転移無双・猫又と歩む冒険者生活

暇野無学

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023 処分

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 旅の途中一度だけクロウの餌として、グレイウルフを1頭倒しただけだ。
 クロウが肩の上で魔力を巡らせているとき、風に野獣の臭いが混じっていると教えてくれた。
 クロウも初めての臭いだからと言ってたが、それがグレイウルフだった。
 魔力を纏っていても勝てそうもない、それが7頭の群れなのだ。
 逃げても良いが、強い奴の魔力たっぷりの心臓が食べたいってリクエストで、闘う事になってしまった。

 俺を取り囲み襲ってくるグレイウルフを、転移魔法でジャンプを繰り返し逃げ続けた。
 そうして常に一番弱そうな奴の後ろや横に行き、隙をみて手槍で何度も突き刺し何とか倒した。

 人の苦労も知らずというか、俺がジャンプする度に大喜びしていた奴だ。
 それがウニャウニャ言いながら、心臓にむしゃぶりついてご満悦。
 少し大きめの壺に残りの内臓を入れて今後のクロウの餌に取り置き、残りは草原に放置して野獣に片付けてもらう。

 《ぷぅふぁぁぁ、やっぱり強い奴の心臓は美味いなぁ。魔力が溢れてるわ》

 「ご機嫌ですな。始めは肉が食いたいと言ってた癖に、クロウの餌には苦労するぜ」

 《エディ、オヤジギャグの切れが悪いぞ。内蔵も肉だぞ、ただの肉より心臓の方が栄養魔力とも豊富なのは当たり前だろう。日本でだってホルモンの方が栄養満点だったろ》

 「俺はまだ若いの、御年17才のセブンティーンだ。ホルモンが美味いのは認めるけどな」

 阿呆な事を言いながら王都ラクセンに着いたのは、フルンを旅立ってから26日目の事だった。
 先ずエルグの宿に行き部屋に落ち着く、クロウは銅貨1枚の宿泊費を払うことで許可をもらう。
 アイリは相変わらずガーラン商会に行っている様だが3,4日に一度程度にしていると受付のアンナが教えてくれた。
 無事にやっているなら一安心だ、取り敢えず俺はクロウを入れる肩掛けのバッグを買いに出る。
 尻尾が太くて長い猫が肩に乗っていると目立つので、バッグに入って貰うことにする。

 《なあエディ、王都と言っても大した事ねえな》

 《そりゃー日本の大都会と比べたらそうだが、フルンの街に比べたら断然大きいし人も多いぞ》

 《そりゃそうかもな。しかしお互い不便な世界に生まれたよな、日本が恋しいぜ》

 《それより頭の中で考えて喋るの面倒なんだが、もっと楽な方法は無いのか》

 《何時も通り口で言えよ。但し猫に喋りかけてる変な奴と思われるぞ》

 なれないから疲れるんだよなー。
 クロウが尻尾を丸めて楽に収まる肩掛けバッグを買い、宿に帰るとアイリが待っていた。
 ガーラン商会には通いで行くけど住み込まない事にした、孤児院育ちの自分には窮屈すぎて落ち着かないと笑っていた。
 今は迎えが来たら行くけどそれも3,4日に一度程度にしてもらっているから気楽だと話す。
 途中俺のバッグに気づき、クロウを見て歓声を上げて抱き上げ頬ずりしている。

 《オイオイ、クロウ触られるのは嫌じゃ無かったのか》

 《男に触られるのが嫌なんだよ、可愛い姉ちゃんとイチャイチャするのは好きだぜ》

 《アイリと話せるか?》

 《話しかけてるけど駄目だな。日本人同士じゃ無いからかな》

 アイリにクロウとの出会いを話して宿にも許可を貰っていることを伝える。
 そしてクロウが言葉を理解していると話したが信用しなかった。
 当然だろうが此れから一緒に生活すれば判ると思うが、余所で話されると不味いので実験をしてみせる。
 クロウは不承不承だが、此れからの生活があるので協力させる。
 結果アイリがクロウを抱きしめて離さなくなり、最後にはクロウが嫌がって爪を立てる騒ぎになってしまった。
 
 まぁ、つやつやもふもふで言葉を理解するとなるとそうなるのは判るが、クロウも一匹の人格・・・猫格を有する存在だと判らせるのに疲れた。
 その日はアイリにとって驚愕の連続の一日だった、言葉を理解する猫と言うだけでなく、自分でクリーンを使い綺麗にするのを見て言葉を無くしていた。
 俺と話が出来ると知ったらどうなることやら、今から頭が痛いぜ。

 その夜アイリに俺が姿を消してからの王都の変化を聞いたが、これと言った話は聞かないと言われた。
 フルンのエルドバー子爵領は王都から来た代官が統治し、エルドバー子爵の家族は王都に連行された、使用人も半数は解雇されていると言うとびっくりしていた。

 貴族の醜聞を嫌い、王国がエルドバー子爵の事を内密にするのは判るが、軽い処分で奴がのうのうと生きているなら許せない。
 奴の生死の確認だけはしておく事にする。
 新たな新月の夜、再びエルドバー子爵邸に侵入してみると結構な数の使用人達がいる。
 探ってみると警備の者が建物を厳重に警備しているが、外部に対してというには少し不自然である。
 屋敷内にも警備の者が居るが、巡回せず部屋を守っている様だった。

