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修行開始(学校組視点)
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ベアトリスが帰って来ないというのは王子様の中では大問題の事態だったらしい。
「そんなにソワソワしてても何も変わんないですよー?」
「ユーリ君……あれほどベアに懐いているのに、なんでそこまで冷静なんだ?」
猫じゃらしを手に、猫と戯れあっているユーリ。
「別に、ただお使いに出かけただけだから大丈夫だよ」
「ベアは子供の頃攫われたことだってあるんだよ?もし街に出ていやらしい大人にでも捕まってしまったら……」
あわあわと震えている王子を若干引き気味に見つめるユーリ。
「戻ってきたよー」
そこに猫一匹と書類を一枚抱えて戻ってきたレオは、逃げ出していたやんちゃな猫を中に戻すとドアを閉めた。
「理事長から、ベアトリスのお使いのメモを……」
「見せてくれ!」
ものすごい勢いで横から掻っ攫っていく。
そこに書かれていたのは、到底常人では回収できなさそうな『お使い?』の内容だった。
「なんだこれ!?」
「あー……確かにベアトリスじゃないと無理だね」
「これを見ても無事だと思ってるのか!?」
ベアトリスが帰ってこないで大体二日目。でも、たった二日だ。
そして何より、二人はベアトリスが無事であるという確信がああった。その理由こそ、ベアトリスの『波動』である。
二日目の朝方のこと、謎の強烈な殺気に二人は目を覚ました。
何事かと思っていればかなり遠い場所から殺気が放たれていた。そして、その殺気はベアトリスの持つ気配と完全に一致していたのである。
長年いたからわかること……一緒に戦ったからこそわかる気配。
つまり何が言いたいかといえば、「ベアトリスが本気を出したのだから負けるはずがない」ということだ。
ベアトリスの殺気は何十キロと離れるここまで届き、その殺気に含まれる魔力は魔王であるユーリを超えた。
魔力量がそこまで増幅したのであれば身体能力もそれに合わせて上昇しているはず。
体術でも魔術でもベアトリスの右に出る人物は今のところ一人しか出会っていない。行ってしまえば一人はいるわけだが……。
悪魔の少女は圧倒的魔力でユーリの魔力を全て封印できるほどの量の魔力量で尚且つ、身体能力はレオやユーリの比ではない。
おまけに一定の範囲を支配して、文字通り思うがままにすることができる。
ただ、今回感じたのはベアトリスの気配のみ。流石に悪魔の少女が気配を隠しながら本気のベアトリスと戦うことはできない。
よって、それ以外の誰か。それ以外の誰かがベアトリスに勝てるわけもないのだ。
「ま、大丈夫でしょ」
「そうだね」
心配する必要はないとでも言いたげない態度に不満げな王子。
「どれだけ君たちがベアトリスを信頼しているかはわかった。だけど、絶対に無事だという保証はないだろう?」
「確かにそうだけど……」
王子の実力ではベアトリスの気配を探るなんてことはできない。よって、ベアトリスが無事かどうかもわからないのだ。
「君たちが無事だと思っていても、僕は探しにいくべきだと思うな」
「探さないほうがいいと思うけど……」
絶対面倒なことに巻き込まれているのは確定だ。龍の鱗とか精霊の鱗粉だとかを回収するだけのお使いなんてベアトリスにとってはお茶の子さいさいのはずだから。
王子を引き止めるかどうか悩む二人だったが、そこに新たなメンバーが加わる。
「おおい!いつまで授業にでねぇんだセンセーよお!?」
ヤンキーが乱入してくると同時に、それを引き止めようとするナナとリョウヘイくん。そして、ついでとばかりに会釈するクラさん。
「あ?いねえのかよ」
「だから言ったじゃん!前から来てないって!」
「そんなこたあ関係ねえ!どこに逃げやがったぁ!」
騒ぎ立てるヤンキー。だが、その足元に一匹猫が近づいてくると、ヤンキーもその動きを止めた。
「な、なんだこいつ?」
「猫だよ」
「いや、そりゃあわかってる!」
「にゃー」
一番ヤンチャな猫がヤンキーに近づくと一鳴き。
