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099 神殿崩壊
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〈だっ、誰だ!〉
〈何か光ってるぞ!〉
〈さっきまで誰も居なかったのに・・・〉
〈其奴だ!〉
〈射て! 射てー!〉
〈教皇様の命だ、必ず仕留めろ!〉
戸惑いの騒めきの中、詠唱しているのだろう立ち上がる人々が見える。
《皆、目を閉じろ》
次の瞬間無数の火の玉が飛んで来るのが見えたので慌てて目を閉じる。
〈パーン〉〈パパパーン〉〈ドーン〉〈ドンドンドン〉と、不揃いな魔法の攻撃が始まった。
〈ドカーン〉〈パリパリドーン〉〈ガキーン〉
ドンドン、ガラガラ、バリバリと音はすれども結界に何の変化も現れない。
こんな訓練不足の魔法攻撃なら、王家魔法部隊の足下にも及ばない子供の遊びだ。
暫く放置していると《ランディ、煩い! もう良いよね》
《魔力は六つまでだぞ》
《あい》
次の瞬間、頭上が真紅に染まり〈ドオォォーン〉と轟音が轟いた。
* * * * * * *
「猊下、始まったようですぞ」
「魔法部隊に掛かれば、あんな野獣等一溜まりもなく捻り潰すでしょう」
満足気に頷いていた教皇だが、攻撃音が止まず一向に伝令が報告にこない。
「どうなっている?」
「攻撃音が聞こえているのですが」
「何故だ? 魔法部隊は何をしているんだ」
「お前、様子を見てこい!」
「ニルバート殿、本当にその小僧が来てボルテスを殺したのですか?」
「ああ、野獣を三頭も引き連れて暴れ回った不届き者だ」
鳥肌立てて部屋を見回すニルバート、視線の先には焼け焦げた壁や家具が残り昨日の攻撃を思い出させる。。
ガルベルトはニルバート達から話を聞き、扉こそ修理されているが焦げ後や家具の壊れ具合からみて、大した魔法攻撃には思えない。
とかく噂は大きく伝わるもので、それに惑わされて冒険者上がりの男を恐れているのだと思っていた。
〈ドオォォーン〉
〈ガコーン〉〈ドーン〉〈ガシーン〉 〈ガーン〉 〈ガラガラガラ、ドーン〉
「ななな、何だ?」
「うわーあぁぁぁ」
大神殿の方から轟音が聞こえてきて、不安に駆られたガルベルトが部下に怒鳴る。
「何事だ! お前、何の音か見てこい!」
聞いた事も無い異様な轟音が続き、教皇達を守っている騎士達を不安にさせる。
〈ガーン〉 〈ガラガラガラ、ドーン〉と聞こえた時には不安の余り震えだした。
この感覚は、あの男が目の前に現れたときに感じた恐怖だ。
その間も轟音は続き、地響きを伴って何かが倒れた様だ。
揺れる室内で顔を見合わせるが、不安から誰も口を開かない。
「申しあげ・・・ます。 大、大神殿・・が」
「はっきり言え!」
苛立ち紛れに叫ぶガルベルト大教主の前に、グレイのバンダナを掴んだランディスが現れた。
「えっ・・・」
驚くガルベルト大教主は、ランディスの隣りに現れたフォレストウルフとブラックキャットを見て腰を抜かして座り込んでしまった。
現れたランディスと野獣を淡い光りが包んでいる。
* * * * * * *
昨日の部屋にジャンプすれば、大教主の衣装を纏った男が何事か喚いていたが、俺達の姿を見て固まっている。
次ぎにウルファとブラックが現れると、ポカンと口を開けたまま座り込んでしまった。
男の前に跪いていた警備兵があわあわしているので、大神殿倒壊の報告でもしていたのだろう。
「お前がガルベルトか?」
座り込んだ男に声を掛けると、戸惑った様に教皇達に顔を向ける。
「昨日は留守だった様で挨拶が遅れたが、ランディスだ。教皇達から話は聞いていると思うが、俺に従うか死ぬかを選べ! 返事はその警備兵の報告を聞いてからで良いぞ」
にやりと笑って、男の前に跪いている警備兵を指差す。
信じられないと言った顔でフリーズ中なので、警備兵に「報告しろ!」と命じる。