 どうするか考えているとクロウが協力を申し出てくれた。
 使用人達の会話を聞き内容を俺に教えてくれると言うのだ、確かにクロウなら俺が魔力を纏って能力を高めるより良い耳してるからな。
 屋根裏部屋に無断宿泊して3日目の夜にはエルドバー子爵存命だが、領地は取り上げられ子爵以下家族全員各部屋に軟禁されている様だった。

 死んで無いなら俺が始末をつけてやるさ、然ししっかり準備をしておかないとアイリにも害が及びかねないので暫く放置だ。
 宿に帰ってアイリに話すと怒っていたが、どうしようも無いと諦め顔だ。
 暫くは大人しく王都で冒険者家業に励み時を待つことにした。
 その間クロウには魔力循環から放出を教え、今では一端の生活魔法使いだ。
 俺やアイリより余程習得が早く、これも猫又の成せる技かとクロウと二人で検討したが、やはり神様の領域の事は判らないと匙を投げた。

 クロウは俺が魔力放出していると魔力が見える為に、猫の習性からかよく魔力で遊んでいた。
 魔力が見えると魔力を纏っての行動も簡単に出来る様になり、此れなら少々の相手なら負けないと喜んでいた。
 ある日何かの拍子に自分が魔力を吸収出来る事を知り、最近では俺の魔力を吸収するのが日課になっている。

 考えれば当然な事だ、野獣の肉から魔力を食事として取り込んでいるのだから、純粋な魔力を取り込む事が出来ても不思議では無い。
 それを知ったアイリもクロウに魔力を与えて遊んでいる。
 その為クロウは食事で野獣の内臓を欲しがらなくなり、普通の肉や野菜等も食べる様になった。
 生きる為の餌から嗜好としての食事に変化したようだ、その顕著な例がアイリが食べるお菓子等に興味を示して味見をし、気に入れば催促している事だ。

 歳が明け少し暖かくなってから、俺とクロウは街の外で生活する事が多くなった。
 時々エルドバー子爵邸に潜入するが変わりなし、ならそろそろ引導を渡してやろう。
 何時もの様に闇に紛れてエルドバー子爵邸に潜入し、勝手知ったる部屋に跳び込むが執務室は無人。
 クロウに窓から確認してもらい、まずはニラガの部屋に跳ぶとベッドでぼんやりしているニラガ以外誰も居ない。
 俺が居るのも気づかないのでそのままフラッシュで目潰し、呻いている隙に後頭部へ鉄棒の一撃で意識を刈り取る。
 正妻の子オルトと3男のウルグも同様に片付け、猿轡と手足の拘束を済ませると本命の子爵様にご挨拶だ。

 エルドバー子爵の部屋に跳び込むと、寝ている子爵の喉に軽く手刀を打ち込み声が出せない様にする。
腹を殴り呻いているところを腕をねじ上げ縛り、軽く猿轡をして大声を出せなくして尋問だ。

 「エルドバーお前が何故生きている? 本来なら誘拐,奴隷売買,快楽殺人等でとっくに死んでいるはずだ」

 戒めを解こうとジタバタするので腹を蹴り上げ、耳元でニラガの様になりたいのかと聞くとギクリとして動きを止めた。

 「質問に答えろ」

 そう言って目の前に拳大の火の玉を浮かべて見せると、冷や汗を流して後ずさる。

 「御者のオイゲンの様に死にたいのなら何も言わなくても良いが、楽には死ねないぞ」

 「俺には公爵さまや侯爵,伯爵様達多くの高位貴族が後ろ盾としているのだ、お前が俺を殺せば国中の貴族を敵に回すことになるぞ。此れを解いて消えろ。王家ですら俺を殺す事は出来ないのだ」

 面白い事をペラペラ喋る奴なので口を塞ぎ、ベッドに大の字に括り付け小指の先程の火の玉を太股に押しつける。
 仰け反って振り落とそうとするが、太股に押しつけているので無理。
 反対側にも火の玉を押しつけると、文字通りジタバタしているが無駄な事だ。
 腹に肩にと次々に火の玉を押しつけていくと、失禁して気を失った。
 ウォーターでチョロチョロ顔に水を掛け続けると目を覚ましたが、火傷の痛みに顔を顰めている。
 猿轡を緩め再度尋問開始。

 「王家がお前を処分できない事は判ったが、ランセンの事は知らないか」

 ランセンと不思議そうに聞き返すので教会の神父だと教えると笑い出した。

 「そうかお前が奴を脅し供述書なる文書を捏造したのか。俺の失脚はお前のせいか、暫くすれば公爵様達が俺を自由にしてくれる。覚えておれよ小僧、泣いて許しを請うても無駄だからな」

 「それは無理だろう。俺が誰だかも知らないし、何処に住んで居るのかも判るまい」

 「お前の居場所など王家が探してくれるさ、ニラガが世話になったな」

 「気にしなくて良いよ。お前も直ぐに奴と同じ様にしてやるから」

 ビクッとして俺を見つめてくるので、奴の鼻先に火の玉を出現させてやる。
 顔を反らし逃げようとしても大の字に縛られ逃げられないが、火の玉の怖さが身に染みたのか必死で逃げようとしている。
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