれていた。
その知らせを持って国王陛下の執務室に向かった。
「新しい知らせか?」
「はい、陛下此を」
ヒューヘン宰相の差し出した報告書を読み、首を捻る。
「タイラントが健在なら呼び出せ!」
* * * * * * *
騎士団長・・・ヨハンスと共に家族を迎えに行き、妻子と妻の両親を馬車に乗せてバネッサを後に王都へ向けて旅立った。
エルバスを過ぎアブリルの街で代官屋敷に向かい、馬車を調達してヨハンスとその家族を王都に向けて送り出した。
ヨハンスとその家族の乗った馬車は、ゲラートに向かう途中でタイラント公爵の呼出状を持った急使とすれ違い、三日後に無事王都カンタスに到着した。
家族をホテルに預けると直ぐに王城に向かい、教わった通り王城の通用門にて口上を述べる。
ヨハンスの口上と差し出された書状を受け取った警備兵は、ヒューヘン宰相の名が記された書状を受け取ると、ヨハンスを待機所で待たせて宰相補佐官の下へ向かった。
宰相補佐官は差出人の名を見て即座にヒューヘン宰相に届け、ヒューヘン宰相は一読するとヨハンスを呼べと命じた。
「さっさと襲わせた理由と謝罪文を書け! 筆跡を崩したり署名を偽れば、即座に死んで貰うので心して書けよ」
論点ずらしや自分は止めたが、ヒンメル伯爵がと言い訳に始終した書面を三度書き直させた所で、訓練用の木剣で左腕を叩き潰した。
呆然と複雑骨折をした歪な腕を見ていたが〈ヒイーィィィ〉と、か細い悲鳴を上げると泡を吹いて気絶してしまった。
扉の陰で小さくなっている執事を手招きして、キャビネットから酒とグラスを持って来させる。
その間に公爵の頭からウォーターをザブザブと掛けて、お漏らしの匂いを流してやる。
目覚めた公爵に気付けの酒を飲ませてから、潰れた左腕の掌を机に置きロングソードを突き立てる。
「その剣を見ながら書け! 次は書き直しは無いが、その剣が胸に突き立つと覚悟して書くんだな」
がっくりと肩を落として泣き出したが「書く気が無いのなら・・・」と、言ったら漸く諦めた様だ。
長い時間を掛けて書いた書面を受け取り、確認して署名の下に血判を押させる。
「まっ、こんなものだろう。腰巾着のヒンメルやツアイスに知らせても良いが、その時は隠居の約束を破ったと見做すからな」
「判っている。此を抜いて治療をしてくれ」
掌に突き立つ剣を恨めしそうに見ている。
砕かれた腕が痛み出したのか額から冷や汗が流れているが、少しは痛い思いをしろ。
「その前に迷惑料を貰っておこうか」
「迷惑料だと」
「当たり前だろう。御免なさいと言って紙切れ一枚で済ませるつもりなの? 他人に被害を与えたら、謝罪と賠償はセットだよ。嫌なら、此の屋敷を吹き飛ばす事になるけど良いかな」
「そんな無茶な!」
「無茶って、俺は西門で攻撃されたときからお前を殺して屋敷を吹き飛ばす気でいたんだ。それを騎士団長がお前と話し合ってくれと懇願するので、大人しく此処まで来たんだ。まっ、お前達はそれが気に入らない様だけど、俺は彼の頼みを聞きいれて、屋敷を吹き飛ばして皆殺しにするのを控えたんだ。出来ないと思うか」
にっこりと笑って尋ねると、頬をピクピクさせて黙り込んだ。
「ランディス様、如何程をお望みですか」
「ん、其処のジブリアと兄弟の様だが」
「三男のセビリア・タイラントと申します」
「騎士団長、クビになったら行く当てはあるのか?」
「まあ此の街道筋を離れて、冒険者にでもなるさ」
「そう、なら頼みがあるのだが聞いてくれないか。勿論手間賃は払うぞ」
「何を考えているのか知らないが、安全に此の地を離れる事が出来るのなら聞こうか」
「セビリアと言ったな、金貨1,000枚と酒蔵の酒をもらおうか」
「父上、宜しいでしょうか?」
「好きに持って行け!」
《グレイ、アッシュを連れてきて》
《あい》
「えっ・・・消えた」
「やはり、彼奴は転移魔法が使えるのか」
驚く二人の前に、アッシュの尻尾を咥えた二人が現れて室内に響めきが起きた。
《アッシュ、ちょっと酒蔵探訪と洒落込むので、此のおっさん達を見張っていてよ》
《良いわよ。話は付いたの?》
《まぁね。約束が守られるかどうかは何とも言えないけど》
革袋の乗ったワゴンを執事が押して来て頭を下げる。
タイラント公爵家の紋章入り革袋をマジックポーチに放り込む。
「さてと酒蔵探訪に言っている間に、公爵様は隠居願いを書いておけよ」
「此の剣を抜いて治療を・・・」
「俺はお前を信用していないんだ。戻ってきたら抜いてやるよ。治療はお抱えの治癒魔法師に頼むんだな」
またまた泣きそうな顔になっているが知った事か。
「誰が案内してくれるのかな」