「なんか表情和らいだ?」
「うるせえ!」
「とりあえず、ベアトリスはここにはいないから行くなら他を当たってよ」
「どこ行ったんだよ!」
しょうがないからヤンキーにも事情を少し説明する。
「龍?精霊?冗談言うなよ、ははは!」
「ほんとだけど?」
「マジで言ってんの?」
大きなため息をつくヤンキー。
「そんなお使いで帰ってこれねえようじゃ先生失格だな!」
「ちょっと言い過ぎよ!」
と、ナナが口を挟みかけたがリョウヘイくんがそれを止める。
「ま、まあ?俺たちは優秀な異世界人だからな!助けてやらなくもない!」
「ツンデレ、可愛くないわよ?」
「ぶん殴られテェのか?」
レオとユーリは頭を悩ませる。めんどくさいのが増えたと……。ベアトリスが、生きていることも負けることがないこともわかっている二人だったが、話のスケールがこの人たちにとっては壮大すぎるため、絶対に信用されないことをわかっているからこそ、二人は頭を悩ませる。
そして、レオが一つの結論に辿り着いた。
「じゃあ、僕たち二人でみんなを鍛え直すよ」
今のみんなじゃ力不足だ……ベアトリスと戦ったヤンキーなら一番よくわかるだろ?と、念頭に置いて話し始める。
「だから、ベアトリスが帰ってこない場合、強くなった君たちで救出に行けばいいさ。もし、その前に戻ってきたら鍛えた実力であっと驚かせよう!」
「いいこと言うじゃねえかレオ先生!」
バシバシと肩を叩かれるレオ。後ろから見てたユーリはヤンキーが少しだけ毛並みを撫でていたのを見逃さなかった。
「じゃあそう言うことで、すぐに外周行ってこい!」
「はい!」
まんまと乗せられたヤンキーくんは速攻で走りに行く。
「あの私たちもですか?」
ナナとクラさんが恐る恐るこちらを見てる。
「もちろん」
「ヒェー……」
と言うわけで、残り二人。
「もちろんあなたたちもですよ?」
「いや、僕は何も言ってないんだけど?」
「リョウヘイくん、見苦しい言い訳はよそうか……」
トボトボと歩いていく。
「王子様?」
「ははは、わかってるさ!見てろよ……ちゃんと鍛えて強くなるからな!」
こうして、ベアトリスが帰ってくるまでの間の、修行が始まるのだった。
「そんなにソワソワしてても何も変わんないですよー?」
「ユーリ君……あれほどベアに懐いているのに、なんでそこまで冷静なんだ?」
猫じゃらしを手に、猫と戯れあっているユーリ。
「別に、ただお使いに出かけただけだから大丈夫だよ」
「ベアは子供の頃攫われたことだってあるんだよ?もし街に出ていやらしい大人にでも捕まってしまったら……」
あわあわと震えている王子を若干引き気味に見つめるユーリ。
「戻ってきたよー」
そこに猫一匹と書類を一枚抱えて戻ってきたレオは、逃げ出していたやんちゃな猫を中に戻すとドアを閉めた。
「理事長から、ベアトリスのお使いのメモを……」
「見せてくれ!」
ものすごい勢いで横から掻っ攫っていく。
そこに書かれていたのは、到底常人では回収できなさそうな『お使い?』の内容だった。
「なんだこれ!?」
「あー……確かにベアトリスじゃないと無理だね」
「これを見ても無事だと思ってるのか!?」
ベアトリスが帰ってこないで大体二日目。でも、たった二日だ。
そして何より、二人はベアトリスが無事であるという確信がああった。その理由こそ、ベアトリスの『波動』である。
二日目の朝方のこと、謎の強烈な殺気に二人は目を覚ました。
何事かと思っていればかなり遠い場所から殺気が放たれていた。そして、その殺気はベアトリスの持つ気配と完全に一致していたのである。
長年いたからわかること……一緒に戦ったからこそわかる気配。
つまり何が言いたいかといえば、「ベアトリスが本気を出したのだから負けるはずがない」ということだ。
ベアトリスの殺気は何十キロと離れるここまで届き、その殺気に含まれる魔力は魔王であるユーリを超えた。
魔力量がそこまで増幅したのであれば身体能力もそれに合わせて上昇しているはず。
体術でも魔術でもベアトリスの右に出る人物は今のところ一人しか出会っていない。行ってしまえば一人はいるわけだが……。