「はっ・・・えっ」
「大神殿のことで報告に来ているのだろう」
「はぁー・・・大、大神殿が壊れました」
何とも間抜けな顔で俺に報告してくるが、お前の上司じゃないと訂正してやる程優しくないので、黙って笑っておく。
手を取り合って座り込んでいる、教皇猊下とレジナント大教主にニルバート大教主。
「あの程度の戦力で俺を殺せると思っているのか、考えが甘すぎるぞ」
「いえ・・・ランディス様の仰せのように手配は致しましたが」
「ん、俺を見た瞬間攻撃命令を出したし『教皇様の命だ、必ず仕留めろ!』なーんて叫んでいた奴もいたな」
皮肉っぽく伝えてやると、さも残念と言った表情で顔を伏せる三人。
「ところでお前達、命じていた金貨2,000枚の用意は出来ているのか」
「用意して御座います。お受け取り下さい」
傍らに控える、ボルテスと同じ衣装の男に頷くニルバート。
押されてきたワゴンの上には革袋が20個。
「ベルハルト、昼に俺の言った言葉を覚えているか?」
「はい、金貨2,000枚と仰せられました」
「まったく都合の良い耳だな。俺は『お前達には、毎年金貨2,000枚を上納してもらおうか』と言ったんだ。誰が纏めて2,000枚と言った」
不味った、誤魔化すつもりが駄目だったとの思いが顔に出ている教皇。
マジックポーチから短槍を取りだすとギョッとした顔になり、慌てて頭を下げで謝罪の言葉を口にする三人。
「ベルハルト、顔を上げろよ」
軽い感じで声を掛けると、許されると思ってパッと顔を上げる教皇。
その腹に短槍を深く突き入れ捻って抜くと〈あぁーぁぁぁ〉と情けない声と共に崩れ落ちるベルハルト。
〈・・・ランデ・・・さ・・〉何故、といった顔を向けていが、俺を甘く見すぎだよ!
「ニルバート、お前が教皇になれ。レジナントとお前、ガルベルト文句はあるまいな?」
「はっ、はい! 仰せのままに」蒼白な顔で最敬礼して答えるレジナント。
「ガルベルト、嫌か?」
血の滴る槍を見て硬直しているガルベルトに問うと「何故・・・」と馬鹿な言葉。
「俺に敵対し、支配下に置こうとしたり殺そうとしたんだ。それを許す代わりに年に金貨2,000枚で許すと言い、支払うと約束したんだ。約束を破るという事は、又俺を殺そうとするって事だよな。何時までも甘い顔をする気はない。お前はどうなんだ?」
「どうなんだ、とは?」
「終生俺に逆らわず、俺の僕となると三人は約束した。その証が毎年金貨2,000枚だが、その話は聞いているはずだ。お前はどうなんだと聞いているんだ」
「・・・従います」
「嫌になれば何時でも俺の命を狙えば良い。失敗すれば」
ガルベルト大教主の股間に雷光が走り〈バシーン〉と音を立てると、エビの様に腰から後退った。
ワゴンの傍らに立つ男に教主かと確認する。
「はい・・・教主を拝命致しております」
「レジナント、ガルベルト、此の男を大教主にしろ」
「それは・・・教皇猊下と大教主が推薦し、教主全員が認めないと大教主には・・・」
「ん、教皇と大教主が推薦すれば良いのだろう。それに反対する教主なんているのか? 俺の命に従うつもりがないようだな」
マジックポーチに手をやると「仰せのままに致します」とガルベルトが慌てて答える。
「お前達はよく判っていない様だが、俺は何時でも教団を潰すことが出来るんだぞ。教団が潰れても、アルティナ様を信じる者は気にしないだろう。むしろ金を毟り取る教団が無くなれば、皆に喜ばれるかもな」
冷や汗を流すガルベルトに、毎年12月12日に商業ギルドの俺の口座に入金しておけと命じておく。
「ランディス様、私にはその様な大金は御座いません」
大教主にと指名した男が、情けない声を出す。
「心配するな。教団には信者から毟り取った金が腐るほど有るので出して貰えるぞ。もしお前が出せなければ、残りの奴等が協力してくれるさ。協力しなけりゃ楽しい結果が待っているからな。頑張れよ、大教主様」