「マジール、案内しろ!」
公爵が自棄糞気味に叫んでいる。
フラッグを連れて執事の後に続き執務室を出るが、通路の奥に騎士や警備兵達が群れている。
執事に手を振られて下がるが、何が起きているのか判らない様だ。
隠し階段を使って地下に降りると、何やら曰くありげな扉が目につくが執事のマジールは素通りする。
お宝の匂いがプンプンするが、俺の目的は酒なので素通りする。
公爵愛飲の酒を中心に各種10本~20本をマジックポーチに放り込んでいき、秘蔵の逸品等は隠居後の楽しみのために残しておいてやる。
同一瓶で数の多い物を頂いたので、それ程無茶はしていないと思うが、200~300本は頂いたかな。
満足して執務室に戻ると、隠居願いを前に憮然とした顔の公爵。
隠居願いと謝罪文の文字を見比べ、署名に違いがない事を確認する。
掌を貫いた剣を抜き、執事に新たな用紙を持って来させて俺が二通の書状を認める。
「騎士団長・・・もう首になるのなら騎士団長はないな」
「ヨハンス・アドバルトだ、しかし公爵権限の男爵位で家名も授かったものなので、ヨハンスだな」
「家族は?」
「妻と子供に両親がこの街に居るぞ。妻の両親と兄弟もな」
「セビリア、騎士団長・・・ヨハンスとその家族は街を去る事になるが、残る家族に手を出すなよ」
「お約束します。長兄にも申し伝えておきます」
「それじゃ、お暇するので馬車をお借りしても良いかな」
「直ぐに用意させますので、暫しお待ち下さい」
「あのう・・・治療費は支払いますので・・・」
「ん、お抱えの治癒魔法師は?」
「先程の様な治療が出来る腕はありません。怪我が治ったからといってご迷惑はお掛けしませんので、お願いします」
えらく態度が大人しくなり、泣きそうな顔で懇願してくる。
複雑骨折しているであろう腕は、服の袖がパンパンになる程に膨れ上がり掌は黒ずんでいる。
《グレイ、嫌だろうけど彼奴の怪我を治してやってよ》
《あーい》
《なーおーれー》
公爵を睨みつけながらの治療だが、腫れ上がった腕が元に戻り黒ずんだ掌も綺麗に治っていく。
心得顔の執事が革袋を二つ捧げ持って来たので有り難く頂いておく。
* * * * * * *
用意された馬車にヨハンスと共に乗り、公爵邸を後に彼の妻子の元に向かった。
「頼みとは、タイラント公爵の隠居願いと謝罪文を王城まで届けて欲しいんだ。依頼料は金貨1,000枚でどうだ」
人を食った様な物腰の騎士団長・・・ヨハンスが、ポカンとしているのを見るのは面白い。
「それじゃ謝罪金は何の為に・・・」
「ああ、それはどうでも良かったんだ。謝罪金を支払った、その事実だけがあればね。序でに、首になる騎士団長への慰労金だな」
「幻獣を五頭も連れている非常識な奴だと思ったが、中々気が利くじゃないか」
「気が利く序でに、冒険者になるのならハイムントに行きなよ。抜け目のないおっさんだけど、ホールデンス公爵に紹介状を書いておくよ。無理に仕える必要はないけど、元の雇い主があれだから、断りの一つも言っておけば大丈夫だよ」
* * * * * * *
ヒューヘン宰相の下に急報が届いた。
曰く、ランディスがバテスト街道のエルバスからバネッサに入った所で、クロスボウと魔法使い多数の待ち伏せを受けたとの事だった。
此は伝令による急報で、続報を待たねば詳しい事は判らないのでやきもきしていたが、続報は一時間もせずに届いた。
ランディスは待ち伏せ攻撃を撃退してバネッサに向かったと。
ただ届けられた報告では攻撃側はほぼ全滅で、その数4、50人以上との事だった。
街道上での攻撃にて、戦闘終了後は野次馬の数が多くて調査が難しく、その後タイラント公爵の警備兵達が現場を封鎖したので正確な数は不明との事。
ランディスの行動監視と支援要員からの報告書では、バテスト街道を歩くランディスに対して、クロスボウや魔法部隊に拠る左右からの一斉攻撃だった事。
ランディスは攻撃を受けたが、その後攻撃側の頭上で連続した爆発が起き、攻撃側が甚大な被害を受けて闘いは終わったと締めくくられていた。
半日遅れて届いた報告書では、バネッサの出入り口の門や防壁が4、50mにわたり壊されていて、多数の被害が出ている事。
ランディスはタイラント公爵邸に向かったとの目撃情報があると締めくくられていた。
一番恐れていた事が起きている様だが迂闊に兵を動かせない、下手に動けばクラウディオ王国を刺激してしまう。
* * * * * * *
知らせを受けて国王陛下に報告をしたが、王国騎士団と兵の出兵準備と待機を命じられた。
「タイラントは、あの男と幻獣に勝てると思うか?」
