僕の番が怖すぎる。〜旦那様は神様です!〜

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二章 あいつの存在が災厄

時々、呆れるような名前があるのはお前が原因だろうが! 弐

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「そういう訳で私たちは民たちにその姿を見せますので、それなりに見れる姿にしなければなりません」
「そう…なんですね」

 義母が僕の輿入れの際、とんでもない量の着物を誂えそうになり、慌てて朱点が止めたと言う話を聞いていた。
『数、百、年、分…』と言っていたので凄まじい量だろう。

 朱天や義父の物は全て義母が選んだもので、誰かを着飾らせたりするのがお好きらしく、ご趣味であるらしい。
 今、お召になっているものも大変趣味が良い物で、ご自身が着飾り外に出ることも、とても楽しみにされているご様子だ。

 (監禁生活の反動だろうな)

「百合はとても美しい、可愛い子なので…これは密かに楽しみにしてます。
そうだ!瑠璃が幼い頃に着ていた物と同じものを誂えても良いですね!
ああ、でも瑠璃はあの美しい夜空色の瞳に合わせた物が多かったですし……悩みますね」

 ニコニコと笑われそう仰いながら、ご自分と僕の衣装を決めていかれる。
 茨木の母など従者たちが色々と衣を持ってきて、それを僕にあて合わせる。
 帯や飾りも沢山の物が部屋に運び込まれその量にビックリする。

 (床が見えない!行李の上に何個行李を積んでいるんですか?!)

 義母は耳長寄りの僕と似た色合いの髪と目に肌をお持ちで、

「私の若い頃の物もきっと似合います!」

 などと仰られて色々持ってきてくださる。

 ………が、中にはどう見ても女物な仕立ての着物がある。

 義母はそういった趣味でもお持ちなんだろうか?
 少し…困惑してしまう。

 そしてそれを「あの子はこれが好きでした」なんて仰いながら勧めてくださるから…
 それも困る。

 (あいつが好きなら…イヤイヤイヤイヤ!)

 お義母様はニコニコとされているがどうしよう?

 汗が止まらない。

「陛下、若様はお妃様のお衣装をご自分で用意されます。程々になさいませ」 

 微妙な顔をしていたら茨木の母、柑子コウジが助けてくれた。

「そうでした。あの子は百合の為に、朱のものを用意す…あ!」

 少ししょんぼりされる義母。

「言ってしまいましたね…」
 
 その後はニコニコと笑われて、誤魔化しておられる。

 (こういうところがお義父様に可愛く思われているんだろうな…)

「…朱天が用意するものを楽しみにしています」

 僕は義母にほほえみ返した。
 どうやら女装は回避できたみたいだ。

 柑子は茨木と同じでこういう気遣いの出来るひとで助かる。

 ◇
 
「それからこれらの資料を見て名付けの参考にしなさい」
「はい、お義母様」
「私は百合があの子に良い【名】をつけたことをそれを知っていますが…」

 因みに僕が『天』を付けたことは、未だにそこまで広まっていない。
 不思議なほど僕のすることは評価されず、そこがまた辛いが、朱天が少し探りを入れるというので、早々に解決するかと思う。

「…あのアホのこともあり、みなが怖々としているのです」

 少し遠い目をして話す義母の口がまた重くなる。

 アホアホ言っておられるが、この方は物凄く朱天を可愛がっている。
 それこそ全肯定する勢いで可愛がっている。
 未だに「私の可愛い子」と言って頭を撫でることもあるくらいで…正直引いたくらいだ。

 (溺愛ってやつだよ)

 その義母が先程から怒り、こんなにも口が重く、話すことすら躊躇する。
 そこまでさせる何か大きなやらかしをしたのだと確信した。

「どうか形だけでもこれを読んでおいて欲しいのです。……出来ますか?」

 見るとあいつの乳母であった柑子も首を縦に振り、

「若様のそれは大変酷いものです。感性というものが全くございません」

 そんな事を言うので、一体どんな事をしたんだとそれを聞きたくなる。

 義母から渡されたのは、大変分厚い色の名前や植物や花の名前に歌を綴ったものなどの沢山の書物だ。
 魂をてそれしか思い浮かばない者もいるが、それは義母の言うようにごく稀だ。
 だからこういったものから着想を得て、名付けをする。

 鬼は下位のものでも二、三百年は生きる。
 それだけ長い間使うものだから「慎重にしなくてはいけない」と義母は突然オスっぽい口調に変わり、何度も念を押される。

「あのアホや私、百合などは【名】を付けられても拒絶することが出来ますが、下位の鬼どころか上位の鬼の赤子でも、それは難しいです」

 (難しいというより無理です!お義母様!!)

 僕が『天』を授けた時に朱天は簡単にそれを祓うことが出来た。
 だが、そんなことを出来るのはあいつに義母、それから義姉くらいで普通は出来ない。

 力はあるが鬼の呪術に疎い姉や僕には無理だ。

 やはり義母の感覚はズレている。

「それに付け直すことは、【名剥がし】で魂を損傷させますから、なかなか難しいですし…ね」

 義母はとんでもない恐ろしいことを仰られた。

 もし失敗したら、『罪びとにすることを赤子にするから気をつけろ』と僕に注意したのだろう。
 しかもその言葉の後にニコリと微笑まれたが…

 (仰られたお言葉もその笑顔も、もの凄い精神的な圧力です!
 妊夫には厳しいものがありますよ!お義母様!!)

 流石に赤ちゃんだとショックで死んでしまうかもしれないので、そんなことはされないだろうが…
 やっぱり義母の感覚はズレていた。


 茶休憩も終わり引き続き義母の教えは続いた。

 因みに朱天の被害・・にあった者を戒めとして紹介された。
 彼らは本当にそれ・・が言い難いという様な、そんな死んだ目をしてそれを名乗った。


 結果…僕は自分のお腹のこの子も含め、【名付け】は本当に大変だと実感した。

 そして僕はあいつをちょっと叱らないといけないと思った。


 ◇◇◇


 はっきり言おう。みんなはネーミングセンスが無いときは無難な名前にしたほうが良い。
 私もマリーだしな。母も父も聖人の名から取っている。

《最近はおかしな名前のやつも多いからなぁ…》
《ゲームやアニメキャラの名前とかは痛いしな》
《簡単に改名出来ないのは辛いわね》
 
 魂に一番最初にかける呪い祝福で、その子の在り方を左右するから難しいんだ。
 それに力のあるものにしかそれを授けることは出来なくて、親以外ではあいつを除けば私か義母くらいしか授けるのは無理だった。
 
《リリィの子供は出来ないのか?》

 あの子ね……………遺伝子の怖さを知ったとだけ言っておくよ。

《シュテンはセンスが皆無なのね?》

 あいつはね…それはね……酷いとかそんなんじゃなくて常識が欠落していた。


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