* * * * * * *
「申し上げます! 女神教大神殿が崩壊致しました!」
グレイン侯爵家王都屋敷の執事オルヴァからの知らせを受けて、教団周辺に多数の監視と観測者を貼り付けていたが、その内の一人が王城に飛び込んで来て、ヒューヘン宰相に報告する。
「崩壊とは?」
「はっ、大きな爆発音と共に神殿が崩れ落ちました!」
「グレイン侯爵が大神殿に入ってからか?」
「いえ、馬車が大神殿前を通り過ぎて直ぐ後、大神殿入り口の扉のところでファイヤーボールが爆発しました。その後神殿内で小さな爆発音等が聞こえていましたが、大爆発と共に神殿が崩れてしまいました。グレイン侯爵や幻獣の姿は見ていません」
「判った、引き続き監視を続けろ」
多数の観測者を教団周辺に貼り付けたが、誰も彼等の姿を見ていない。
転移魔法を駆使する幻獣が二頭もいれば、侵入出来ない場所などないだろう。
それに他の幻獣使いの従える幻獣と違い、彼の幻獣達は頭が良く独自行動をすることも多いと聞く。
今回の事で教団相手の煩わしさが無くなると、彼の行動の自由度が増すが此ばかりは彼の気持ち次第だ。
* * * * * * *
轟音を立てて崩れ去った大神殿。
何が起きたのか判らないが、今夜の監視対象が関係しているのは間違いない。
ランディス・グレイン侯爵、突如侯爵としてその名が広く知られたが以前から監視対象となっていたし、彼に対して王国は極めて慎重な扱いだった。
それがタイラント公爵との接触からは王国の全面的な支援を受けてバテスト街道を下り、クラウディオ王国と衝突が起きた。
その時には自分は王都に戻る様に指示を受けて離れていたので、監視の指揮を執っていた自分には詳しい事は判らなかった。
それがこの間侯爵として授爵した事を聞いたが、授爵理由がクラウディオ王国軍を一人で退けた聞き、改めて彼が従える幻獣の力を思い出した。
曰く王城での魔法披露で頑丈な小屋を吹き飛ばし、見物していたタイラント公爵とその取り巻き達に大怪我を負わせた事。
その前にエリンザス近くの草原で大爆発が起きたと噂になったときも、彼と彼の従える幻獣が関与していたらしい。
ホールデンス公爵様が彼に目を掛けたことから、自分に彼の監視が命じられて部下の指揮を執る事になったが、大神殿の崩壊も彼の従える幻獣の力なら可能かも知れない。
考えに耽る指揮官に、大神殿前を監視する者から連絡が来た。
誰かが大神殿に向かう門の前に現れたと。
〈何か光ってるぞ!〉
〈さっきまで誰も居なかったのに・・・〉
〈其奴だ!〉
〈射て! 射てー!〉
〈教皇様の命だ、必ず仕留めろ!〉
戸惑いの騒めきの中、詠唱しているのだろう立ち上がる人々が見える。
《皆、目を閉じろ》
次の瞬間無数の火の玉が飛んで来るのが見えたので慌てて目を閉じる。
〈パーン〉〈パパパーン〉〈ドーン〉〈ドンドンドン〉と、不揃いな魔法の攻撃が始まった。
〈ドカーン〉〈パリパリドーン〉〈ガキーン〉
ドンドン、ガラガラ、バリバリと音はすれども結界に何の変化も現れない。
こんな訓練不足の魔法攻撃なら、王家魔法部隊の足下にも及ばない子供の遊びだ。
暫く放置していると《ランディ、煩い! もう良いよね》
《魔力は六つまでだぞ》
《あい》
次の瞬間、頭上が真紅に染まり〈ドオォォーン〉と轟音が轟いた。
* * * * * * *
「猊下、始まったようですぞ」
「魔法部隊に掛かれば、あんな野獣等一溜まりもなく捻り潰すでしょう」
満足気に頷いていた教皇だが、攻撃音が止まず一向に伝令が報告にこない。
「どうなっている?」
「攻撃音が聞こえているのですが」
「何故だ? 魔法部隊は何をしているんだ」
「お前、様子を見てこい!」
「ニルバート殿、本当にその小僧が来てボルテスを殺したのですか?」
「ああ、野獣を三頭も引き連れて暴れ回った不届き者だ」
鳥肌立てて部屋を見回すニルバート、視線の先には焼け焦げた壁や家具が残り昨日の攻撃を思い出させる。。
