“元“悪役令嬢は二度目の人生で無双します(“元“悪役令嬢は自由な生活を夢見てます)

翡翠由

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儚い命(傀儡視点)

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 斬り合いは永遠に続くことはない。

 いや、斬り合いではなく、リンチである。

 そう、傀儡こと俺はボコされていた。
 まじで死んでしまうと思ったくらいに、メアリにボコボコにされている。

 メアリが本気ではないからか、俺の体は原型を保っているのが不幸中の幸い。
 こちとら、武器が折れて素手で戦っているのが現状。

 対して相手は魔法で創り出した剣を使っている模様。
 さらに、相手の方が実力でも上。

 あれ?

 人生詰んだ?

 そう思えるくらいに身体中ズタズタに斬られまくる。
 だが、タダで死ぬつもりはない。

 少なくとも道連れにはするつもりだ。
 なんとか、ベアトリスと獣人はなんとか抑えられている。

 あの二人がこっちに向かってくる前に、メアリを再起不能にする。
 それぐらいしなければ、俺の死が無駄になるからね。

 うん……。

 ほぼ確定で死ぬから。
 ただ、それは肉体での話だ。

 ワンチャンユーリ様の時と同じように脱出できるかもしれない。
 その時は、また謹慎だけで済む……といいなー。

 謹慎と言われつつ、結構活発に活動しちゃったけどね!

「しぶといですね」

「褒め言葉として受け取っておくよ」

 苦い表情をするメアリ。

 そこで疑問に思った。

 なぜ、必死になって殺そうとしているのか。
 メアリの実力なら、余裕を持って倒せる。

 わざわざゆっくりと時間をかけて倒す必要なんかない。
 なのに、なぜ本気を出さない?

 獣人や、ベアトリスも戦っているのに、長引かせるのはおかしい。

 ってことは、

「本気を出せないとか?」

 今までのメアリについては協力者の少女から伝え聞いていた。
 まあ、勇者とリアルガチでタイマンできるくらい強かったらしい。

 は?

 ってなるよね。
 それを親子揃って引き分け……二冠達成おめでとうございます!

 とは、ならないが、さすがにそんな実力者なら俺なんて瞬殺だ。

 だが、どうやら少し会話が噛み合わない。

 ベアトリスとメアリ。
 お互いがお互いのことを知らない人物……赤の他人のように接していた。

 その様子から、俺の使った“能力“はまだ効果が残っている模様。
 記憶はまだ戻ってないのだろう。

 記憶と一緒に、本来の力も忘れたのか?
 それはどうでもいいが、そこら辺の理由によって、本気を出せないのは間違いない。

「だったら、俺はとことん時間を稼ぐまでだ」

 ベアトリスはオリビアに攻撃できない。
 獣人の方は実力不足。

 であれば、俺がこのまま耐え切れば、獣人の方から拮抗が崩れてやがて勝てる。
 それまで耐えるのみ!

「まずいわね……」

 何がまずいのかはわからないが、メアリから焦りを感じ取れた。
 何かがあるのか?

 魔力が少なくなっていることから、剣での戦闘が困難になりつつあるとかか?
 どっちにしろ俺は、今まで通りにやるだけだ。

 そう思っていたが、

「そろそろ、本気でやらなくちゃ」

 その声とともに、メアリが内包している魔力のほとんどが外に溢れ出してくる。
 それは徐々にメアリの体を覆っていき、やがて鎧と剣に変化する。

 先ほどまで持っていた剣よりも一回り大きく、鎧は白く輝き、メアリの全身を覆っている。

「次で仕留める!」

「やれるもんならやって——」

 そう言おうとした時だった。

「あ、れ?」

 視界が反転する。
 何も見えなくなったわけではない。

 目線下にオレンジ色になった空が見え、上に地面が見える。

 そして、地面の方向に視界が落ちていき、

「お、俺の体……」

 立ち尽くした自分の肉体が見えた。
 しかも、首がない状態で……。

(はは……こんなの勝てるわけないだろ)

 要するに首を斬られたのだ。
 一瞬のことすぎて、まだ脳は動いている。

 だが、じきにすぐ止まるだろう。

 その前に性質を使って、魂を取り出さないと……。

 そう思い、残りの魔力を使おうとした時、

 《ちょうどいい。魔力がきれかかっておったのだ》

 そう声が聞こえ、一匹のキツネが近づいてきた。

『な!?ユーリ……』

 そこには、俺が連れ帰ろうとしていたキツネがいた。

 《魔力、もらい受けるぞ》

 そう言って、俺が使おうとしていた発動仕掛けの魔法分の魔力……つまり全ての魔力がゴッソリと奪われた。

(あはは……こりゃ一本取られたな)

 こうなったら、もう俺の逃げ出す方法はないわけだ。
 つまり、

 死

 俺はここで死んだ。
 肉体もやがて腐るだろうし、復活は無理そうかな?

(まったく、ベアトリスたちに関わるとろくなことがないな……)

 それだけは言えるだろう?

 ベアトリスがいくところ全てに、組織の陰謀があるというのに……。

 八咫の雲という組織があった。
 そこは俺たち黒薔薇に、物資を届ける役割を担っていた。

 だが、そこもベアトリスに潰された。
 逆にこっちから襲撃を仕掛けたら、幹部が行方不明になり、連れ出した魔物はほぼ全滅する事態。

 ここ数年で、うちの組織は赤字同然だよ……。

(はあ、俺も死ぬのかぁ~)

 死ぬっていうのはどんな気分なんだろう?
 さすがに俺の性質でも死からは逃れられない。

 協力者の少女でさえ、まだ寿命から解放されない。

(ま、いいさ)

 ここまでというわけではない。
 ただ、俺のができないというだけのこと。

 まだ、組織に武があるのだ。
 俺が死ぬことで、計画は先送りになるどころか、早まることだろう。

 俺という抑止力がなくなるのだ。
 少女がどんな暴走をしでかすかな?

(ふふふ、待っていろよメアリめ……。今度は俺が……!)

 そこで俺の意識は途絶えるのだった。
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