悪魔の少女は圧倒的魔力でユーリの魔力を全て封印できるほどの量の魔力量で尚且つ、身体能力はレオやユーリの比ではない。
おまけに一定の範囲を支配して、文字通り思うがままにすることができる。
ただ、今回感じたのはベアトリスの気配のみ。流石に悪魔の少女が気配を隠しながら本気のベアトリスと戦うことはできない。
よって、それ以外の誰か。それ以外の誰かがベアトリスに勝てるわけもないのだ。
「ま、大丈夫でしょ」
「そうだね」
心配する必要はないとでも言いたげない態度に不満げな王子。
「どれだけ君たちがベアトリスを信頼しているかはわかった。だけど、絶対に無事だという保証はないだろう?」
「確かにそうだけど……」
王子の実力ではベアトリスの気配を探るなんてことはできない。よって、ベアトリスが無事かどうかもわからないのだ。
「君たちが無事だと思っていても、僕は探しにいくべきだと思うな」
「探さないほうがいいと思うけど……」
絶対面倒なことに巻き込まれているのは確定だ。龍の鱗とか精霊の鱗粉だとかを回収するだけのお使いなんてベアトリスにとってはお茶の子さいさいのはずだから。
王子を引き止めるかどうか悩む二人だったが、そこに新たなメンバーが加わる。
「おおい!いつまで授業にでねぇんだセンセーよお!?」
ヤンキーが乱入してくると同時に、それを引き止めようとするナナとリョウヘイくん。そして、ついでとばかりに会釈するクラさん。
「あ?いねえのかよ」
「だから言ったじゃん!前から来てないって!」
「そんなこたあ関係ねえ!どこに逃げやがったぁ!」
騒ぎ立てるヤンキー。だが、その足元に一匹猫が近づいてくると、ヤンキーもその動きを止めた。
「な、なんだこいつ?」
「猫だよ」
「いや、そりゃあわかってる!」
「にゃー」
一番ヤンチャな猫がヤンキーに近づくと一鳴き。
「なんか表情和らいだ?」
「うるせえ!」
「とりあえず、ベアトリスはここにはいないから行くなら他を当たってよ」
「どこ行ったんだよ!」
しょうがないからヤンキーにも事情を少し説明する。
「龍?精霊?冗談言うなよ、ははは!」
「ほんとだけど?」
「マジで言ってんの?」
大きなため息をつくヤンキー。
「そんなお使いで帰ってこれねえようじゃ先生失格だな!」
「ちょっと言い過ぎよ!」
と、ナナが口を挟みかけたがリョウヘイくんがそれを止める。
「ま、まあ?俺たちは優秀な異世界人だからな!助けてやらなくもない!」
「ツンデレ、可愛くないわよ?」
「ぶん殴られテェのか?」
レオとユーリは頭を悩ませる。めんどくさいのが増えたと……。ベアトリスが、生きていることも負けることがないこともわかっている二人だったが、話のスケールがこの人たちにとっては壮大すぎるため、絶対に信用されないことをわかっているからこそ、二人は頭を悩ませる。
そして、レオが一つの結論に辿り着いた。
「じゃあ、僕たち二人でみんなを鍛え直すよ」
今のみんなじゃ力不足だ……ベアトリスと戦ったヤンキーなら一番よくわかるだろ?と、念頭に置いて話し始める。
「だから、ベアトリスが帰ってこない場合、強くなった君たちで救出に行けばいいさ。もし、その前に戻ってきたら鍛えた実力であっと驚かせよう!」
「いいこと言うじゃねえかレオ先生!」
バシバシと肩を叩かれるレオ。後ろから見てたユーリはヤンキーが少しだけ毛並みを撫でていたのを見逃さなかった。
「じゃあそう言うことで、すぐに外周行ってこい!」
「はい!」
まんまと乗せられたヤンキーくんは速攻で走りに行く。
「あの私たちもですか?」
ナナとクラさんが恐る恐るこちらを見てる。
「もちろん」
「ヒェー……」
と言うわけで、残り二人。
「もちろんあなたたちもですよ?」
「いや、僕は何も言ってないんだけど?」
「リョウヘイくん、見苦しい言い訳はよそうか……」
トボトボと歩いていく。
「王子様?」
「ははは、わかってるさ!見てろよ……ちゃんと鍛えて強くなるからな!」
こうして、ベアトリスが帰ってくるまでの間の、修行が始まるのだった。
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