ガルベルトはニルバート達から話を聞き、扉こそ修理されているが焦げ後や家具の壊れ具合からみて、大した魔法攻撃には思えない。
とかく噂は大きく伝わるもので、それに惑わされて冒険者上がりの男を恐れているのだと思っていた。
〈ドオォォーン〉
〈ガコーン〉〈ドーン〉〈ガシーン〉 〈ガーン〉 〈ガラガラガラ、ドーン〉
「ななな、何だ?」
「うわーあぁぁぁ」
大神殿の方から轟音が聞こえてきて、不安に駆られたガルベルトが部下に怒鳴る。
「何事だ! お前、何の音か見てこい!」
聞いた事も無い異様な轟音が続き、教皇達を守っている騎士達を不安にさせる。
〈ガーン〉 〈ガラガラガラ、ドーン〉と聞こえた時には不安の余り震えだした。
この感覚は、あの男が目の前に現れたときに感じた恐怖だ。
その間も轟音は続き、地響きを伴って何かが倒れた様だ。
揺れる室内で顔を見合わせるが、不安から誰も口を開かない。
「申しあげ・・・ます。 大、大神殿・・が」
「はっきり言え!」
苛立ち紛れに叫ぶガルベルト大教主の前に、グレイのバンダナを掴んだランディスが現れた。
「えっ・・・」
驚くガルベルト大教主は、ランディスの隣りに現れたフォレストウルフとブラックキャットを見て腰を抜かして座り込んでしまった。
現れたランディスと野獣を淡い光りが包んでいる。
* * * * * * *
昨日の部屋にジャンプすれば、大教主の衣装を纏った男が何事か喚いていたが、俺達の姿を見て固まっている。
次ぎにウルファとブラックが現れると、ポカンと口を開けたまま座り込んでしまった。
男の前に跪いていた警備兵があわあわしているので、大神殿倒壊の報告でもしていたのだろう。
「お前がガルベルトか?」
座り込んだ男に声を掛けると、戸惑った様に教皇達に顔を向ける。
「昨日は留守だった様で挨拶が遅れたが、ランディスだ。教皇達から話は聞いていると思うが、俺に従うか死ぬかを選べ! 返事はその警備兵の報告を聞いてからで良いぞ」
にやりと笑って、男の前に跪いている警備兵を指差す。
信じられないと言った顔でフリーズ中なので、警備兵に「報告しろ!」と命じる。
「はっ・・・えっ」
「大神殿のことで報告に来ているのだろう」
「はぁー・・・大、大神殿が壊れました」
何とも間抜けな顔で俺に報告してくるが、お前の上司じゃないと訂正してやる程優しくないので、黙って笑っておく。
手を取り合って座り込んでいる、教皇猊下とレジナント大教主にニルバート大教主。
「あの程度の戦力で俺を殺せると思っているのか、考えが甘すぎるぞ」
「いえ・・・ランディス様の仰せのように手配は致しましたが」
「ん、俺を見た瞬間攻撃命令を出したし『教皇様の命だ、必ず仕留めろ!』なーんて叫んでいた奴もいたな」
皮肉っぽく伝えてやると、さも残念と言った表情で顔を伏せる三人。
「ところでお前達、命じていた金貨2,000枚の用意は出来ているのか」
「用意して御座います。お受け取り下さい」
傍らに控える、ボルテスと同じ衣装の男に頷くニルバート。
押されてきたワゴンの上には革袋が20個。
「ベルハルト、昼に俺の言った言葉を覚えているか?」
「はい、金貨2,000枚と仰せられました」
「まったく都合の良い耳だな。俺は『お前達には、毎年金貨2,000枚を上納してもらおうか』と言ったんだ。誰が纏めて2,000枚と言った」
不味った、誤魔化すつもりが駄目だったとの思いが顔に出ている教皇。
マジックポーチから短槍を取りだすとギョッとした顔になり、慌てて頭を下げで謝罪の言葉を口にする三人。
「ベルハルト、顔を上げろよ」
軽い感じで声を掛けると、許されると思ってパッと顔を上げる教皇。
その腹に短槍を深く突き入れ捻って抜くと〈あぁーぁぁぁ〉と情けない声と共に崩れ落ちるベルハルト。
〈・・・ランデ・・・さ・・〉何故、といった顔を向けていが、俺を甘く見すぎだよ!
