“元“悪役令嬢は二度目の人生で無双します(“元“悪役令嬢は自由な生活を夢見てます)

翡翠由

文字の大きさ
31 / 504

もしかして詰んだ?

しおりを挟む
「ーー頼みがあってだな。少し、ベアの戦っているところを見せてほしいのだ」

「え?」

「ダメか?」

 いや、別に嫌ってわけじゃないけどさ………。

(これって、まずい状況?)

 あの、私ってさ、実際の戦っている姿は基本的に誰にも見せないようにしているんよ。

 見せたらいろいろと面倒なことになりかねんのだよ。
 無理に隠そうとしているわけではないけど、あまり見せたくはないというのが私の心情である。

 主な理由としては、この国の徴兵制度にある。

 徴兵制度とは、簡単にいえば戦争時に行われる、兵を領民から集う制度である。
 戦争においては、数がものを言う。

 いくらその一人が強かったとしても、数の暴力の前では守るものも守れず、攻めるものも攻めきれない。

 数を多く揃えるために弱くてもいいからちょっと戦争行ってくんね?

 って言う、死の宣告だ。

 そして、徴兵対象には貴族も入る。
 力の強い人物は国王でなくても、地位が高い権力者などに徴兵されることが多々ある。

 私が力あるとは思わないけど、ここでもし才能あるんじゃねこいつ?

 みたいな風に思われちゃったら、私の計画にいろいろと支障が出る。

 一つ目

 私の家出が妨害されるかもしれない

 二つ目

 学院の初等部に入れられる可能性もある

 一つ目に関してはまじでやめてほしい。
 有能な人員を逃さんと、上層部連中が乗り出してくるかもしれない。

 自信過剰だとは思うけど、今までの経験上私レベルの五歳児ってレイくらいしか知らない。

 五歳かは知らないけど、少なくとも普通の大人よりかはまともに戦える。
 心が私みたく成長していないからレイは多分徴兵されない。

 っていうか、子供は使える人材でなければ徴兵なんてされない。
 使えるというのは戦場で怯えないという意味もある。

 まあ、私の場合は普段の立ち居振る舞いで、肝は座っていると思われていることだろうから多分、私の場合は徴兵される。

 そこそこ強くて、肝も座っていて、貴族家の娘というのが少々ネックだが、徴兵しない理由はない。

 別に権力者というのは貴族だけのことを指さない。
 故に私のことをなんとも思っていないような連中はいくらでもいるというわけだ。

 二つ目に関していえば、なんとかなる。
 私が悪役ムーブをかませば、どうにでもなるだろう。

 ただし、学院を追放されたと、地位とかいろいろな人との関係が全て崩れ去るけれど………。

 だが、だからといってそれをやりたいわけではないのは、わかるだろう?
 前世の私なら喜んでいたかもしれないけど、今世ではそんなことない。

 人間関係に関しては悪くなるのは別にいいんだ。
 ただ、そのせいで多方面から変な噂をされると面倒なのだ。

 別に人間好き嫌いあるからしょうがないんだけど、私情で私の人生を終わらせるのは是非ともやめてほしい……………。

 というわけで、できることなら二つ目もやめてほしい。

「嫌なら嫌と言ってくれていいのだぞ?」

「いえ、やらせてもらいます」

 だからと言って、私に反抗する権限はないのだ。
 前世では、親孝行がそんなにできなかった私。

 今世でもそうなるだろうけど、それまでに少しだけでも父様の描く“いい子“になりたいという思いが私の思考を邪魔してくる。

 “嫌だ“というだけで、すべての可能性をゼロにすることができるが、私にその選択をすることはない。

「そうか、では領内にある訓練場まで一緒に来てくれるかな?」

「え?」

 リュース辺境伯が私に向かってそう言葉を放つ。

(え、待って待って?領内の?訓練場って………)

 いや、きっと気のせいだろう。
 私の予想が正しければ、私が行ったことがある場所だが、きっとそんなことはないだろう。

 だが、きっと違うだろう。

 私はそれを信じて、二人についていく。


 ♦︎♢♦︎♢♦︎


 そんなことを思ってた時期が私にもありました………。

「おお!さっきの嬢ちゃんじゃないか!またきたのか?」

「「ん?」」

 二人の視線が私に向かう。

「いや、きっと気のせいですよ!ほら早く中入りましょう!」

 私は二人を抜いて先に進んでく。

「それで、私は何をすればいいのですか?」

 ついてきているであろう二人に向かって、振り返りがながら問う。

「ああ、私の娘と戦ってもらおうかなと思ってな」

「娘…………ですか?」

 娘ってことは私と同じような年齢なのだろうか?

「十五になるのだがーー」

 全然違った!