「あの二頭だけでも、不意打ちか毒殺でなければ無理かと。今や五頭の幻獣を従えた彼を倒すなど、不可能でしょう」
「クラウディオ王国が動けば、ブリスト伯爵が耐えている間に兵を送り彼にも支援を依頼をせねばならない。決して居場所から目を離すなよ」
* * * * * * *
翌日届いた知らせは意外なもので、ランディスはタイラント公爵家の騎士団長とその家族と共に街を出て、王都方面に向かっているとの事だった。
追記として、タイラント公爵は健在だが多数の配下を失い、領都バネッサは騒然としていると書かれていた。
その知らせを持って国王陛下の執務室に向かった。
「新しい知らせか?」
「はい、陛下此を」
ヒューヘン宰相の差し出した報告書を読み、首を捻る。
「タイラントが健在なら呼び出せ!」
* * * * * * *
騎士団長・・・ヨハンスと共に家族を迎えに行き、妻子と妻の両親を馬車に乗せてバネッサを後に王都へ向けて旅立った。
エルバスを過ぎアブリルの街で代官屋敷に向かい、馬車を調達してヨハンスとその家族を王都に向けて送り出した。
ヨハンスとその家族の乗った馬車は、ゲラートに向かう途中でタイラント公爵の呼出状を持った急使とすれ違い、三日後に無事王都カンタスに到着した。
家族をホテルに預けると直ぐに王城に向かい、教わった通り王城の通用門にて口上を述べる。
ヨハンスの口上と差し出された書状を受け取った警備兵は、ヒューヘン宰相の名が記された書状を受け取ると、ヨハンスを待機所で待たせて宰相補佐官の下へ向かった。
宰相補佐官は差出人の名を見て即座にヒューヘン宰相に届け、ヒューヘン宰相は一読するとヨハンスを呼べと命じた。
110
あなたにおすすめの小説
薬華異堂薬局のお仕事は異世界にもあったのだ
柚木 潤
ファンタジー
実家の薬華異堂薬局に戻った薬剤師の舞は、亡くなった祖父から譲り受けた鍵で開けた扉の中に、不思議な漢方薬の調合が書かれた、古びた本を見つけた。
そして、異世界から助けを求める手紙が届き、舞はその異世界に転移する。
舞は不思議な薬を作り、それは魔人や魔獣にも対抗できる薬であったのだ。
そんな中、魔人の王から舞を見るなり、懐かしい人を思い出させると。
500年前にも、この異世界に転移していた女性がいたと言うのだ。
それは舞と関係のある人物であった。
その後、一部の魔人の襲撃にあうが、舞や魔人の王ブラック達の力で危機を乗り越え、人間と魔人の世界に平和が訪れた。
しかし、500年前に転移していたハナという女性が大事にしていた森がアブナイと手紙が届き、舞は再度転移する。
そして、黒い影に侵食されていた森を舞の薬や魔人達の力で復活させる事が出来たのだ。
ところが、舞が自分の世界に帰ろうとした時、黒い翼を持つ人物に遭遇し、舞に自分の世界に来てほしいと懇願する。
そこには原因不明の病の女性がいて、舞の薬で異物を分離するのだ。
そして、舞を探しに来たブラック達魔人により、昔に転移した一人の魔人を見つけるのだが、その事を隠して黒翼人として生活していたのだ。
その理由や女性の病の原因をつきとめる事が出来たのだが悲しい結果となったのだ。
戻った舞はいつもの日常を取り戻していたが、秘密の扉の中の物が燃えて灰と化したのだ。
舞はまた異世界への転移を考えるが、魔法陣は動かなかったのだ。
何とか舞は転移出来たが、その世界ではドラゴンが復活しようとしていたのだ。
舞は命懸けでドラゴンの良心を目覚めさせる事が出来、世界は火の海になる事は無かったのだ。
そんな時黒翼国の王子が、暗い森にある遺跡を見つけたのだ。
*第1章 洞窟出現編 第2章 森再生編 第3章 翼国編
第4章 火山のドラゴン編 が終了しました。
第5章 闇の遺跡編に続きます。
夫より強い妻は邪魔だそうです【第一部完】
小平ニコ
ファンタジー
「ソフィア、お前とは離縁する。書類はこちらで作っておいたから、サインだけしてくれ」
夫のアランはそう言って私に離婚届を突き付けた。名門剣術道場の師範代であるアランは女性蔑視的な傾向があり、女の私が自分より強いのが相当に気に入らなかったようだ。
この日を待ち望んでいた私は喜んで離婚届にサインし、美しき従者シエルと旅に出る。道中で遭遇する悪党どもを成敗しながら、シエルの故郷である魔法王国トアイトンに到達し、そこでのんびりとした日々を送る私。
そんな時、アランの父から手紙が届いた。手紙の内容は、アランからの一方的な離縁に対する謝罪と、もうひとつ。私がいなくなった後にアランと再婚した女性によって、道場が大変なことになっているから戻って来てくれないかという予想だにしないものだった……