「ニルバート、お前が教皇になれ。レジナントとお前、ガルベルト文句はあるまいな?」
「はっ、はい! 仰せのままに」蒼白な顔で最敬礼して答えるレジナント。
「ガルベルト、嫌か?」
血の滴る槍を見て硬直しているガルベルトに問うと「何故・・・」と馬鹿な言葉。
「俺に敵対し、支配下に置こうとしたり殺そうとしたんだ。それを許す代わりに年に金貨2,000枚で許すと言い、支払うと約束したんだ。約束を破るという事は、又俺を殺そうとするって事だよな。何時までも甘い顔をする気はない。お前はどうなんだ?」
「どうなんだ、とは?」
「終生俺に逆らわず、俺の僕となると三人は約束した。その証が毎年金貨2,000枚だが、その話は聞いているはずだ。お前はどうなんだと聞いているんだ」
「・・・従います」
「嫌になれば何時でも俺の命を狙えば良い。失敗すれば」
ガルベルト大教主の股間に雷光が走り〈バシーン〉と音を立てると、エビの様に腰から後退った。
ワゴンの傍らに立つ男に教主かと確認する。
「はい・・・教主を拝命致しております」
「レジナント、ガルベルト、此の男を大教主にしろ」
「それは・・・教皇猊下と大教主が推薦し、教主全員が認めないと大教主には・・・」
「ん、教皇と大教主が推薦すれば良いのだろう。それに反対する教主なんているのか? 俺の命に従うつもりがないようだな」
マジックポーチに手をやると「仰せのままに致します」とガルベルトが慌てて答える。
「お前達はよく判っていない様だが、俺は何時でも教団を潰すことが出来るんだぞ。教団が潰れても、アルティナ様を信じる者は気にしないだろう。むしろ金を毟り取る教団が無くなれば、皆に喜ばれるかもな」
冷や汗を流すガルベルトに、毎年12月12日に商業ギルドの俺の口座に入金しておけと命じておく。
「ランディス様、私にはその様な大金は御座いません」
大教主にと指名した男が、情けない声を出す。
「心配するな。教団には信者から毟り取った金が腐るほど有るので出して貰えるぞ。もしお前が出せなければ、残りの奴等が協力してくれるさ。協力しなけりゃ楽しい結果が待っているからな。頑張れよ、大教主様」
* * * * * * *
「申し上げます! 女神教大神殿が崩壊致しました!」
グレイン侯爵家王都屋敷の執事オルヴァからの知らせを受けて、教団周辺に多数の監視と観測者を貼り付けていたが、その内の一人が王城に飛び込んで来て、ヒューヘン宰相に報告する。
「崩壊とは?」
「はっ、大きな爆発音と共に神殿が崩れ落ちました!」
「グレイン侯爵が大神殿に入ってからか?」
「いえ、馬車が大神殿前を通り過ぎて直ぐ後、大神殿入り口の扉のところでファイヤーボールが爆発しました。その後神殿内で小さな爆発音等が聞こえていましたが、大爆発と共に神殿が崩れてしまいました。グレイン侯爵や幻獣の姿は見ていません」
「判った、引き続き監視を続けろ」
多数の観測者を教団周辺に貼り付けたが、誰も彼等の姿を見ていない。
転移魔法を駆使する幻獣が二頭もいれば、侵入出来ない場所などないだろう。
それに他の幻獣使いの従える幻獣と違い、彼の幻獣達は頭が良く独自行動をすることも多いと聞く。
今回の事で教団相手の煩わしさが無くなると、彼の行動の自由度が増すが此ばかりは彼の気持ち次第だ。
* * * * * * *
轟音を立てて崩れ去った大神殿。
何が起きたのか判らないが、今夜の監視対象が関係しているのは間違いない。
ランディス・グレイン侯爵、突如侯爵としてその名が広く知られたが以前から監視対象となっていたし、彼に対して王国は極めて慎重な扱いだった。
それがタイラント公爵との接触からは王国の全面的な支援を受けてバテスト街道を下り、クラウディオ王国と衝突が起きた。
その時には自分は王都に戻る様に指示を受けて離れていたので、監視の指揮を執っていた自分には詳しい事は判らなかった。
それがこの間侯爵として授爵した事を聞いたが、授爵理由がクラウディオ王国軍を一人で退けた聞き、改めて彼が従える幻獣の力を思い出した。
曰く王城での魔法披露で頑丈な小屋を吹き飛ばし、見物していたタイラント公爵とその取り巻き達に大怪我を負わせた事。
その前にエリンザス近くの草原で大爆発が起きたと噂になったときも、彼と彼の従える幻獣が関与していたらしい。
ホールデンス公爵様が彼に目を掛けたことから、自分に彼の監視が命じられて部下の指揮を執る事になったが、大神殿の崩壊も彼の従える幻獣の力なら可能かも知れない。
考えに耽る指揮官に、大神殿前を監視する者から連絡が来た。
誰かが大神殿に向かう門の前に現れたと。
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