 わたしと十歳差もあるじゃないの!
 いや、さすがに私のことを過大評価しすぎである。

「それで、その方は今どこに?」

「ああ、ここで訓練でもしてるんじゃないか?」

 いや、居場所知らんのかい。
 娘の居場所知らんとか、どんな放置教育や。

「お?いたぞ」

「?」

 二人の視線の方向に私も視線を向ける。
 そこにいたのはーー

「あ、ヴェール……………さん?」

 嫌な予感がする。
 いや、きっと周りにいる人たちの誰かだ!

 きっとそうに決まってーー

「おーい!ヴェール!」

 はい、乙でした帰ります!

 あざした、じゃねばい!

「どこにいくんだ?ベア」

 まあ、父様に見つかるんですけどね!

「いや、なんでもないですヨー」

 私はヴェールさんの方に向かう。

「おお!父上じゃないか!それとーー」

 私がヴェールさんの視界に入り、一瞬口ごもる。

「お嬢さん……………お嬢様もいるじゃないか!」

 そこ敬語にしないで!
 気まずくなるから!

「む?もう知り合いだったのか?」

「ああ、すまんすまん。言い忘れていたんだが、今回の旅で護衛につけたのが彼女だったんだ」

「そうだったのか、それは都合がいい。だったら早速やってもらおうか」

「何をですか、父上?」

 あぁ、話がどんどん進んでいってしまう………。

「少し模擬戦をして欲しくてな」

「模擬戦………ですか?」

 ヴェールさんが苦い表情になる。
 ああ、もうほんとすみません………勝手に試合終わらせておいて図々しいですよね、できたら断ってほしい………っていうか、断ってくれません?

「すみません父上。もうすでに模擬戦はしてしまいました」

「む?そ、そうか」

 ナイスです!ヴェールさん!
 まじでありがたい!

 と、残念でしたねお二人さん!
 私は試合に“負けて“しまったので、さっさと興味なくしてください。

 結果を聞こうとするタイミングを見計らう。

「結果はーー」

「私の負けです!」

 食い気味すぎただろうか、三人とも驚いた表情をしている。
 だが、このぐらい強調しないと二人は興味を無くさないだろう。

「いや、でも見てーー」

「負けです!」

「しかし、この目でーー」

「負けです!」

「いやーー」

「負けです!」

「でーー」

「負けです!」

「……………」

 よし、これでいいだろう。
 そろそろ興味がなくなっただろう。

 自分の娘に負けた時点でそこまで使えないとな!

「いえ、決してお嬢様が負けたわけではありません!」

「何?」

 いや、口挟まんといてくれますかな、ヴェールさん!?

「私は本気を出して戦いました。得意なレイピアも使ったんです!」

「ほう?」

「それでも攻めきれませんでした………それに負けというのは、お嬢様が勝手に言っただけで私は決して彼女が負けたとは思ってーー」

「ストップです!」

 私は止める。
 やめてーや!

 その言い方だと、私が実力隠しているみたいじゃん!

「ほほう?」

 疑いの視線が私に集まる。

 待ってください誤解です!

 なんて言ってしまえば、最後、信じてくれなくなる予感がする。
 あれだけ、負けですと豪語してしまった手前下手にそれを口にすることができないのが憎たらしい………。

「Aランクにも届きそうな私の娘と互角とは………得意とするのは魔法ではなかったかな?」

「あ、えっとーー」

「確か、そう言っていたな」

 父様が口を挟んでくる。

(勘弁してください!)

 私の計画が………。

 と、そうしているうちに何かを考え込んでいたリュース辺境伯が顔を上げる。

「ふむ、今はベアトリス嬢のいうことを信じよう」

「え!?」

 ありがとうございます!
 一生ついて………はいかないけど、精一杯尊敬します!

「代わりにだが………」

 代わり?

 再び嫌な予感がしてくる。
 こういう時の間はだいたい当たるのが非常に残念なところ。

 今回もまたーー

「では、もう一人の私の娘とも戦ってもらおうか」

「あの、拒否権はーー」

「よし、では早速向かうとしよう」

 ……………。

 私の人生、もしかして詰んだ?
しおりを挟む
感想 33

あなたにおすすめの小説

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

婚約破棄で悪役令嬢を辞めたので、今日から素で生きます。

黒猫かの
恋愛
「エリー・オルブライト! 貴様との婚約を破棄する!」 豪華絢爛な夜会で、ウィルフレッド王子から突きつけられた非情な宣告。 しかし、公爵令嬢エリーの心境は……「よっしゃあ! やっと喋れるわ!!」だった。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

婚約破棄された翌日、兄が王太子を廃嫡させました

由香
ファンタジー
婚約破棄の場で「悪役令嬢」と断罪された伯爵令嬢エミリア。 彼女は何も言わずにその場を去った。 ――それが、王太子の終わりだった。 翌日、王国を揺るがす不正が次々と暴かれる。 裏で糸を引いていたのは、エミリアの兄。 王国最強の権力者であり、妹至上主義の男だった。 「妹を泣かせた代償は、すべて払ってもらう」 ざまぁは、静かに、そして確実に進んでいく。

処理中です...