“元“悪役令嬢は二度目の人生で無双します(“元“悪役令嬢は自由な生活を夢見てます)

翡翠由

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因縁

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 逃げて逃げて逃げて……。

 とにかく逃げまくった平衡感覚が狂ってしまうかもって思うほど、飛びまくった。

 途中までトーヤがどこまで追ってきているか確認してなかったが、それが良かったのか、いつの間にかトーヤを撒くことができた。

「ひとまずは安心……だよね?」

 相手が勇者だからなおさら不安になるよね。
 どんな技を使って追いついてくるかわからない。

 初めて出会った時、追いかけっこみたいな感じの状況になったことがあるのだが、その時は普通に追いつかれたよね。

 あの時と比べると、トーヤ、遅くなったりしてる?
 いや、弱体化する勇者なんて聞いたことない。

 ってことは、やっぱり、本気じゃないということだけ。
 本気じゃないからこそ、私は追いつかれずに、逆に相手を撒ききることができたわけだ。

「ちょっと……流石に疲れたわ……」

 私は今現在潜んでいる木の上で目を閉じる。
 ユーリもどうにかおっこちていないようで、私の服の中でモゾモゾ動いている。

 痒くなるからやめてほしい。

 そう思っていたら、服から出てきて、違う木の幹に飛び移る。
 そして、毛並みを整え始める。

「お気楽でいいわね……」

 私は現在、生死と今後を分けた鬼ごっこをしている最中だというのにね……。

 もう少しの間休んでいてもバチは当たらないだろう。
 というわけで、私はそこでゆっくりすることにした。

 インビジブル&気休めに気配を消しておく。

 これで見つかったら、逆にすごいね君って褒めるわ……。
 そんなわけで、私は木の上で一休みしようとした時だった。

 ガサッという音がする。
 やはり、神様は私に厳しいようで、そう簡単には休ませてくれないようだった。

 今度はなんだと、身構え、音を出した人物を確認する。

 人じゃありませんように、という願いが通じるわけもなく、影は人の形を型取り……

(あれ?)

 出てきたのは、白いドレスを着た女の人だった。

 茶色の髪の毛で手には簡素なバッグを持っている。
 嬉しそうに微笑みながら歩いていくその様は、まるで童話の中にいそうな人物だと思わせるほどだ。

 そして、何故だか私はその女性から目が離せなくなった。

 いや、別に綺麗すぎるからとか、そういうんじゃないからね!?

 ただ、なんだろう……。

(どこかで見た気がする……)

 記憶上ではないが、なんとなく親しかったような?
 そんなわけないと思いつつも、そんなことを考える。

 そして、再びガサッという音が聞こえてきた。
 今度こそ、トーヤ!?

 と、崩しそうになった体勢を再び立て直したが、それは無駄だったようだ。

 もう片方からは黒い服を着た男の人?が出てきた。

 前にいる女性に話しかける。
 残念ながら何を言っているのかは聞こえない。

 そして、男の方もなんか見たことがあるような……。

(でも、私の記憶には……あ!)

 思い出すは五歳の誕生日。
 三年前だった。

 私の屋敷の屋根で、不適に笑う男がいた。
 そいつは黒い服を着て、フードをかぶっていた。

 ちょうど目の前の男のように……。

(女の人が危ない!)

 そう思って身を出そうとした瞬間、

「!?」

 男が短剣を引き抜き、目にも止まらぬ速さで突き刺した。
 女性は倒れる。

 地面には血が散乱し、女性の服は血で赤く染まってしまった。

(あ、あれ?)

 こんな時だというのに、体が動かない。
 なんだろう?

 思うように体が動かせずに、硬直している。
 それに加え、

「え?」

 顔からなにか冷たいものが流れ落ちた。

(な、なんで?)

 それが何かははっきりとわかった。
 だが、何故流れたのかが理解できなかった。

 それにこの、ポッカリと何かが空いてしまったかのような気分は一体なんだ?
 こんな気持ちになったのは、前世で私が処刑された時以来だった。

(や、やだ……こんなこと考えちゃダメ……)

 一応トラウマなのだ。
 思い出したくない。

 感情を殺して、平常心に戻る。

(そう、今の私は前世とは違う。もっと優しくて、強くて……)

 気持ちが戻ってきた。
 そこに、苦しいような気分はなく、その代わりにモヤモヤする気分だけが残った。

 って、こんなこと考えている場合じゃないわ!

 そう思って、もう一度男の方を見る。

(あれ?また増えてる?)

 今度は小さな獣人だった。
 私と同じくらいの背丈をしている。

 普段だったら愛らしいなあ、とか思うのかもしれないが、今はそんな気分ではなかった。

 それにその獣人の方も、怒りに満ちた顔をしている。
 きっとあの女性の知り合いだったのだろう。

(助けなきゃ……)

 なんとなくそう感じた。
 無視してもいい。

 そんな考えは浮かんでこなかった。
 私は飛び出す。

 魔法を解除し、それなりに本気で……。

 不意打ちだから当たるかな?

 とか思っていた時期が私にもありました。

「三年ぶり?私の誕生日めちゃくちゃにした件、忘れたわけないでしょうね?」

 皮肉たっぷりでそう言ってやった。

「やあ、ベアトリス。ここにくるかもとは思ってたけど、まさか勇者は巻いたのかい?」

「なんであんたがそれを知っているのかは後で聞いてやるわ」

 男が短剣を振り上げる。
 足を捻り、男の拘束から抜け出して、私は男の足を狙って蹴りを入れる。

「あれ?」

「あはは!勇者と戦って疲弊しているみたいだね!」

「うるさいわね……」

 びくともしなかった。
 足元は人間が体を支える大事な場所。

 崩してしまえば、後は勝手に倒れる。
 だが、この男はどうだろう?

 硬すぎるのだ。
 どうやったらこんな風になるの!?ってぐらい……。

 後ろに飛び退き、一度体勢を立て直す。

「あ、ベアトリス、さ……ん」

「あ?なに?」

 隣にいる獣人が声を上げる。
 その声はどっかで聞いたことある声だった。

 結構最近だったりするかな?

 聞き覚えがある。

 誰だっけ?
 一番最近に話すようになったのはフォーマだよね。

 もう、声を聞き飽きるくらいに……。

「あ、フォーマと戦ったときの人?」

「え?フォーマ?」

「白装束だよ」

「あ、はい……」

 やっぱそうだった。
 普通に人間かと思ったら違ったわ。

 だから、私の攻撃も止めれたんかな?
 知らんけど。

「それより」

 獣人は顔つきを変える。

「僕に相手をさせてほしいです」

 決意に満ちたような表情で、獣人は告げる。

「できんの?」

 指を刺した方向にいるのは女性を刺した男。
 一人きりで勝てるとは到底……。

「あはは!お前程度じゃ俺には勝てねーよ!」

「………!」

 ガルルと唸り出す獣人君。
 君の気持ちはよくわかる。

 知り合いが死ぬって、普通経験しないもん。
 理性保ってる分すごいよ。

「二人なら……」

 大剣を瞬時に取り出し男に斬りかかる。

「おっと!」

「二人なら、それなりにやれるんじゃない?」

「おいおい勘弁してくれよ……親子揃って連続かよ……」

「親子?」

「お前は知らなくていいよ」

 短剣で大剣は弾かれる。

「獣人君」

「はい!」

「手伝うからあいつぶっ飛ばすよ!」

「はい!」

「いい返事ね」

 私は、大剣を構えて再度、突撃をする。
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