1つだけ何でも望んで良いと言われたので、即答で答えました
竹桜
ファンタジー
誰にでもある憧れを抱いていた男は最後にただ見捨てられないというだけで人助けをした。
その結果、男は神らしき存在に何でも1つだけ望んでから異世界に転生することになったのだ。
男は即答で答え、異世界で竜騎兵となる。
自らの憧れを叶える為に。
神々に見捨てられし者、自力で最強へ
九頭七尾
ファンタジー
三大貴族の一角、アルベール家の長子として生まれた少年、ライズ。だが「祝福の儀」で何の天職も授かることができなかった彼は、『神々に見捨てられた者』と蔑まれ、一族を追放されてしまう。
「天職なし。最高じゃないか」
しかし彼は逆にこの状況を喜んだ。というのも、実はこの世界は、前世で彼がやり込んでいたゲーム【グランドワールド】にそっくりだったのだ。
天職を取得せずにゲームを始める「超ハードモード」こそが最強になれる道だと知るライズは、前世の知識を活かして成り上がっていく。
断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜
深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。
処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。
なぜなら彼女は――
前世で“トップインフルエンサー”だったから。
処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。
空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。
タイトルは――
『断罪なう』。
王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。
すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、
国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。
そして宣言される、前代未聞のルール。
支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。
処刑台は舞台へ。
断罪はエンタメへ。
悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。
これは、
処刑されるはずだった悪役令嬢が、
“ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。
支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、
それとも――自由か。
治療院の聖者様 ~パーティーを追放されたけど、俺は治療院の仕事で忙しいので今さら戻ってこいと言われてももう遅いです~
大山 たろう
ファンタジー
「ロード、君はこのパーティーに相応しくない」
唐突に主人公:ロードはパーティーを追放された。
そして生計を立てるために、ロードは治療院で働くことになった。
「なんで無詠唱でそれだけの回復ができるの!」
「これぐらいできないと怒鳴られましたから......」
一方、ロードが追放されたパーティーは、だんだんと崩壊していくのだった。
これは、一人の少年が幸せを送り、幸せを探す話である。
※小説家になろう様でも連載しております。
2021/02/12日、完結しました。
才能に打ち砕かれた日から、僕の最強は始まった
雷覇
ファンタジー
ワノクニ、蒼神流・蒼月道場。
天城蒼真は幼き頃から剣を学び、努力を重ねてきた。
だがある日、異世界から来た「勇者」瀬名隼人との出会いが、すべてを変える。
鍛錬も経験もない隼人は、生まれながらの天才。
一目見ただけで蒼真と幼馴染の朱音の剣筋を見切り、打ち破った。
朱音は琴音の命で、隼人の旅に同行することを決意する。
悔しさを抱えた蒼真は、道場を後にする。
目指すは“修羅の山”――魔族が封印され、誰も生きて戻らぬ死地へと旅立つ。
異世界転生してしまった。どうせ死ぬのに。
あんど もあ
ファンタジー
好きな人と結婚して初めてのクリスマスに事故で亡くなった私。異世界に転生したけど、どうせ死ぬなら幸せになんてなりたくない。そう思って生きてきたのだけど……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる